表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

その五 王太子妃

彼女は子どもの頃からそばにいてくれたの。


わたしは、今よりまだずっとぼんやりした子どもだったから、手がかかったと思うのだけど、「聞く耳持たない、首根っこを押さえつけないといけない連中に比べたら何百倍もお嬢様の方がおかわいらしいです!」って言ってくれて。


わたしの実家に行儀見習いとして来るまでは、近所で子守のお手伝いをしていたらしいのだけど、とても大変だったみたい。


騎竜術を習いたいって言い出した時も、家族の誰もがやめておけ、無理だと言ったけども、彼女だけはお嬢様がお望みならばと反対しなかったの。


わたしはね、とても諦めが悪いの。頭もよくないわ。


何度も竜に振り落とされても、怪我しても、平気だった。お母さまや弟に泣かれてもやめようとは思わなかった。


でもね、彼女が真っ青な顔で怪我の手当てをしてくれるのを見て、こんな顔をさせたくなかったはずなのに、ってようやく気付いたの。


そもそも、大切な人を守りたいから騎士になりたいと思ったのよ。


馬鹿でしょう? どんくさいわたしが騎士になれるはずないのに。


自分の間抜けさ加減にようやく気づいて落ち込んでいたら、お友だちが言ってくれたの。


自分に向いている方法で、できることをすればよいって。


お友だちのこと? 知り合ったきっかけは、お母さまたちのお茶会かなにかだったと思うわ。


何度か顔を合わせるうちに、気が合ったのね、よくおしゃべりするようになって。ええ、手芸教室でも一緒だったわ。


そうね、あの人はなにかされたら仕返しはしていたわ。でも、自分からだれかをいじめるようなことは一度もしていない。


放っておけばいいのにといったら、放っておいたら雑草みたいに増えかねないから小さいうちに摘み取っておくんだって。


そのときは仕返しする方が大変なのにって思ったのだけど、王太子妃となった今は、わかる気がするの。そういう扱いをしていい相手なんだと、意地悪しても大丈夫なのだと思わせたらいけないってことだったのだと思うわ。


今もよいお友だちよ。時々、殿下から相談を持ちかけられるようで、いい加減にしてほしいと言ってるわ。


相談内容? ええ、知っているわ。 国政にかかわることを殿下が相談するはずないし、彼女も受けるはずがないのに、勘ぐる方達は多いみたいね。殿下は目先をそらせるから、ちょうどいいかな、なんておっしゃっているけど。


殿下は、そうね、見かけよりも普通の方だと思うわ。ええ、普通の人間。少なくともわたしの前では。


人前では、うさんくさいキラキラ王子様っぷり、なんてお友だちはいうわね。王妃様は演技指導の賜物とおっしゃるし、演じていることは確かね。


あの女性の護衛兵の方なんて、近くで見てて目が疲れないのか、なんていうのよ。眩し過ぎるって。面白いでしょう?


王妃様、お義母さまはとても頼りになる方だわ。


生まれながらの王族であらせられるからかしら。迷ったり、困ったりする様子を見せることがないの。


わたしにはとても真似できないのだけど、真似する必要はないとおっしゃってくれて。


息子が間抜け面を見せられる相手でいてくれさえすればいいの、なんておっしゃって。


ええ、とても幸せだわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