第6話
更新が遅くなってすみませんm(._.)m
「何、バロン伯爵がか?」
宰相はそう言うと、思わず息子のクロードと顔を見合わせました。
「父上…!」
クロードが期待に満ちた顔で宰相に話しかけます。
「クロード、やはり無理なようだな。」
宰相はため息をついて語りかけます。
「え、でも…?バロン伯爵さまがこちらに来られるのでは?」
クロードがわけが分からない様子で宰相に尋ねます。
「クロード、わからぬのか…。このように早く連絡するのは断る以外ないではないか。」
宰相はため息まじりに答えます。
「…使いの者にお待ちしているとすぐに伝えてくれ。」
宰相は執事になんとも言えない表情で言います。
「かしこまりました、だんなさま。」
執事はそう答えると、礼をして出ていきました。
「…クロード、もうよいであろう。明日はバロン伯爵が来られるゆえ、仕事を片付けておかねばならぬ。」
宰相は複雑そうな表情をしたクロードを追い払うように言います。
「はい…。」
クロードは仕方なさそうに、肩を落として部屋を出ていきました。
さて、翌日になり、いささか緊張した面持ちのバロン伯爵がやってきました。
「宰相さま、お忙しい中、本日はお時間つくっていただき御礼申し上げます。」
「いやいや、お気になさるな。まあ、どうぞお座り下さい。」
宰相は鷹揚に構えて、席に座ります。
出されたお茶を飲み干すと、宰相は話を切り出します。
「早速ですが、バロン伯爵どの。本日は昨日の返事を聞かせていただけるのでしょうな?」
「は、はいっ。恐れながらこのたびのお話を…」
バロン伯爵が話し始めると応接間のドアの前でクロードが聞き音を立てていました。
「クロードさま、盗み聞きなどしてはなりません。」
執事が見かねてクロードをたしなめます。
「見逃してくれ、じい。私の縁談が決まるかどうかのことなのだ。」
クロードが執事にたしなめられてもなお、バロン伯爵の言葉を聞き逃さないように耳を傾けます。
「クロードさま…!宰相さまのご子息にして、公爵家の後を継がれる方が…」
執事はため息をついて、やれやれを言った表情で言います。
「…お受けしたいと存じます。ふつつかな娘ではございますがよろしくお願いいたします。」
バロン伯爵は、緊張しながらも一気に言いました。
なにしろ鬼の宰相と言われる人ですから。
「え…、お受けいただけるので?いや、まさかお受けいただけるとは、うれしい限りですなぁ。」
宰相は断られると思っていましたので、意外でした。
「恐れ入ります、宰相さま。」
バロン伯爵は気恥ずかしそうに答えます。
「いえいえ、バロン伯爵どの。さあ、そうと決まれば、早速祝いのワインなど用意させましょう。」
宰相はそう言うと、パンッパンッと手を叩いて近くに控えているはずの執事を呼び出します。
「はっ…。クロードさま、お早くおもどり下さい。」
執事は慌ててクロードを押しやろうとしていました。
すぐにやって来ない執事を不審に思った宰相は応接間のドアを開けると、そこにはこの縁談の当事者の息子のクロードがいました。
「クロード、おまえはここで何をしているのだ!」
宰相はぎょっとして思わず叱り付けました。
「あ、いえ…。父上、その…。」
クロードは思わずしどろもどろになってしまいました。
「…宰相さま、どうなされました?」
バロン伯爵が宰相の叱り付ける声を聞いて心配そうに声をかけます。