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番外編:ある獣人

 あたしらが海の向こうからやって来たってのは、知ってるのかい?


 そう、こっちじゃあまり知られていないようだけども、同じように大陸がある。


 ただ、こんな大きな町はあたしらが暮らしてた地域にはなかったよ。砂漠の向こうにはあるって話だったけど。


 でかい獣が多くてね。単に通り道にされただけで壊されちまうんだよ。獣にやられなくても、馬鹿どもが騒げば壊されちまうしね。一箇所にかたまっているよりは、ばらけていたほうがいい。畑の周りには見張り立てて追い払っていたよ。獣も馬鹿も両方だよ!


 獣人っていうけども、どっちかっていうと獣みたいな連中って意味なんじゃないかね? 獣の姿になれるのはほんの一握りだ。そしてそういうのは総じて地位が高いから、海渡って来るなんてことはまずない。海渡るのは、故郷にいられなくなったはぐれ者や馬鹿者だね。


 ……そうだよ、馬鹿者だよ、あいつらは。


 祭りの晩に酔っ払った勢いで、そのまんま丸木舟で海に漕ぎ出しちまったんだよ。


 あー、うん、「俺も嫁もらうんだ!」とか言ってね。向こうは女が少なくて、結婚できるやつはほんの一握りなんだよ。


 ああ、たまにね、昔からいたんだよ、こっちの大陸に渡って、向こうに戻った連中が。そういうのは大抵、嵐で流されたとかで、向こうに家族が待ってる、まっとうな連中さ。


 その連中から、こっちの女達は、弱くても結婚してくれるらしいって話が伝わっててね。うん、阿呆な男どもの間で、無条件に結婚してもらえるって夢物語になってるんだよ……。


 よその大陸の住民にまで迷惑かけちゃいかんと馬鹿どもを止めようと追っかけたんだけどね、あたしも馬鹿だったよ。あいつら捕まったら殺されると、必死になって逃げやがった。


 ん、結婚の条件? そうだね、なにかを狩ってこいとか、取ってこいとか。向こうの女だって、そう無茶なことはいわないよ、自分が結婚したい相手にはね。無理難題ふっかけるのは結婚する気がないってことなんだけどね、それがわからない奴らも多いんだよ……。


 ま、向こうに帰った連中に本当のことを伝えるように言っておいたから、海渡ろうとする馬鹿は減るだろう。


 ん? ああ、弱くても結婚はできるが、馬鹿だと結婚はできないって。嘘は言ってないだろ?


 なんで帰ったかって? 身内以外に強い喧嘩相手がいなくて飽きたからだよ。こっちで嫁見つけられたなら話は違ったんだろうけど。


 無事に戻れたはずだよ、海竜つけてやったし。あの連中より賢いからね、海竜は。ちゃんと送り届けた後、報告に来たよ。


 ああ、しゃべるっていうか、頭んなかに直接伝えてくる感じだね。こっちの人間は使わないんだってね、息子や孫も使えないし。なんとなくは伝わっていることもあるみたいだけど。


 大丈夫だよ、あたしが死んでも、あんたらのことは身内だと思っているから、多少の迷惑はかけるだろうが、無茶はしない。


 それに、幸い一人だけとはいえ、女の子が生まれたからね。まとめてくれるだろうよ。


 もう一人くらいいればよかったけど、もともとあたしらは女が少ないからね。血は薄まるだろうし、そのうちなんとかなるさ。

聞き手は領主様の父あたり。

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