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その19 アーストン迷宮

前話のその18は9月17日の21時40分にアップしています。

その17は同日の3時26分にアップしています。

その19


魔封じの森からディーアの町へ戻って3日後、私とラル、そしてマーレンさんの3人は辺境伯領内に2つあるダンジョンの1つ、アーストン迷宮へ来ていた。


迷宮から歩いて二十分とすぐそばにある町の名前もアーストン。


アーストンと言う人が村を作りその近くにダンジョンを発見、町へと発展したそうだ。


この安直で捻りの感じられない所が凄く良い。


名前って覚えるの面倒臭いからね!


ダンジョンは兎も角として、何故マーレンさんと一緒に来ているのか?


それはお互いに必要な事だったからだ。




魔封じの森から戻った翌日、昼近くまで宿でゆっくりしてから冒険者ギルドへと向かう事にした。


昨日の今日ではろくな情報は無いだろうけど、気になるものは気になるし。

 

お昼ご飯も宿以外で食べたいし。


踊る白鳥亭は食堂も兼業しているのでランチも別料金ながらちゃんとある。


ただ朝晩同じ宿でご飯を食べていると、美味しくはあるけれどちょっと別の店も味わいたいと思うじゃないですか。


そんな訳でラルと共に冒険者ギルドへ行くと、空いている時間帯なので受付は混んでおらず、すぐにリューネさんと話す事が出来た。


お互いに挨拶をしてから、今日来た理由を説明すると、


「申し訳ありません。

先日のゴブリンの襲撃の件がやっと落ち着いたばかりなので、まだはっきりとした事は分かっていないのです」


とのことだった。


大人数が関わった大事件だし、そりゃ忙しかったはずだよね。


通常業務も熟さないといけないしね。


あの直後にサブマスターも私と同行する事で長期不在になっていたし、余計に忙しかっただろう。


迷惑をかけちゃったな。


「あ、そうですよね。ごめんなさい」


「いえ、大丈夫です。何か分かりましたら宿に連絡を入れるようにしますね」


「あ、いえ、依頼を受けにほぼ毎日来ますからそのときに教えてもらえれば大丈夫です」


「かしこまりました。

森での依頼で疲れていらっしゃるでしょうから、今日はゆっくり休んでくださいね」


「はい、ありがとうございます」


とこんな感じで冒険者ギルドから出ようとしたら、見知った顔と遭遇した。


アニスリースとアムリアの息子で薬屋さんの店主マーレンさんである。


「あぁ、サラさん、こんにちは」


「マーレンさん、こんにちは。

冒険者ギルドで会うとは奇遇ですね。先日森へ行っていたので、後でお土産を持っていこうと思っていたんですよ」


「え、私にお土産ですか?

気を使わないで下さいね。

私がここに居るのは不思議な事じゃないんですよ。

職業柄依頼に来ることもありますし、それに実は一応私、C級冒険者なので」


「えっ?!私よりも上位の冒険者だったんですね!」


この世界、兼業冒険者は少なくない。


薬草採取などの小遣い稼ぎやちょっとしたレベル上げに最適だからだ。


引退しない限りは一応籍も置けるしカードは身分証明書にもなる。


非常時には強制的な依頼もありはするけれど、下位の冒険者は後方支援が基本なので滅多に戦う事はない。


それに本職の職種によっては免除もしくは別の依頼を受ける事もある。


例えば薬師なら、先日のゴブリンの襲撃の様な場合ポーションが大量に必要になるので、追加製造やその運搬など、下手な戦力とするよりずっと有効的な後方支援になるしね。


生産系のスキルもレベルは大きく影響するので、ある程度は上げたいと望む人も多いという事だね。


冒険者を本業とする人ほどにはレベルが上がらないし、危険度の高い依頼も受けないらしいけど。


その中でC級というのはかなり異常と言えば異常なんだけど、半分引退した冒険者がお店を出すこともあるし、店を持つために命懸けの資金稼ぎをする事もある。


ハーフエルフのような長命種と人間のハーフの場合、その寿命も長く500年から600年くらいはあるし、青年期がエルフや天人同様長いのでいろんな事を経験している人も多いしね。


「えぇ、両親の影響もあってしばらく冒険者を本職にしていましたし、薬草採取や錬金術、魔道具の材料なども自分で獲りに行く事が結構あるので、ついでで依頼を受ける事もありますしね」


