初依頼だよ
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白目を向いた受付さんをちょっと叩いて正気に戻した後、一つの依頼を受けた。
「あれー?
依頼票だとこの辺りだと思うんだけどな~。」
おれが受けた依頼は護衛依頼。
票によると屋台で使う食肉を牧場に取りに行きたいが一人では危険なため、護衛が欲しいとのことだった。
一度、延長の判子が押されており他の人が受けない依頼だったのでちょっと受けてみた。
あ、あの屋台か?
「すいませ~ん。
この依頼ってここであってますか?」
「え!?
受けてくれたの!?!?
あれは依頼料があんまり払えないから駄目だと思ってたのに。」
屋台をしていたのは、気の弱そうなオジサンだった。
頭に手拭いを巻いてエプロンみたいな前掛けをしている。
「大丈夫大丈夫。
そんなにお金必要ないから。
牧場でしょ?
そんなに遠くないだろうし。
ところでオジサン、串一本くれ。
腹減っちゃってさ。
とりあえず、銀貨一枚でいいかな??」
「えぇっ!?
銀貨一枚なんて払ったら串何十本にもなるよ?
食べれるのかい??」
「どんとこい!
…あ、やっぱ一本ずつでお願いします。
粗末にしたくないので。」
屋台のオジサンは笑いながら串を渡してきた。
この世界の料理は素材の味を生かしているというと聞こえが良いが実際はほとんど調味料の味が無い…
串も塩はついてるんだが塩コショウに慣れた地球の味覚だと結構ツラいものがある。
今回の護衛は目的地が牧場。
つまり、乳製品がある可能性が高いわけだ!!
チーズ!
おれは濃厚なチーズが食べたい!!
肉とチーズがあれば多少不味くてもイケる!
そんなわけでおれはこの依頼を受けた。
ちなみに儲けはほとんどない!
むしろ、乳製品を買うことを考えると赤字だわ。はっはっはっは
三日後、護衛の本番の日が来た。
メンバーは馬車と馬っぽい動物で名前はジョナサン。
動物のくせに仕草がハードボイルドなんだよな。この世界の家畜ってどうなっているの?
いや、こいつがおかしいだけだな。
あとは屋台のオジサンと娘の二人だ。
娘のグレイシアちゃんはすごい無口で初めて挨拶したとき、一言も喋ってくんなかった。
ちなみに愛称はシアちゃんだ。
「シアちゃんはいくつですか~?」
「……(5本の指を見せる)」
「5才なのかな~?」
「…(コクっ)」
と、まぁこんな感じである。
オジサンの服を掴んで離さないし警戒されてるのは分かるんだがこうも懐かれないとちょっと傷つくな…
目的地までの道のりは特に敵もなく平和そのものだったが、牧場に着いて牧場で働いてる人を見た時おれは驚いた。
なんと、獣人だったのだ。
牛の獣人が牧場をしている…
あまりにシュールなため聞いてみたが、人と猿と同じようなものらしい。
姿が似ていても特に仲間意識はなく牛族は肉も食べるからむしろご飯にしか見えないと言われてしまった。
「…えっ!?」
おれはこの世界に来て初めての救われない絶望を知った…。
「ですから、チーズというものは知らないのですよ。
我々は肉と乳を卸していますが、乳を加工する方法など知りませんしねぇ。」
聞けば乳は近くへ卸すか自分たちで消費する分しか採らないらしい。
まさか、無いとは思わなかった。
地球でさえかなり古くからチーズの原型があったのに!
作るしかないのか…
「はい、それではチーズ作りを始めまーす!拍手~」
わー!パチパチ!!
シアちゃんがガン見してる…
おれの奇行が琴線に触れたらしいな。
手招きすると微妙な距離まで来て加熱を始めたミルクを見ている。
おれが作ろうとしているのは原始的なチーズのウルムだ。
これは加熱した乳をかき混ぜて放置しておくと出来る湯葉のようなものらしい。
地球の知識を貰っておいて良かった!
これがないと流石に泣くところだ。
依頼のため今回は食えないが、牛族のみなさんに作り方を教えておいて護衛で帰ったらすぐ戻ってくるつもりだ。
牛族のみなさんも美味しいご飯のためならと快諾してくれたのでがっつり利用させてもらおう!
約束していた食肉を馬車の荷台に乗せてえっちらおっちらとのどかな移動が始まる。
というかこれならおれいらなくね?とオジサンに聞くと過去に肉を狙ってきたよからぬ輩に襲われたらしい。
その時は、全力で逃げたために肉を無くしただけで済んだがおかげで資金が危なくなりシアちゃんを孤児院に預けておくためのお金が無くなりこうして護衛を雇わないといけなくなったそうな。
なるほどと聞いていると前方と後方を襲撃者に挟み撃ちにされてしまった。
「いっひっひ!
見ろよ!
あの時のオヤジだぜ!!
今度はムス…めびゃ!?!?」
「「「なにぃぃーーー!?」」」
明らかに襲撃者だったし刃物を見せつけて挑発されたのでとりあえず一人ぶっ飛ばした。
これで逃げてくれるとおれへの負担が無くていいんだけどなぁ~。
「おれは今、騒動を起こしたくないんだ…!
起こすとチーズが遠のく!!
だから、帰り道は何もなかった。
ここにいる奴は現れなかった。という事にしたい!」
「ふざけんじゃねぇ!!
死にたくないんだったら娘と荷物を置いてけや!」
「なぁ?
襲ってきたやつが全員死ねばそれは襲撃が無かったってことだよな…?
ということはミナゴロシにすればチーズに一歩近づってことだよな。
ウヒヒヒ…
チーズのために礎となれぇぇー!!!!」
チーズに狂った白髪はちーずぅぅー!と雄たけびをあげて敵へと襲い掛かった。
腕がブレるたびに一人、また一人と襲撃者が消えてなくなる。
それは襲っている者からしたら恐怖でしかない。
瞬きをするたびに隣や目の前にいた仲間が消えて代わりに白髪の護衛がいるのだから…。
こうして、襲撃してきた者達を全て見えなくなるまで吹っ飛ばした白髪のチーズ狂はシアにドン引かれ一人涙を流した。




