036 シェザラーナと作戦会議
ジャンル別日間コメディーで、7位になりました!
嬉しかったので、18:00頃にまた投稿します(๑ゝω╹๑)!
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功績を挙げろ。
女王からそう言われ、騎士達の拘束から解放された僕は、今現在バスティア王城の中庭を歩いていた。
とんでもない事になったという意識は確かにあるのだが、その感情は何処か上の空。
原因は間違いなく、あの苛烈な女王の所為だろう。
「美しかったな……」
思わず、ポツリと呟く。
己の価値観を揺るがす様な出会いだった。
帝国人が理想とする女性像とは真逆の存在だったが、一目見て頭を殴られたかのように分からされてしまった。
リゼル=エトワール=ツルリッピーナ三世。
帝国の女王陛下にも劣らぬその美貌に、僕は自身の精神を大いにかき乱されてしまう。
「巨乳かぁ……」
ただの脂肪の塊だと思っていた。
だが、今はそんな無知な自分を恥じている。
「……ストン、おい、ピストン!」
「……?」
「なんや。大丈夫かいな、この人?」
おっと、また意識を飛ばしていた様だ。
いかんいかん、自嘲せねば。
僕は己を呼んだリブラへと向き直り――その隣に立つ見知らぬ女性の存在に小首を傾げた。
「あっと――君は?」
「はぁ、アカン。やっぱこの人何も聞いとらんかったで?」
「ピストン……」
「……何か良く分からんが――スマン」
声に独特な訛りがある女性は、呆れた様に僕へと詰め寄る。
フワフワとした蒼い髪に白い帽子。目元の泣きボクロが特徴か。その上の糸の様に細い眼は、口調こそ強いこの女性に柔らかみを感じさせていた。
頬を膨らませながら、観察する様に此方を見詰めた女性は、ややあってから背後のリブラへと振り返る。
「ホンマにこの人が四大武尊の家の出なんか? なんや、ボケーっとして頼りなさそうに見えるんやけど?」
「ピストンは、有事の際に実力を発揮する男だよ。実際、私は彼に敗北を喫しているしね」
「ほぉん? 言うてもリブラはんは優しい人やからなぁ。無意識に手加減でもしてたんちゃうか?」
疑う様に言葉を返す女性。
「戦士として断言するよ、シェザラーナ――それだけは無い」
「……ま、そこまで言うなら信じるわ」
シェザラーナと呼ばれた女性は、そう言ってあっさりと自分の意見を翻した。僕を信じたのではない。恐らくは、リブラ=トレーサーという人間を信じたのだ。
「ところで、貴女は一体……?」
「あぁせやな。自己紹介もやり直しますか。ウチはシェザラーナ=モンブラン。男爵家の子女……ってな肩書よりも、アジール商会会長の娘って言った方が通りがええかな?」
誇らしげにそう言うシェザラーナだったが、そうは言われても僕は世俗に疎い。アジール商会という名前にも聞き覚えは無かった。
「うわぁ、なんやその顔。めっちゃ無反応やん……」
「……スマン」
「うーん、そう謝られるとキツイわぁ。なら、リブラはんの飼い主って思ってくれてればええですわ」
「飼い主?」
「ピストン……私はな、此処にいるシェザラーナに拾い上げて貰った身なんだよ」
そう言って、リブラはシェザラーナとの関係を説明する。
トレーサー家は、元々貴族の家だったらしい。
帝国との戦争に反対していたこの家は、戦争が終わった後に好戦派によってその名を汚され、没落していったという。
リブラ=トレーサーは、戦奴として金持ちに飼われていた。
それはただの道楽だったのだろう。元貴族の一人娘を冒険者として登録して、死地へと赴かせる遊び。
金持ち達は、彼女の生死に金を賭けて愉しんでいたという。
意思の力か。
はたまた、神の祝福か。
