017 世界最強の防犯システム④
トイレで用を足した後、俺はモール街の通路を歩く。
この後は昼飯食って、ボウリングでもして遊ぶとするか。映画とかは日本語の字幕はないからさくらにはまだ早いだろう。
しかしやっぱり贈り物ってのはどうにも慣れない。
フィアナとさくら……2人の女の子にプレゼントを渡して喜んでもらえたが、正直目的以上の笑顔をもらい困惑してしまった。
ただ一言ありがとうくらいで良かったんだけど……女の子の笑顔はやっぱり眩しいな。
誰よりも強かった親父が母さんの笑顔には勝てなかったと言っていた理由がよく分かる気がする。
冷静に振る舞ってるつもりなのにまだ混乱してしまっている。
まだ二人のところに戻れるほど頭が落ち着いていないようだ。
強くなったと思ったのにださいな……。
「お兄さん!」
甲高い声に振り向くとくせ毛の金髪に身なりの良い服をした10歳くらいの子供が立っていた。
何やら慌ててるようで俺の手を引っ張る。
「なんだ?」
子供はなおも俺の腕を引っ張る。
「あの……黒髪のお兄さんと一緒にいた綺麗な顔をしたお姉さんが倒れてしまったみたいです。仲間が介抱してますのですぐ来てもらえませんか!?」
「フィアナとさくらか!? どこだ」
「こっちです!」
子供の先導について行く。
通路を過ぎ、イヤンモールの外へ出て、人気の少ない草場の方へ行く。
「2人は本当にこんなところにいるのか?」
「ええ……」
少年は後ろを向いたまま頷いた。
「もう一つ聞いていいか?」
「……?」
「サイズのおかしい上等な上着を着ているのはいいとして、インナーは何でそんな廃れているんだ?」
出会った時から不審に思っていた。
子供の来ている上下の服は中間層以上が着ていそうなしっかりとした生地の服だった。
それなのにちらっと見えるインナーは汚れてすす破れていたのだ。
「ま、答える必要はないですね」
「なぜだ?」
「気を失うからですよ、やってしまえ!」
「っ!」
その声と共に武器をもった子供達が飛びかかってくる。
数にして10人ほど。小さいが鉄パイプなど危険な代物を手にしている。
だが。
「……ま、めぼしいものは頂いていきますが命までは取らないので」
「言うじゃないか」
「え」
金髪の少年は振り返った。
「誰の命を取らないって?」
「……な、なんで」
金髪の子供はびっくりし、後ずさる。
そうだろうな。俺のまわりには気を失った子供達が全員残らず地に落ちていたのだから。
「バカな! 10人はいたんだぞ、大人でもこの数は!」
「たかが10人で俺を倒せると思うな。1000人は呼んでこい」
俺は金髪の子供の胸ぐらを掴む。
「おい、どういうことか説明しろ」
「ぐっ」
子供は口を噤むが……だいたいは予想出来ている。
不審には思ったがフィアナとさくらが倒れたって言葉で焦ってここまで来たのが失敗だった。
俺を取り囲むガキ達の気配で察したが、全てを知るには遅すぎた。俺もまだまだだな。
恐らく俺をフィアナとさくらから離そうとしたのが狙いか。
「金を掴まれたってことか」
「あぁ、そうだよ。あの綺麗な銀髪の姉ちゃんをさらうから……邪魔な男を遠ざけろって」
狙いはやはりフィアナか。
しかも誘拐だと……。確かに貴族狙いの誘拐事件はサルヴェリアではよく聞く話だ。
でも実際目のあたりにするとずっと暮らしてた日本とは違うと認識できてしまう。
だが運が良かった。あれを渡した後なら……対処ができる。
俺はスマホを取り出し、アプリを起動させる。
親父からもらった高性能の追跡アプリだ。フィアナに渡したブレスレットには小型の発信器をつけてある。試すつもりだったのに……早速役に立つなんて。
スマホやバッグは取り上げられるだろうが、さすがにブレスレットまでは大丈夫なはず。
車レベルのスピードでモールから離れていきやがる。
やっぱりさらわれてしまったのか。
スマホを取りだしてフィアナにもさくらにも連絡をしたが繋がらない。2人とも一緒にさらわれた可能性が高い。
ぬかった。
「急いだ方がいいな」
サルヴェリアの警察に連絡し、俺は息を吐く。
大丈夫だ。今の俺ならやれる。俺はこの国に《《そのために来たのだから》》。
「おいクソガキ」
「なんだよ……」
「警察に引き渡さない代わりに一番頑丈な自転車を貸せ」
「何をする気だよ。……相手は車だぞ」
「ふん、誰を敵にまわしたかを身を持って味わわせてやる」
次回救出編です。フィアナ視点でお送ります!




