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025 決着―無限の軌跡と共に―


 強い。

 強過ぎる。


 何なんだ、この女は。


 僕は目の前のリブラに向き合いながら、今現在の自身のステータスを確認する。



――――――――――――――――――――――――――


[ピストン=セクス LV.20]


 総戦力:746


 生命力:62/180

 魔法力:18/80


 攻撃力:134

 防御力:122

 素早さ:105

 賢 さ:93

 幸 運:32


 スキル:剣術LV.2 性魔術LV.1 火属性魔術LV.1

     魔法剣LV.1 身体強化Lv.1 解析LV.1 


 術技:【性】リリス 【火】ファイアー・ボール


――――――――――――――――――――――――――



 ……生命力が半分まで削れている。


 これは彼女が放つ剣撃の余波によるものだろう。


 直接当たった訳ではないと言うのに、大の男に殴られたかのような衝撃が身体へと当たってきた。


 これが攻撃力500の力という奴なのだろう。


 直接当たったなら、どうなるのか……?

 考えたくも無いな。


 魔法剣を多用した為、魔法力も残り少ない。

 性魔術のリリスも使用不可か。


 まぁ、元々今回の戦いでは使う気は無かったので、構わないと言えば構わない。


 分かってはいた事だが、素の状態ではやはり勝負にならないな。


 Sランク冒険者。それも女性の前でやるのは、少々気が引けるが――仕方が無い。


 以前はアメル君の前でもヤっていたし、余り気にしない様にしよう。



「……本気を出す、だと? 今までの戦いは手を抜いていたとでも言うのか?」


「そういう訳では無いが――いや、場合によってはそういう事にもなるのかな……」


「はっきりしないな」


「すまん。だが、見ていてくれれば分かると思う」


「……?」



 えっと、腰を振れそうな物は……っと。



「あった、あった」



 言いながら僕は、クリントン・ギルドの立て看板へと近付いて行く。手で揺らした所、強度には問題は無いみたいだ。看板の位置も丁度腰に当たるくらいで、腰を振るのにおあつらえ向きと言えるだろう。



「おい、おめぇウチの看板に何をする気だ!?」


「まさか兄ちゃん……」


「おい!!」



 看板へとペタペタと触れていると、ギルド長のクリントンが横から口出しをしてくる。



「……待てっ!」


「ああ!?」


「いいから! ピストンさんの邪魔すんじゃねぇ!」


「なッ……!?」



 ギルド長の行く手を遮ったのは、何かを察したガステロだ。

 奴は一度僕の力を見ているからな。


 僕が何をしようとしているのか、理解出来たのだろう。


 正直、助かる。



「……看板を使って、何をする気だ?」


「何って。看板を使ってやる事なんて、一つしか無いだろう」


「そ、そうなのか……?」


「見ろ」



 言いながら僕は、看板に向かって腰を振る。


 ――カクッ!



「……どうだ?」


「??」


「……まだ、分からないのか?」



 口では説明したくないしな。

 仕方が無い。


 彼女が理解出来る様に、もう少しだけ腰を振るか。


 ――カクカクカクッ!!



「……どうだ?」


「……その、動作……? ……は、一体何だ? ……これは、試験と何か関係があるのか……?」


「……」



 どうやら、リブラ=トレーサーは理解力が低いらしい。


 いや、もしや――そういう事なのか?



