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080 戦争準備


 王国と帝国。

 両陣営が戦争を容認してから、数日が経過していた。


 国境へと集結する両国の兵士達。


 帝国は当然として、王国側も所領を持つ貴族と連携し、その兵力を一点へと集中させていた。


 斥候より知らされた両軍の兵数は凡そ一万。

 この時代においては、大軍とされる数であった。


 砦へと入り、両軍は睨み合いを続けている。

 帝国より宣戦布告をされるのも、時間の問題だと思われた。



「随分と、久しぶりに感じるな……」



 砦の見晴らしより国境線を眺めつつ、ピストン=セクスは呟いた。


 アレより先が、ペタン帝国。彼の生まれ育った国である。


 感慨深い表情を浮かべつつ、彼は自身の股座で前後運動する頭を手で掴み、その動きを激しくする。



「む、むぐぅ!? むぐぐぅ!?」


「もっと早く。丁寧に。動きはこう――な?」


「ぶぼっ おぐ、……ッ! ……ッ!!」


「――美味いか?」


「んぐっ、ん……っぱ! は、はひぃ! おいひぃれふぅ……♪」


「そうか、そうか」


「んぼッ!? えろっ、べぶ……ッ!」


「――はは」



 自身のモノを相手に咥えさせつつ、ピストンは無感動に哂う。

 その様子を遠巻きに見ていたのは、彼の仲間達である。



「……アレ、本当に良いのか?」


「良くは無い。良くは無いが――あそこまで手懐けた姿を見せられてしまうとな……」


「……」


「あー、ヨルガ様は複雑かい?」


「……あの者が地下牢で襲撃にあったというのは知っておる。牢に残しておいては命が無いと言うのもな。見た所、害は無い様子。ならば儂は、指揮官殿に従うまでじゃよ」



 言って、黙りこくるヨルガ。

 言葉とは裏腹に、その機嫌はすごぶる悪い。


 それもその筈。


 今まさにピストンのを口にしているのは、地下牢に繋がれていた筈のセネル=アンヴァサダーであるからだ。


 紅玉騎士団、壊滅の原因を作った相手である。


 殺意を抱くなと言うのが、無理な話。


 襲撃の件を知った陛下が、別の牢への移送を勘案し、ピストン=セクスが「それならば」と自身が監視する事を提案し、そのまま部隊へと配属させてしまったのだ。


 彼女が調教され尽くした様子だったのもあってか、女王キサラはピストンに引きながら、その提案を承諾。


 晴れて女王公認となって、この場へと居る運びとなった。



「旦那の魔術は、本当エゲツねぇなぁ……」



 息を吐きながら、ガステロは呟く。


 セネル=アンヴァサダーの事は知らない彼だったが、その実力はリブラより聞かされている。王国三英雄の一人と競り合い、打ち勝つ実力者。それをあんなにも骨抜きにしちまうとは――と、彼は思わず慄いてしまう。



「……良いんじゃないっスか? 今は実力者なら猫の手だって借りたいぐらいっスし」


「スーリヤ……」


「別に許した訳じゃないっスよ? ただ、ああやってピストンさんに虐められてる所を見ると、同情心が芽生えてくるというか――」


「あれは別に、虐めてる訳では無いと思うのだが――」


「え? 虐めじゃないんスか?」


『……』



 紅玉騎士団、副団長・スーリヤ=リナパルトの言葉に、思わず沈黙してしまう三人。


 気まずい空気が流れだした頃、ヨルガは話題を変える為に態とらしい咳払いをしてみせる。



「……スーリヤよ。何もお主まで部隊に入らんでも良かったと言うのに……」


「お爺ちゃんが戦うって言うのに、アタシが出ない訳にはいかないじゃないっスか。それに、ピストンさんの戦ってる所も見てみたかったっス!」


「アレを見て、それを言えるなら大物だな」



 疲れた様な顔で、リブラが呟く。その視線の先では、ピストンがセネルに向かって腰を振っていた。



 ――完全に、(さか)っているな。



 今までの彼女なら、羞恥に赤面でもしていた場面なのだが、流石に慣れてきてしまった。


 それを成長と取るかは微妙だが――


 思いながら、リブラは背後へと振り返る。



「――本当に、良かったのか?」



 その言葉は、彼女に対する確認であった。


 非戦闘員。


 本当なら、この場にいるのもおかしな存在。


 村娘・アメル=レイテは、リブラの言葉に静かに頷いた。



「此処に、居たいんです。何も出来ないかもしれない。それでも、此処に――」


「……」



 彼女の言葉に、リブラは何も言えなくなる。


 軍属の立場から考えると、彼女の存在はマイナスにしかならないだろう。即刻帰らせるのが普通である。


 けれど――アメルは仲間であった。


 共に過ごした時があった。


 絆があった。


 故に、彼女の意思を尊重したいと、リブラは思ったのだ。


 その気持ちは、ガステロとて同じ事。


 外様であるヨルガやスーリヤは、口を挟む事では無いと静観の構えを取っていた。



「……好きにすれば良いだろう?」


『!』



 彼等の集団へと声を掛けて来たのは、先程までセネルを犯していたピストンであった。


 彼は皆の顔を眺めると、最後にアメルへと向き合った。



「ピストンさん……」



 会った時とは、全く違う様子を見せる彼。アメルはピストンに対し、どういった対応をすれば良いのか分からなかった。


 無言のまま、時間だけが過ぎていく。


 すると――



「ヤりたい事をヤルのに、理由なんて必要か?」


「え……?」


「食いたい時に食い、寝たい時に寝て、犯したい時に犯す。俺は何時だってそうしてるけどな……」


「……」


「なぁ、アメル。お前のヤりたい事は何だ?」


「わ、私は――私は、ピストンさんの傍に居たいですッ!」



 アメルの叫びに、ピストンは小さく「そうか」と頷く。



「誰の許可も必要ないから、勝手にやれよ」


「!」


「正直者は得をするって言うしな。自分の欲求に素直に従い、動いてみろよ。そしたらさ――キモチイイぜ?」



 言って、ピストンはその視線を帝国の方角へと向ける。



「あ~あ~、楽しみだなぁ~戦争。一体どんな風になるんだろう? お祭りみたいでワクワクするなぁ」



 にこにこと。

 子供の様な無邪気さで、ピストンは笑う。



「きひひッ、懐かしい連中にも会えるかなぁ……?」



 まるで同窓会気分である。

 ピストン=セクスの発言に、周囲は若干引いていく。



「なぁオルガ――お前、元気にしてるかよ?」



 言葉に含む物は無かった。弟の計略により実家を追放された彼だったが、その事に対する恨み辛みはもはや無い。



 ――会ったら、()()()()()()()()()……?



 ピストンの頭には、愉しみが溢れていた。



 お読み頂きありがとうございます\\٩( 'ω' )و//


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