1.日常
時計の針がうるさく響く、一階から母の怒鳴り声が聞こえる―ような気がする。
鬼山 連(17)は絶賛寝坊中である。新学年が始まって一カ月、連続寝坊回数25日の記録達成中だ。
急いで着替えて階段を駆け下りる。母にいつも通り怒鳴られながら朝ご飯を食べる。
父は十日目あたりから何も言わなくなった。とても怖い。
「なんでこんな起きれないんだろーなー」とぼやきながら家を出ると、「れ〜ん」と呼ぶ声がした。
こいつは石田 陽日、俺の幼馴染兼遅刻仲間だ。
こんな朝早く起きてそうな名前をしているくせに遅刻回数は変わらない。昔からそうだ。まぁ人のこと言えないんだけど。
少し話したあと、2人で一気に走り出す。コンビニを曲がり、図書館の間を抜ける。いつもの近道ルートだ。二人とも家が高校から近いため、走れば十五分ほどで着く。
学校に到着し、職員室で遅刻の紙をもらい、担任に渡す。もはや毎朝のルーティーンになりつつある。
担任はメガネのぼーっとした男で滅多に怒らない。
今日も「次から気をつけなよ〜」で終わった。
6時間授業を受け、石田といっしょに帰った。
今年は桜が咲くのが早く、もうほとんど散ってしまっている。
ポケットに手を入れながら、談笑しながら歩き、家の近くのコンビニで石田と別れてから音楽を聞こうとかばんをあさったとき「しまった」と思った。スマホがない。学校に忘れたのだろう。
急いで今来た道を逆走した。幸いまだ家にはついていないため走れば間に合う。
辺りが少し暗くなってきていたが、まぁだいじょうぶだろうと思い学校まで探しに戻った。
結局、スマホが見つかるまで30分かかった、教室にあると思っていたが、6限が体育だったため更衣室にあったのだ。
辺りはもう真っ暗でほとんど見えない。
街灯にぼんやり照らされた道を歩きながら、連は今日の晩御飯のことを考えていた。
図書館のそばを通ろうとしたとき、前から誰か来た。その男は黒いフード、黒いズボンという格好で、少し不気味と感じつつも目を合わせないようにしてすれ違った。
ドスッ!
背中に衝撃が加わる。背中が熱い。
自分が刺されたことに気づいたのは、背中に刺さったナイフのようなものを、男が抜いたあとだった。
「うぁぁぁぁぁぁ!」
痛い、痛い、背中がぬるい液体に浸されていく感覚が伝わる。
「なんだよ…なんで…なんで…」
そんな自分を見下ろすように男―通り魔は、再度自分にナイフを振りかざす。
死にたくない一心で連は逃げようとするが、今度は足を刺される。
今度は叫ばなかった。いや、できなかったというのが正しいだろう。
暗がりの中、街灯で男の顔がちらりと見えた。
その顔は、恍惚としながらも狂気に満ちた表情で連に語りかけた。
「痛いか?痛いのか?すぐ、楽にしてあげるよ」
痛みで悶絶しながらも、連は一縷の望みをかけてナイフを振り下ろそうとする男に殴りかかった。
「うぉぁぁぁぁぁ!」
拳は、男の横顔に当たった。しかし瀕死の連の拳などきくはずもなく男は怒号をまき散らしながらさけんだ。
「このクソガキがぁ!調子に乗りやがって、死ねぇ!」
男は連を蹴り飛ばし喉元にナイフを当てようとする。
連は「やめろぉ!」と叫びながら腕を振り暴れる。生きたい、その一心で腕を振りつづけた。
『い……ち…か……し…ろう』
頭になにか、響いたと感じた次の瞬間。
ボッ
爆ぜるような音がした。
何かが自分の体に飛び散り、自分を押し倒していた男の腕の力が抜ける。
連はおそるおそる目を空けた。
そこにあったのは、頭蓋が飛び散り、力なく横たわるボロボロの肉塊であった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
初小説のため、拙いところもあるでしょうが、温かく見守っていただけると嬉しいです。
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