「……失礼を承知で尋ねるが、リブラ=トレーサーさん。貴方、男性経験はおありで?」


「はぁ――!?」



 僕の言葉に、大袈裟に狼狽えるリブラ。



「だ、だだだ、男性経験だとぉっ!? な! なな、何故そんな事を私に聞くんだっ!?」


「……」


「――答えろ! ピストン=セクスッ!?」



 ……この反応、やはりビンゴか。


 この実力。

 この外見から言って、二十代後半。


 いや、もしかしたら三十に差し掛かっているかも知れない。


 そんな彼女が、まさか男性経験無しの初心な乙女だとは……この僕にしても見抜けなかったな。



「男性経験が無いから――僕のこの行動の意味も分からない」


「断言するな!! ……看板に向かって、腰を振っているだけだろう!?」


「……他に思う所は?」


「え? その……痛くないのかなぁっとは……」


「……」


「何だその無言はっ!?」



 いかんいかん。

 思わず優しい笑みを浮かべてしまった。


 何て純粋な人なのだろう、この人は。


 まぁ言って僕も【愛淫の加護】の条件で壁に腰を打ち付けているだけで――決して自身の欲望を吐き出している訳ではないので、誤解されないのは望む所である。


 このまま10分間、健全に腰を振ろうと思ったその時である。



「カッカッカ! 何だ、案外初心なネェちゃんだなぁ!?」



 と、豪快に笑い声を上げたガステロが、横から口を出す。


 ……何だ? 嫌な予感がするぞ。


 思いながらも僕は、腰を振るのを止められない。


 脳内で鳴り響く神聖擬音……【愛淫の加護】のステータスアップは、僕にとってはもはや麻薬以上の中毒性を持っていた。



「アレが何なのか分かんねえのか?」


「……」



 眉を八の字に寄せて、ふるふると首を横に振るリブラ。



「オナニーだよッ!! ピストンさんは本気出すときゃ、オナニーすんだ!! オナった後のピストンさんは最強だぜぇっ!?」


「な――」



 歯に衣着せぬガステロの言葉に、絶句するリブラ。


 バッ! と言った、効果音と共に此方へと振り向く彼女だったが、生憎と今の僕は忙しい。


 とんでもない名誉棄損を被った気がするが、もはやどうでも良い。

 目の前の看板に腰さえ振れれば、何でも良いのだ。



「……はは。ははは! ――はーっはっはっはっは!!」


「わ、嗤っている……ッ!」


「出たぜ腰振りの嗤い! アレが兄ちゃんの真骨頂だッ!!」


「おめぇ言ってる場合か!? くそッ! ウチの看板に汚ねぇもん擦り付けやがって!!」


「カッカッカ! 元々寂れてんだから、ど~でも良いだろう!?」


「気分の問題だっ! 畜生っ!!」


「……」



 外野の叫び声を聞きながら、自身の胸を抑えるリブラ。



「は、初めてみた……アレが、男の人の……オナ……ッ、オナ……ッ!」


「……ふぅ」


「!?」



 ――ジャスト、10分だ。


 無事に"チャージ"を終えた僕は、改めて自身のステータスを確認する。



――――――――――――――――――――――――――


[ピストン=セクス LV.20]


 総戦力:1946(+1200)


 生命力:162/280(+100)

 魔法力:118/180(+100)


 攻撃力:834(+700)

 防御力:222(+100)

 素早さ:205(+100)

 賢 さ:143(+50)

 幸 運:82(+50)


