063 幻惑のアステリカ
背後からの気配を充分に引き付けた僕は、放たれた矢の様にその場から駆け出した。
「ピストン!」
此方を気遣うようなエリーゼ嬢の声を背に、僕は件の追跡者へと突進する。
しかし――
「ッ! 気付いたか!?」
此方の魂胆に気付いた相手は、暗がりの中でその身を反転。
その場から逃走を開始する。
驚いたのは、その速度である。
現在の僕のステータスは、これだ。
――――――――――――――――――――――――――
[ピストン=セクス LV.37]
【種族:人間】【クラス:深淵剣士】
総戦力:3400
生命力:580/580
魔法力:430/430
攻撃力:710
防御力:580
素早さ:625
賢 さ:305
幸 運:170
スキル:剣術LV.7 性魔術LV.MAX 火属性魔術LV.MAX
魔法剣LV.MAX 身体強化Lv.2 解析LV.MAX
術技:【性】リリス 【火】ファイアー・ボール
【性】ティエス【火】ボルケイノ
【性】エンド 【火】メギドフレア
【弱点……なし】
【脅威……性魔術】
――――――――――――――――――――――――――
正直、自分でも……かなり強くなったと思う。
六つの固定スキル枠は全て埋まり、内四つは最大LV(LV3以上でMAX表記)に到達しているし、唯一LV上限が10の技術系スキルもLV7と相当高い。
総戦力3400――これを超える者など早々いないだろう。
最近は日課の"腰振り"も大して出来てはいないが――それでも充分なステータスを誇っていると自負している。
している、のだが――
「……速いッ!!」
それなのに、何故目の前の人間に追い付けないのだろうか。
――素早さ625。
この数値を越える者など、今まで見た事がなかったぞ!?
明らかにただのストーカーではない。
「何者だ、貴様……ッ!!」
「……」
逃げ続ける影へと問うと、気の所為か、その速度は若干ながら遅くなった様に感じてしまう。
「……釣れたのはピストン=セクスか。あーあー。予想外だなぁ。これじゃあ"団長"に怒られちゃうよ」
「ッ!? 貴様――」
目の前の影は道の先の塀を蹴ると、その場で大きく跳躍する。空中で弧を描きながら、ソイツは僕の背後へと降り立った。
「やぁ、初めまして――」
纏っていた黒衣を脱ぎ去り、姿を現したのは想像よりも年若い少年であった。
若干長めの水色の髪。
腿の付け根まで足を露出させた短めのズボンを履き、上には半袖のジャケットを羽織っている。外見的な特徴と言えば、首元のチョーカーが印象的か。
少年ながら何処となく少女らしさも併せ持った子供である。あどけない表情はそのままに、その口元には笑みを湛えながら此方をじっくりと観察していた。
黒衣とは――つまり――
「黒霊死団か――ッ!?」
「うん。御名答ー。僕がその幹部のアステリカ=シンドロームさ♪」
「!」
「以後、宜しく……」
あっけらかんとした口調で、べらべらと情報を吐く少年。
「アステリカと言ったか? 良いのか、そんなに喋っても?」
「構わないよ。こっちは基本、裏方だし。名前程度が分かった所で、僕の活動には些かの問題は無いからね」
「裏方? 黒霊死団の雑用係と言うのはお前の事か?」
「……それ、誰から聞いたの?」
問いながら、アステリカと名乗った少年の圧力が増す。
明らかに、不機嫌になった様子だな。
「態々言うと思うか?」
「ふぅん。――ま、いっか。大方の心当たりはあるからね」
「……で? ヤるのか?」
剣を構え、アステリカへと対峙する僕。
コイツもセネル=アンバサダーと一緒だ。
解析スキルが弾かれる。
ステータスを読む事が出来ない手合いである。
実力は未知数、か。
「やだなー。おっかなーい。僕、暴力的な男の人って嫌いなんだよね。言い付け通りとはいかなかったけど、元々が団長の私怨なんだから別に良いよね?」
「何……?」
「ピストン=セクスかぁ。まさか此処まで邪魔な存在になるなんてね? 僕は何もしないけれど、他の皆は結構君の事、狙ってるみたいだよ?」
言って、アステリカの身体が徐々に光へと包まれていく。
この現象、見覚えがあるぞ。
これは――ドゥカティ迷宮で見た転移か!?
「貴様ッ!! 逃げるかッ!!」
「僕の事なんかより、お姉ちゃんの心配をした方が良いんじゃない? あの様子だと――きっと出会っちゃうよ?」
「……ッ!?」
出会う?
それは――何と?
「……」
問い質す前に、アステリカの姿は光へと消えてしまう。
何処ぞへと"転移"したのだろう。
……奴を捕まえるのは、中々に骨かも知れない。
「エリーゼが、危ないだと……?」
嫌な予感がする。
僕は急かす気持ちで、彼女の元へと駆けるのだった。
お読み頂きありがとうございます\\٩( 'ω' )و//
もし面白い・応援したいと思って頂けたならば、ページ下部の☆の評価ボタンやブックマークなどを押して頂けると嬉しいです。
応援・感想は執筆の励みにもなりますので、気軽によろしくお願い致します!




