第十九器 強き絆と甦る不死鳥
「…ここは?」
ドルイドが目を開けると、薄暗い灯りが照す小部屋にいた。
「私は確か幻龍とガキを殺して…」
部屋の隅の暗闇から近付く足音が聞こえ、目を凝らすドルイド。
「誰だ!?」
「何を怯えている?」
暗闇から現れたのは、髪は真っ白で、瞳は赤く輝き白衣を着た夜詩だった。
「お前は…そうか、これはお前の力か!
イシシシ、ならば私の力で抜け出せる」
ドルイドは両手を勢いよく広げるが何も起こらない。
「なぜだ!この空間を作ったとしても、あの場所から移動していないはず。
それなのになぜ木が応えない?」
夜詩は、自分の両手を見つめているドルイドの腹を蹴り、無かったはずのイスに座らされるドルイド。
「ぐっ、なんだこの空間は!なんだ!?」
ドルイドの体はイスに固定され身動きが取れなくなり、もがくドルイドを無視し、夜詩はイスを灯りの真下に運ぶ。
「さあ、これからお前に苦痛の快楽を与えてやる。
安心しろ、俺が飽きるまでお前は死なない」
そう言って白衣のポケットからメスを取り出す夜詩。
「や、やめろ!」
夜詩は固定されたドルイドの右手をメスで開き、ポケットから取り出した器具で傷口を開く。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!痛い痛い痛い!」
「大丈夫、すぐ慣れる」
金槌と釘を取り出し、開いた傷口から見える骨に釘を打つ夜詩。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ…ぁぁぁ」
「そうそう、痛みで気絶はしないようになっているから、存分に楽しめ」
「やめてくれ…お願いします」
涙を流し許しを乞うドルイドを気にも留めず、夜詩は右手の骨を取り出し、床へ捨てる。
それからも夜詩は手を止めず、左手の神経を剥き出しにして焼き千切り、両足に穴を開け、謎の虫を流し入れ、泣き叫ぶドルイドを黙らせるために喉を切り裂いて喉を潰し、腹を切り開いて、心臓以外の臓器を取り出し床へ投げ、目に釘を打ち付け糸で瞼を縫い合わせる。
「慣れてきたか?」
ドルイドは必死に首を横に振り、それを見た夜詩は笑みを浮かべた。
「お前が幻龍と凛々を殺した結果、俺が生まれた。
俺は苦痛を与え続け、相手が痛みを感じなくなった時消える。
この部屋では俺より強い波を使える者以外、波を使う事は出来ない。
さあ、続きをしようか」
夜詩は注射器を取り出し、心臓に直接打ち込み、ドルイドは体を硬直させるも、しばらくしてまた暴れ出す。
様々な事を繰り返す内に、ドルイドは反応しなくなり、夜詩はドルイドを暗闇から持ってきた台に寝かせる。
「よく味わえたか?最後に極上の苦痛を!」
夜詩が台から離れ両手を広げると、台が燃えだし、ドルイドは火だるまになり悶え始めた。
「サヨウナラ」
夜詩がそう囁くと、台の上から鉄の塊が落下し、台と共にドルイドを潰し、床が血の海に変わっていく。
「次はいつ遊べるかな…」
部屋は闇に包まれ、煙の様に闇が風に吹かれ晴れていき、元いた場所に戻り夜詩は地面に倒れる。
幻龍と凛々の亡骸と倒れている夜詩の元にフードコートの男が現れた。
「呪装に目覚めたか…まあいい」
男が夜詩へ手をかざすと光が集まる。
その頃、研究所にはドルイドの放ったキメラ達が押し寄せていた。
「みんな早く逃げるんだ!」
ロバートは研究員達を出口へと誘導する。
「ロバート!」
「キャロル!どうしてここに?」
「游達を探してたんだけど見つからなくて…。
それより早く逃げましょう!」
「ダメだ」
腕を掴むキャロルの手を振りほどくロバート。
「どうして!?」
「まだ逃げ遅れている研究員達もいるし、研究所のクリアルームにあるデータベースを守らないと」
「データなんかより命の方が大切よ!」
「なんかじゃない!
ここにあるデータは死んでいった仲間達と僕たち研究員の大切な絆なんだ!」
キャロルはロバートの目を見つめ、拳銃を取り出しスライドを引く。
「仕方ないわね。
援護するわ!」
「ありがとうキャロル!こっちだ!」
二人は、逃げ遅れた人を誘導しながら研究所の奥へと進み、クリアルームの前にたどり着いた。
「無事たどり着けた」
「それよりあの気持ち悪い生き物はなんなの?
ライオンの頭に体に山羊がくっついて、尻尾は蛇だし」
「たぶんキメラっていう、人工的に造られた生物だよ。
ああいう研究をしている人間がいるとは聞いていたけど。
よし、ロックは解除出来た!急ごう!」
二人が中へ入ると、自動的に灯りがつき、広い空間の中央にクリスタルの柱が一本立っている。
「すぐ終わらせるから待っててくれ!