 スキル:剣術LV.2 性魔術LV.1 火属性魔術LV.1

     魔法剣LV.1 身体強化Lv.1 解析LV.1 


 術技:【性】リリス 【火】ファイアー・ボール


――――――――――――――――――――――――――



 今回は全力で腰を振らせて貰った。

 10分間に1200回の腰振りは、自己最速記録だ。



「ぐッ……」



 僕は、ふらつく身体を気合で立て直す。


 1200回の腰振りの代償か。


 股間からの激しい痛みが僕へと襲い掛かる。


 恐らくは、腰振りの摩擦によるダメージだろう。

 やはりこの速度……多用は出来ないな。

 ここぞと言う時だけの切り札としておこう。


 股間の痛みと引き換えにした力は――絶大だ。


 ステータスの振り分けとしては、随分攻撃力に偏ってしまった様だが、リブラの防御力を抜けない以上、勝機は無いので、これはこれで良しとしておこう。


 此処までやって尚、総戦力は彼女が上。


 勝っているのが攻撃力だけだと言うのが情けない。


 だが――活路は開けたぞ。



「改めて――勝負だ! リブラッ!!」


「え? きゃッ――!?」



 僕の振るった長剣が、リブラの大剣へとかち合った。


 今まで通りなら、此処で吹き飛ぶのは僕の方だったが――



「はぁあああ! ――はぁッ!!」


「なぁ――ッ!?」



 攻撃力800の数値を活かし、今度は僕がリブラを吹き飛ばす。


 恐らく、今彼女は混乱の境地にいるだろう。


 先程まで全く歯が立っていなかった男が、突然膂力を増して剣を振るっているというのだからな。



「はっはっは! 何だどうした動きが鈍いぞぉっ!?」


「く、くぅ……ッ!」



 追撃の手は、緩めない。


 態勢を崩した彼女へと追い縋り、長剣による渾身の袈裟切りを浴びせてやる。



「痛つぅッ!」



 ……ダメージが入ったか?



――――――――――――――――――――――――――


[リブラ=トレーサー LV.42]


 生命力:890/1000

 魔法力:115/115


――――――――――――――――――――――――――



 リブラ=トレーサーの生命力を削ったのは、これが初めてだ。

 彼女は自然治癒というレアスキルを持っていた筈。


 時間を掛ければ、掛けた分だけ此方が不利になる。


 ――手数だ。圧倒的な手数が必要だ。


 攻撃、攻撃、攻撃!!


 絶対に、剣を振るう手を緩めてはいけない――ッ!



「うおおおおおおおおッ!!!」


「!!」



 零距離で振るう剣線の乱舞。

 その殆どは避け、又は大剣により防がれてしまったが、



「く、くそッ……!」



――――――――――――――――――――――――――


[リブラ=トレーサー LV.42]


 生命力:650/1000

 魔法力:115/115


――――――――――――――――――――――――――



 確実に。


 そう、確実に……。



「あぐぅ……ッ!」



――――――――――――――――――――――――――


[リブラ=トレーサー LV.42]


 生命力:380/1000

 魔法力:115/115


――――――――――――――――――――――――――



 リブラ=トレーサーの、生命力を削っていった。


 本来であれば、こうは上手くはいかないだろう。

 Sランク冒険者とは、百戦錬磨の兵だ。

 攻撃力一点特化の剣士などに、こうも遅れを取る筈がない。


 ならば何故――?


 考えた所で、僕は彼女の視線が僕の一部分に注がれている事に気が付いた。



「はぁ、はぁ……」



 息を荒くしながら、僕の股間から目を離せないでいる彼女。


 ……ふむ。


 良く分からないが、不調の原因は"ここ"か。



「ならば!!」


「!?」



 僕は、バッと勢いよく飛び上がりながら、縦横無尽に腰を振る。


 無理な腰振りの所為で、痛みに膨張したソレを右へ左へと振り回すようにしてやるのだ。


 描いた軌跡は――(無限)



「あ、ああぁぁ……ッ! うわぁああああ――ッ!!」


「――取った!」



 衝撃の余り発狂する彼女へと、僕は止めの一撃を振るう。



「あ――」



 胸へと刺さる致命の一撃。

 しかし、そうまでされても彼女は死にはしない。


 加護による生命力のバリアが、代わりとなって剣を押し出し、砕け散る。



――――――――――――――――――――――――――


[リブラ=トレーサー LV.42]


 生命力:0/1000

 魔法力:115/115


――――――――――――――――――――――――――



 訪れるのは、強制的な意識の喪失。

 ステータスによる補正の切れた、完全無防備の気絶である。


 敗因はただ一つ。


 リブラ=トレーサー。

 貴方は、顔に似合わず初心過ぎた。



「うおおおおお!! ピストンが勝ったぁあああッ!!!」



 諸手を上げて、喜びの声を上げるガステロ。



「んな、馬鹿な……」



 唖然とするクリントン・ギルド長。


 ――そうか。勝ったか……。


 遅れながらも、段々と僕にも実感が湧いてきた。



 Sランク冒険者に、勝てたんだな――と。



 お読み頂きありがとうございます\\٩( 'ω' )و//


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