「あー、なるほど。薬草採取のついでにゴブリン退治の依頼を受ける様な感じですね」


「えぇ、そうです。

ただ今回はダンジョンに行きたいので、仮パーティーを組むか護衛依頼を出すかをギルド職員と相談しようと思って来たんですよ」


「むっ、ダンジョン?」


それまで黙っていたラルが急に反応した。


どうやら興味が湧いたらしい。


「この町から馬車で3時間ほどの所にアーストンと言う町がありまして、そこにアーストン迷宮と言う色んな鉱石のゴーレムが出てくるダンジョンがあるのですよ。

錬金術では色々な鉱物も扱うから行きたいのですが、一人だと二重の意味で中層でもかなりキツいのですよ」


「なるほど。ゴーレムか。

どの様な魔物なのか相見えてみたいものだな」


ゴーレムは遺跡やダンジョンが主な生息地だから森の中では滅多に出会えないもんね。


「それにあのダンジョンのゴーレムは経験値が良いので、レベルが上がりにくくて懐に余裕のある人は籠もることもあると言われいます」 


「懐に余裕?」


「そうです。

収集品が鉱石の塊なので、収納魔法やマジックバッグでもないと重過ぎて量や種類を運べず稼ぎになりにくいのですよ」


「あー、魔石や討伐部位、あと高く売れる所を持ってくるのとは訳が違うんですね」


「そうです。

レアな金属や宝石のゴーレムも居ますが、含有量や純度、宝石としての品質も個体や部位でまちまちです。

倒す度に鑑定しながら解体して、というのは環境的に難しいのですよ」


高く売れる部位が個体で違い、それを見分ける目かスキルがないと駄目で、なおかつちゃんと解体出来ないと価値も下がる。


宝石もひび割れや大きさ、透明度に色合いなどでクズ石から高価な宝石まで価値が全く変わってくる。


だけど硬いから簡単に解体出来ないし、重いので数を運べない。

 

森の中より魔物との遭遇率がずっと高いダンジョン内でそれは危険過ぎてあまり稼げないから、結果として懐に余裕がないと籠もれない。


収納魔魔法が大活躍しそうなダンジョンだね!


収納魔法は大抵の所で役立つけども。


「下層まで行ければ宝石やレア金属のゴーレムが出ます。

身体もそうですがそれらが持つ魔石はかなり価値が高いので大きな稼ぎになりますけど、解体も大変ですし下層の方が魔物は強いですからね」


「あの、結界や防御、警報の魔道具が欲しいのですけど、その材料ってアーストンのダンジョンでも取れますか?」


「ええ、大体の魔道具は魔法金属や魔力と相性の良い宝石貴石が必要ですし、私もその関係で中層から下へ行きたいのですよ。

ダンジョンに生えやすい薬草なんかも欲しいですしね」


持ち運ぶ手段があってレベルも上がりやすい上に欲しい物も手に入りやすくなる。


これは行きたい、行くしかない。


ラルも行きたそうだしね!


「よろしければ私達と仮パーティーを組みませんか?

勿論まだ仮パーティーが決まっていなければですけれど」


「え、良いのですか?

こちらもある程度人柄が分かっている方々と組んだほうが安心ですし、収納魔法を使えましたよね?」


「はい、使えます」


「ラルさんもE級ながらかなりの腕前のようですし、依頼を受けるにしても位階の差は構成的に問題ないと思いますから、是非こちらこそお願いします」


と、こんな流れであれこれ打ち合わせをして、2日後の朝にディーアの町を出る事になった。


C級の依頼はなかったけどD級の採取依頼があったので受けることになり、仮パーティーの件も含めてリューネさんへ伝えて依頼の受付も無事済ませる事ができた。


「アーストンの町には冒険者ギルドディーア支部管轄の支店がありますから、何かありましたらそちらをご利用下さい。

依頼に関しても今回の案件でしたらアーストン支店で取扱可能ですから、ご安心下さいね」


と言う事だったので、依頼の契約書と紹介状も書いてもらい、明後日の朝に出発となった。


他のダンジョンへ入った記憶はぼんやりとしかないけど、基礎的な知識は普通に思い出せたので、実際にアーストン迷宮に入った事のあるマーレンさんに色々と教えてもらい、明日一日は準備期間とした。


剣よりも鈍器の方が素材による相性はあるものの効果的だそうだけど、ラルの大剣は魔法金属を使った物なので、彼の腕的に問題なく切れるだろうと言う結論が出た。


問題は私の武器の方だね。


いつも使っているライトメイスは特殊な素材を使っていないし。


収納魔法内にあった記憶にはないけど何故か持っていた武具の中にアダマンタイト製のウォーハンマーがあったのでそれを使う事にした。


片側がハンマー、片側がピッケルかツルハシの様になっていて、柄も含めて総アダマンタイト製なのでアホみたいに重い。


レベル的に筋力が上がっているからそこそこ使えるけど、ダンジョンで使うにはちょっと重過ぎる気もするよね。


もうちょっと鍛えてれば良かったよと思った所で気が付いた。


私は天人だ。


ちょいチートな種族だ。


その特徴の一つ、スキルポイントでスキルを取得レベルアップ作戦があるじゃないか!


