014 世界最強の防犯システム①
「零児くん、フィアナちゃん、あ~~~そ~~~ぼ~~!」
夏休みのラジオ体操へ行くように朝から家の前で大声で叫ばれる。
日本語なので誰が言ってのかすぐに分かった。
4月初めの平日。今日は暖かいので薄着で外に出る。
「朝からうるさいぞ、さくら」
「えへへ、待ちきれなくなったんよ」
この国では珍しい長く美しい黒髪が風に揺れ、顔立ちの整ったかわいらしい女の子が笑う。
皆代さくら。3日後の入学式を経れば同級生となる。
「こっちにも桜はあるんやね」
「サルヴェリアのイチローが移植したって話があるな」
「ふーん」
外は桜が満開であった。
日本のような花見ができるレベルでないが……それでも去ってしまった日本の地が懐かしくなる色合いを感じる。
同じ名前を持つ、さくらはじっと見上げていた。
さくらは春先らしい明るい格好をしている。
女の衣服は詳しくないのでよくわからんが、トップスもロングスカートも良く似合っていて可愛らしい。
これは褒めた方がいいんだろうか?
いや、デートじゃないもんな。
「フィアナちゃんは?」
「さくらに会うからって気合いいれてたぞ」
「ほんまに! 嬉しいわぁ。フィアナちゃんなら何着たって似合うんやろうなぁ」
ま、そうだろうな。
部屋着ですら似合ってたし……。美形ってやつのうらやましさを思う。
「零児くん」
「ん」
「おはよう。今日は楽しみだね!」
さくらから放たれた言葉はしっかりとしたサルヴェリア語であった。
「へぇ、勉強したんだな」
「座学は相当やったからだいぶ文字は読めるようになったよ。喋りはお父ちゃんと練習したけど、まだまだやね」
「あっちは反復だろうな」
この短期間でしっかりと勉強できるってことはやはりさくらは優秀なんだろう。
すごいもんだ。
がちゃりと扉が開いた。
中からと出てきたのはシャロンだった。
「生徒会か?」
「うん、次の新入生の件で忙しいのよ」
シャロンは中等部の生徒会に所属している。まだ春休みだというのに学校へ行く日が多い。
「あ、噂の……日本人の」
シャロンはさくらの前に立った。
「零児の妹のシャロンです。サルヴェリアへようこそ。今日は時間が無いので残念ですけど、またお話聞かせてください」
「え? あ……はい」
シャロンは手を振って、学園へ向かって去って行った。
シャロンは日本語を話せないので今の言葉はサルヴェリア語になる。
さすがに聞き取れなかったのかさくらの反応が鈍かった。
「ねぇ零児くん」
「あん?」
「半分以上聞き取れんかったけど……あの子、妹って言ったよね」
「ああ」
「マジ!? 全然似てないやん! 実は複雑な関係!?」
「俺がハーフって言ってなかったっけ。俺は日本人よりでシャロンはサルヴェリア寄りだ」
「はへ、そうなんや。妹ってことは年下!?」
「ああ……」
「ムッチムチやん! 太ももはち切れそうやったやん! 爆乳やし!」
「妹を変な表現しないでくれ」
「グラビアアイドルって思うくらい美人さんやったし……。やっぱサルヴェリアって凄いんやな」
シャロンは母に似て、成長が著しいからな。
あー見えて体重とか気にしてるんだぞ。
血筋と体質的に太ももとか胸がパンパンになりやすくて……兄として男を惹きつけるルックスは複雑だ。
「もしかしてお母さんとかお父さんも美形なん?」
「母はそうだな。俺は親父の生き写しって言われてるくらいだから父の方は察してくれ」
「えー、零児くん、結構かっこいいと思うよ! 10年経ったら時代が追いついてくるで」
それっておっさん臭いってことだろうか……。
さくらなりの気遣いなのかもしれないが。
ま、小、中とまったくモテなかったわけだし、自分の容姿についてはある程度自覚はあるからどうでもいい。
「妹のシャロンちゃんにフィアナちゃんに囲まれるなんて、零児くん結構美女に囲まれやすい体質なんやない?」
「2人は家族みたいなものだし……ただ」
目の前のさくらも可愛らしい容姿をしているからあながち間違いではないかもしれん。
フィアナやシャロンのような煌びやかな外見と比較すると地味な印象になってしまうが、実際の所さくらの方がいいって言う人の方が多いかもしれんな。
特にサルヴェリアの女性に慣れきった貴族男子連中はな。
ま、それでも。
「お待たせしました!」
世界一の美少女が一番と思えてしまうのが……許婚の由縁なのだろうか。
1章最後の長編です。
タイトルの意味は最後には分かるので今はスルーしてください。
元ネタがある意味ヒントかもしれません。