データを転送しないと…ダメだ、研究所のいくつかの回路が切断されてる…生きてるのは…」
「ロバート…急がないとやばいかも」
二人が入ってきた入口だけでなく、通気孔から数体のキメラが侵入してきた。
「待ってくれ…こっちもダメか…いや、研究所の回路からじゃなく別の所に変換して送れば…これだ!
膨大な量になるけど仕方ない」
キャロルは迫り来るキメラの頭を確実に撃ち抜き、倒していくがキメラの数は増え続ける。
「ロバート!もう弾がないわよ!」
「くっ!転送には時間がかかる…こうなったら」
ロバートは突然走り出し、部屋の奥にある扉に入った。
「ちょ、ちょっと何逃げてるのよ!
弾切れ…私も逃げないと!…そんな」
ロバートの後に続こうとするも、目の前にキメラが立ち塞がり、その場に座り込むキャロル。
「…游」
キメラはキャロルに飛びかかった瞬間、何かに弾き飛ばされ壁に叩きつけられた。
「ロバー…って、ロボット!?」
キャロルの目に映ったのは、真っ白のロボットとロボットの頭部にあるガラスの中に浮かぶロバートの顔だった。
「お待たせ!」
「な、なんなのそれ?」
「いやー、対能力者用に開発したんだけど、製作コストが膨大で中止になった着用ロボットなんだ」
「対能力者用って、ただの趣味でしょ!」
「そ、そんな訳ないじゃないか!現にこうして役に立ってる!」
「まさか、廃棄されないように隠してたんじゃないでしょうね?」
「ギクッ!
よ、よーし!キメラをやっつけるぞ!」
「全く男ってほんとバカ」
ロバートはキメラを次々と倒していく。
「どうだキャロル!これなら能力者にだって負けないぞ!」
「はいはい、終わったならさっさと逃げ…ロバート!」
「ん?」
振り向こうとした瞬間、巨大なキメラの前足で払い飛ばされ、壁にぶつかるロバート。
「こんな大きなキメラがいるなんて…」
「いてててて…」
「ロバート大丈夫!?怪我が!」
頭部にあったガラスが割れ、ロバートは頭から血を流しながら立ち上がる。
「ガラスの強度を上げておかないとダメだね…キャロル、君は逃げるんだ」
「一人でなんて無茶よ!」
「まだ転送は終わっていない…君を守りながら倒せる相手でもないからね」
「ロバート…絶対倒しなさいよ!」
「分かってる。全部終わったらみんなで旅行にでも行こう。
うおぉぉぉー!」
キメラへ走り出すロバートを見て、キャロルは非常口から逃げ出す。
時を同じくして、避難所にもキメラの大群が押し寄せていた。
「なんだこいつら!
非情の雨!」
ロックの腕から放たれた土の弾は、キメラ達を貫いていく。
「はぁ…はぁ…キリがねぇ。
戦えるのは俺だけだ…俺が守らないと…破壊の巨人」
ロックが両手を地面に突くと、巨大な土人形が地面から現れる。
「くっ、波をかなり消費しちまう…」
土人形はキメラを次々と倒していくが、数が多すぎて一向に減る気配は無かった。
「このままじゃ…」
その時、周囲を炎が包みキメラを一掃する。
「な、なんだ?
ホランド先生!」
ロックが振り向くと、両手に炎を纏ったホランドが立っていた。
「遅れてすまんな。
他の能力者達に指示を出していたんだ」
「先生の力、初めて見た」
「お前は少し休んでろ。
鳥達の怒り」
ホランドが両手を掲げ大きな炎を作り、その炎から鳥の形をした無数の炎が飛び立ち、キメラを襲う。
「これで…ったく、どっから入ったんだよ」
「嘘だろ?」
ホランドとロックの前に現れたのは、研究所に現れた巨大キメラを遥かに越える大きなキメラだった。
「不死鳥の両翼」
炎を全身に纏い、両手の炎を翼の様に形を変え、空へ飛び上がるホランド。
「ロック、少しの間雑魚を頼む」
「お、おう!」
「いくぞ怪物!」
ホランドは炎の翼で巨大キメラの周りを飛び、火を放っていく。
しかし、巨大キメラには通じず、尻尾の蛇がホランドを払い飛ばす。
「先生!」
「ぐっ…なんて皮膚の厚いやつだ。
こうなったら」
空高く飛び上がり、全身の炎を渦のように回転させるホランド。
「燃え盛る天の一撃」
急降下しながら近付くホランドを、飛び跳ね呑み込む巨大キメラ。
「そんな…先生!」
巨大キメラは着地し、ロックの方を向く。
「相手してやるよ!」
ロックが身構えた瞬間、白い炎に包まれ、苦しみ出す巨大キメラ。
「な、なんなんだ?」
巨大キメラの体は崩れ落ち、中からホランドが現れた。
「中から燃やせば脆いな」
「先生!あれ…」
ロックが指差した方から、数体の巨大キメラが近付いてくる。
「前線復帰の一発目がこれとは…面白い!
ロック、蹴散らすぞ!」
「おう!」
二人は巨大キメラ達へと突き進んでいく。