と言う事で、早速ステータスウィンドウを立ち上げて残りのスキルポイントを確認する。


12ポイントあったので、取得可能なスキル一覧を表示させ、筋力をアップさせる剛力、耐久をアップさせる剛健、敏捷をアップさせる俊敏をそれぞれ2レベルずつ取得した。


一部を除いてスキルは1レベル取得で1ポイント、2レベルに上げるには2ポイントと取得したいレベル分のポイントを消費する事になるので、残りは3ポイントあるけど、何かの時用に取っておく事にした。


剛力、剛健、俊敏ともにスキルレベルの十倍%能力値に加算される物で、筋力が67ある私はプラス20%の13追加され80になり、耐久や敏捷も同様に上がった。


この系統のスキルはレベルが低くて能力値が低い内はあまり効果がないんだけど、能力値が上がれば上がるほど強化されるので、戦闘職には凄く便利なものだったりする。


能力値はもっとあれこれ考えてからどれを上げるか決めたいのでいじらない事にした。


「ラル、ちょっとスキルポイントでスキルを取ったから慣らしに行くけど、一緒に来る?」


「おぉ、行こう。

サラ様、人種は自然の芽生えの他にそのような事が出来るものなのか?」


ちょっと驚くラルに、「天人族とか一部の種族だけだよ」と教えると、生暖かい目で見つめられたけど気にしない。


門の外に出て東の森に入り、ラルにひと声かけてそこに待たせて人目につかないよう森の木々ギリギリを気配を殺しつつ飛ぶ。


森の深部付近に降りるとラルを召喚、そこから狩りを始めることにした。


地面に魔力で描かれた魔法陣からヌッと現れるラルの姿はちょっと面白かった。

 

魔封じの森の中層辺りにも居そうな魔物がそこそこ居たので、ウォーハンマーで何体か撲殺して身体を慣らした。


戦闘スキルに関しては、汎用武器戦闘があるから問題ない。


ラルも丁度よい運動になったと喜んでいたけど、召喚による移動方法は嫌そうだった。


だって飛んだ方がずっと早いんだもん。


と言う事で帰りも同じ方法で帰り、獲物はランク外の魔物だったから位階が上がるまで収納しておく事にした。


時間停止最高!


踊る白鳥亭でしばらく戻れない事を伝えて宿泊を今晩までにしてもらい、翌朝出発した。


ちなみに昨日あちこちの店で食べ物は買ったけど、その前も買い込み過ぎていたのでストックが半端ないです。




そんなこんなでアーストンの町へと乗り合い馬車に乗って昼前に到着した私達は、その辺の店で軽く腹ごしらえをしてから冒険者ギルドの支店で紹介状を提出し、アーストン迷宮へと向かったのだ。


アーストン迷宮は既に最下層まで攻略されていて、全部で15階層までの中規模ダンジョンに当たる。


ダンジョンは仕組みが不明な不思議機能の塊だ。


地下や塔の中なのにジャングルや砂漠な階層があったりするのは当たり前で、謎のヒーリングスポットがあるダンジョンや、何処からか沸く宝箱、転移機能付きなどダンジョンごとに違うけど、基本として特殊な場所である事には変わりない。


ただ魔物が多数住み着いているだけの廃墟や洞窟などはダンジョンとは呼ばないそうだ。


なおアーストン迷宮は、階層の奥にある石柱に触れると登録されて、転移魔法陣で地上へ戻る事が出来、逆に一度触れた石柱のある階層まで降りる事も出来ると言う。


これは個々人に依存するので、パーティーなら全員が登録していないと使えない代物らしいけど、それでも生存率は高まる措置だよね。


あとは5層ごとにボスと呼ばれる同階層から見て強いモンスターが現れるけど、それは初めてその階層へ来た人の前にしか出現しない仕組みになっているそうだ。


マーレンさんは個人だと中層、パーティーだと下層の途中まで降りた事があるけど、私達が一緒に居るので一階からスタートして、また5層のボスと戦うことになる。


「ボスを倒すとレアな薬品や素材、魔道具等が手に入る事もあるんですよ!」


と目をキラキラさせて話すマーレンさんに、何となくあの二人の子供だなと思う私だった。


アーストン迷宮の入り口周辺は高さ5メートルほどの石壁に囲まれていて、ちょっとした広場になっていた。


「ダンジョンは極稀に魔物の氾濫が起こる事があるので、その対策ですね」


とマーレンさんが説明してくれた。


アーストン迷宮の入り口は広場の奥にあるやや大きな石造りの建物内にあり、その左右に東屋に似た作りの建物があった。


「向かって右が登録した階層へ転移する為のもので、左が帰還で転送されてくる場所ですね」


中心の建物は30人、左右の東屋は10人くらいは入れる大きさで、私たちは入り口のある建物へと向かった。


建物の前には冒険者ギルドと領の合同受付があり、所属と名前、パーティーがある場合はそれも台帳に書き込むだけで済んだ。


建物に入ると広々としたホールの奥に横幅5〜6メートルほどの下り階段があり、そこをしばらく下りると再びホールがあり、冒険者ギルドと領軍のテントが設置されていて、壁際に大きな石造りの門が開かれていた。

その左右に兵士が立っていて、魔物が出て来ないよう見張っていた。


「この先がアーストン迷宮です」


「早速行きますか!」


「うむ、楽しみだ」


こうして私たち3人はアーストン迷宮へと足を踏み入れたのだった。

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