1話 7回殺された被害者
全39話。4章構成です。
作品は最後まで書き終わっているので、完結まで毎日投稿します。
11話までは本日中に投稿、以降は毎日7:00に投稿する予定です。
気が向いた時に読んでくれたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
科学が発展した世界であっても、魔術と呼ばれる奇蹟は変わらず存在している。
インテグラ王国 商業都市メーリオル。
現在この都市では、計7人が殺されるという連続殺人事件が起きていた。
しかし都市の治安を守る王国軍は事件の詳細を市民に何一つ開示しようとせず、その対応に市民は不満を募らせていった。
ただ王国軍には事件の詳細を開示できない理由があった。
――メーリオルにある王国軍基地 会議室。
「新聞記者どもは事件の詳細を開示しろとうるさいが……。それができない理由があることくらい察して欲しいものだな」
事件の捜査責任者である年老いた少尉は、椅子に座り溜息をつく。
狭い会議室の中は重苦しい空気で満ちていた。
側で立っている若い兵士は気まずそうに、壁際の時計をちらちらと見ている。
「7人が連続で殺された今回の事件。当然、被害者も7人いるはずだが……」
少尉は机に置かれた7枚の写真を眺める。
全て今回の事件の被害者の写真で、全員が鋭利な刃物のようなもので首を切られている。
そして写真には不可解な点があった。
「なぜ全員とも同じ人間なんだ……?」
少尉は忌々しげに呟く。
写真に写った人間は全員同じ顔だった。男性、赤毛、淡い青色の瞳。検死の結果、殺された7人は全く同じ人間であるということが分かってしまった。
側に立つ兵士が補足する。
「被害者の名前はウィッツ・アルベン、26歳の男性です。検死の結果、間違いありません。資産家の息子で、本人も実業家として成功を収めています……ちなみに彼に兄弟はいません」
「ああ。分かっているよ。私だって検死に立ち会ったんだ……だが、これでは完全に同じ人間が7人も存在していて、立て続けに殺されていることになるぞ」
「ええ。まぁ……ですかね」
兵士の答えは煮え切らない。
どう答えれば良いのか分からないようだった。
「すまんな。私もどうすれば良いのか分からんし、上層部もそうだろう。だから混乱を避けるために情報統制を行っているのだ。更に今回の事件は『魔術が関わる案件』だと認定した……専門家に任せろということだ」
少尉は面白くなさそうに舌打ちをして、隣にいる兵士をにらみつける。
「で。その専門家の彼女はそろそろ付く頃かね?」
若い兵士はちらりと壁際の時計に視線を送る。
「列車はもう到着しているはずなので、今こちらに向かっているかと……」
「ふん。まだ17歳だと聞いているぞ。そんな小娘に事件の捜査を任さないといけないとはな」
「しかし実績は確かな方だと聞いております」
少尉は面倒くさそうに手を振る。
「……上の決定だ。文句は言わん。魔術というのは我々の管轄外なのは確かだからな」
魔術。
各地を結ぶ鉄道網が引かれ、工場により物資の大量生産が可能になった世界でも、魔術というものは存在している。
同時に魔術にまつわる不可思議な事件も多い。
だからこそ魔術にまつわる事件を解決する専門家も存在していた。
――コンッ、コンッというノックの音がする。
廊下から少尉の部下の声が聞こえてきた。
「少尉! ただいま魔術監察官 ユロ殿が到着されました!」
「……通してくれっ」
どうやら到着したようだ。
少尉はできるだけ威厳たっぷりに見えるように椅子に座り直す。
扉が開かれ、1人の女性が入ってきた。
「――すみません。お待たせしました」
入ってきたのは背の高い女性だった。
少女と聞いていたので、小柄な姿を想像していた少尉は面食らう。
すらりとした体躯に薄い黒色のコートを身につけ、同色のブーツを履いている。
耳元まで伸した髪は雪のように真っ白だった。
何より印象的だったのは彼女の金色の瞳だった。
修羅場を潜ってきた軍人と遜色のない力強さが宿っている。
少尉は思わず黙ってしまう。
しかし少女はにっこりと笑い、頭を下げた。
それは年相応の幼さも感じさせた。
「魔術監察官。ユロ・イリアス。ただいま到着しました」
彼女は頭を上げて、また微笑んだ。
少尉はぎこちなく笑い返した。
――魔術監察官。魔術が正しく使用されているかを調査・監督し、魔術の不正使用を裁く権限を持つ。
若き魔術監察官ユロ・イリアス。
これは彼女と、彼女が関わる4つの事件の話。
ありがとうございました。