リブラは生き残り続けたという。
金持ち達にとっても、これは誤算だっただろう。
リブラ=トレーサーは戦い、戦い、戦い続け――遂にはSランク冒険者にまで成長を遂げてしまう。
影ではクリントン・ギルド長の支援があったらしいが、それでもこれは偉大な事である。
【首輪付きのSランク】
その名は王国首都にまで轟き、シェザラーナを呼び寄せる。
反戦派である彼女は、好戦派の勢いに身の危険を感じており、早急に信頼できる護衛が欲しかったという。
そこで目を付けたのが、リブラだ。
金持ち達とのリブラの身請け交渉は簡単に終わった。
アジール商会が持つ資金力。
その力も交渉を早期に終わらせた要因ではあったのだが、一番は彼等がリブラに飽きていたというのが大きい。
壊す為に買った玩具だと言うのに、彼女は壊れなかった。
酷く不愉快な理由だが、彼女が解放された理由とはそういう事らしい。
「……腹が立つな」
僕は思わず、話の腰を折って呟いてしまう。
「だが、おかげでシェザラーナに拾って貰えた。あの頃とは環境が違う。今はとても自由にやらせて貰っているよ」
「ウチが欲しいのは命令に従う兵隊やない。真にお互いを信頼できる相棒が欲しかったんや。その点、リブラはんは強さも性格もウチ好みやったって訳やな!」
シェザラーナの元で功績を挙げる内に、王国内でもリブラの評価は上がっていき――
『貴様、中々見所があるのぉ! モンブランには我から言っておいてやる! 今日から将軍職へと就くが良い!!』
女王陛下へと、直接にそんな事を言われたらしい。
……成程な。
あの女王なら、確かに言い兼ねない。
「ならば今、国境へと左遷されたのは?」
「宰相であるボロン=パイスキーの差し金さ。君も話して分かっただろうが、宰相は好戦派の筆頭だ。その権力も陛下が無視出来ぬ程に高い」
「……厄介だな」
「せや。そんな厄介な奴に君も目を付けられたっちゅー訳やで」
軽く言うシェザラーナだが、その眼は笑っていない。
「どないするんや? 宰相が否定出来ん実績挙げろー言われたんやろ? しかも七日で。……こりゃ、中々にハードやで?」
「そう、言われてもな……」
首都ブルボンにやって来たのも最近なのだ。
何をしたら良いのかもサッパリだ。
「君の知恵を借りたいんだ、シェザラーナ。この件をクリア出来れば、陛下は私達の望みを叶えると言ってくれた」
「……それで、リブラはんは中央に戻れると思ってるんか?」
「そこまでは厳しいだろう。だから、黒霊死団の討伐隊の編成を願ってみようと思う」
「黒霊死団。なんや、さっき言ってたキナ臭い連中かいな」
「討伐隊は私が指揮する。見事連中を退治する事が出来たなら、君の所へと戻る事だって可能だろう」
「随分遠回りな話やなー?」
「だが、確実だ」
「……オモロイやん」
言って、シェザラーナはピストンへと視線を向ける。
「陛下が七日っつったのは、ジブンへの助け船やと思う。此処がタイムリミット。逆を言えばこの日付内ならチャンスがあるっちゅー訳やな」
「何か、思い当たる事でもあるのか?」
「ふふん。まぁ一つな。近日、紅玉騎士団がドゥカティ迷宮へと遠征に行くらしいで。要はそこに参加して、功績を挙げて来いって話やと思う」
「ドゥカティ迷宮?」
「自然発生した魔物の巣。所謂ダンジョンって呼ばれとる場所や。何や首都の近くにも出来とったらしい。普通なら冒険者の出番なんやが、此処は結構危険な所らしくてなぁ。挑んだAランク冒険者のパーティが今も帰ってきてないらしいで。長期間放置しとくと魔物も湧いてくるって事で、王国騎士団に白羽の矢が立ったっちゅー訳や」
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