020 捕食
何だ!? 何が起こったんだ!?
未だ事態に付いて行けてない僕ではあるが、四方を隙間なく取り囲む壁の存在に、自分達が閉じ込められた事は理解出来た。
壁というよりは、分厚い葉っぱか?
キンダーバインの実を採ったから……?
僕の脳裏に、狩りに使うトラバサミが思い浮かんだ。
「この実は、トラップだったのか……?」
「馬鹿野郎、このトーシロがぁッ!!」
「!」
必死の形相で、叫ぶガステロ。
その様子には余裕と言うものは欠片もない。
「ふざけんなっ! 俺まで閉じ込められちまったじゃねぇか! キンダーバインの捕食器に捕まったら、Bランク冒険者でも脱出は不可能だって言われてんだぞっ!?」
「……俺まで? 待て。その口振りだと、僕が閉じ込められるのは規定路線だった様に思われるが?」
「そうだよ!! 今頃気付いたこのスカタンッ!!」
悪びれる様子も無く、自身の悪事を白状するガステロ。
自棄になっているのだろう。
嵌められた苛立ちはあるが、顔面蒼白で汗を垂れ流す目の前のこいつを見ていると、哀れにも思えてしまう。
「此処はな、キンダーバインの蕾の中なんだよ! その実を餌として寄ってきた連中を捕食する!! 捕食された奴はじわじわ溶解液で溶かされちまう……ッ! 見ろ、蔦から何か滴ってるだろう!? 液から出るガスは猛毒だ。嗅いだ瞬間に昏倒し、俺達ゃ花の養分にされちまうんだよぉッ!!」
「……ッ、脱出方法は!?」
「ねぇよ! んなもん!!」
「!」
「葉っぱが切れさえすれば別だがよぉ……」
言いながらガステロは、腰に差した片手剣を抜き放つ。
目の前の壁となった葉を斬ろうと言うのだろうか?
だが、剣を抜いたガステロは動かない。
額に汗を浮かべながら、剣を振るう事を躊躇していた。
「何をやっている!」
じれったい奴に向かって、僕は思わず声を出す。
「うるせぇ! 失敗すりゃ反撃が来るんだよッ!」
「反撃……?」
「ガスか棘か分かんねぇけど、こんな場所じゃ避けられねぇ」
だが、躊躇っている間にも溶解液は広がっていく。
靴底から煙が上がり、慌ててその場から足を退けるガステロ。
「ッ、ヤベぇ、毒だ……吸い込んじまった……ッ!」
「!?」
「し、死にたくねぇ! 死にたくねぇぞ!!」
「ガステロッ!」
「う、うぁああああああああ――ッ!!!」
半狂乱になりながら、葉に向かって剣を振るうガステロ。
しかし、その一撃は葉を両断する事は叶わず――
反撃の神経ガスが、奴の周囲へと充満する。
「うぎゃあああああ――ッ!! 目が、頭がッ!!」
「ガステロ!」
「脳が痛てぇよおおおおおお――ッ!!!」
気が狂ったかの様に頭を押さえ、剣を振り回すガステロ。
不味いと思った僕は、瞬時に奴へと【解析】を使用する。
――――――――――――――――――――――――――
[ガステロ=レイズナー LV.21]
生命力:23/110
魔法力:20/20
――――――――――――――――――――――――――
……ッ!
生命力の数値がかなり減っている。
このままではガステロが死んでしまう。
そうなった時は、次は僕だ。
何とか、今の内にヤレる事をヤッておかないと……ッ!
「溶解液が少し怖いが……ッ!」
溶解液が未だ届いてない地面を狙い、僕はその場へと伏せる。
「ぐッ……!」
溶解液から立ち昇る毒が、直に僕の顔へと掛かる。
……これは、悠長にはしていられないな。
地面に伏せた僕は、意を決してその場で腰を振る。
――カクッ!
「……」
……あれ? 神聖擬音が鳴らない?
もう一度やってみるか。
カクカクカクカク――ッ!!
「――うわぁあッ!?」
「な、何やってんだ馬鹿野郎!?」
蔦から発射されたキンダーバインの棘が、僕の背中に突き刺さる。見た目以上の激しい痛みに声を上げると、虫の息で地面へと転がったガステロが此方に向かって怒鳴り声を上げる。
――――――――――――――――――――――――――
[ピストン=セクス LV.12]
生命力:110/150
魔法力:20/20
――――――――――――――――――――――――――
すかさず、自身の生命力を確認する僕。
……良かった。まだ危険域では無い様だ。
しかし、何故【愛淫の加護】が発動しなかったんだ?
確かに僕は地面に向かって――ッ!?
「そ、そうか! 此処はキンダーバインの体内。"壁"としては分類はされないのか!!」
だとすると――これは非常に不味いのではないのか?
四方は葉っぱに囲まれている。
当然アレも植物……無機物という括りでは無い。
「僕の腰振りが――封じられた?」
お読み頂きありがとうございます\\٩( 'ω' )و//
もし面白い・応援したいと思って頂けたならば、ページ下部の☆の評価ボタンやブックマークなどを押して頂けると嬉しいです。
応援・感想は執筆の励みにもなりますので、気軽によろしくお願い致します!




