勘違いのその先に
「そ、それは、シャリーが可愛すぎるから!」
「……へ!?」
「シャリーが可愛すぎて、至近距離で直視なんかできないからだ!
今だってすごく緊張してるんだ!
婚約者として初めて会った時から、こんなに可愛い子と結婚出来るなんて嬉しくて嬉しくて!
それでいて、シャリーをつなぎ止めておける自信がなくて、僕なりに勉強も、芸術も、君は屈強な男が好きだと思って剣術も頑張ったんだ。
君の隣に立てるように。
それなのに君は勝手な勘違いをして、簡単に僕との婚約を破棄するなんていうから……。」
私の肩に置いた手の力が強くなった。
「そんなに、ジーンが好きなのか?僕ではダメなのか?」
「だから何故そこでジーンが出るのです?」
するとポカンとして顔をあげた。
「君はジーンが好きなんじゃないのか?」
「へ?彼は従兄弟でそれ以外の感情を抱いたことはありません!」
どうしてそんな勘違いを。
「そう、なのか?そうなのか!てっきりジーンのようにたくましい男が好きなんだと思っていた。
だって、よく、騎士の練習を見に行っていたから。」
「いえ、私はマリーに誘われてついて行っていただけで。」
そう、筋骨隆々のたくましい男の人が好きなのはマリーで、クレイン様を好いていると思った時は少し以外だとも思ったけど、勘違いだったなら納得いく。
それに、
「それに私も、昔から、で、殿下だけが、好きでした。」
ずっとずっと、勘違いで隠していた思い。
緊張して語尾が小さくなってしまった。
でもクレイン様は聞き逃さなかった。
「ほ、本当に?ほんとうにのか!?
そんな、夢見たいな……、
夢じゃないんだよな…………。」
一番驚いていたのは殿下だった。
「本当です。夢でもありません。」
するとどこからともなく バーーン!!!
と大きな音とともに明るくなった。
花火が上がっていた。
次々と上がる色とりどりの花火。
そして聞こえる人々の声。
「あぁ、自分のことで精一杯で忘れていた。
今までずっと、自信がなくてシャリーと向き合うことを恐れていた。
でも、あまりにあっさりと婚約破棄だなんて言うからもう逃げていられなかった。
だからみんなに頼んだんだ。僕がもう逃げられないように祝う準備をして欲しいと。
僕とシャリーが結ばれることを祝う祭りをこの数日で準備してもらった。
断られても離す気はなかったし。
国民みんなが参加してくれている。
臆病な自分を奮い立たせるには十分すぎる。
一緒に外に出よう。」
殿下は肩から手を離して私の手をソッと取り、窓の外までエスコートをする。
お城の最上階から見える街のお祭り様子はとても賑やかで、街の人々も私たちが出てきたことに気付いて一斉にこちらを見る。
みんなが見ている中、クレイン様は膝をつきこう言った。
「僕と結婚してください。」
私は涙が溢れて止まらなくなった。
答えなんて決まってる。
「はい!」
するとクレイン様も感極まって大勢の人が見ている中、
私にキスをした。
すると花火が更に上がり、街からは
「おめでとうございます!」と、
祝福の声が聞こえた。
生まれてから、こんなに幸せな日は初めてだった。