↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/12

プロローグ



「こちら第一執行課です。周囲の市民の誘導並びに標的を確認しました。」


無線を通して現場の声が聞こえてくる。


「観察班の情報通り中型の澱(おり)です!久世局長、突撃許可をお願いします。」

「21時55分作戦開始。」


局長の合図を皮切りに現場にいた境断官(きょうだんかん)達が一斉に澱へ向かう。しかし、当初聞いていた情報とは違い澱の動きが早く攻撃性が高すぎた。


「榊、前に出すぎだ!1歩下がれ!」


まだ数回しか現場に出たことがない榊はいつの間にか澱の前まで出てしまっていた。


下がるにしても澱は複数おり後ろにも下がれなくなっていた。すると目の前の澱が急激に膨らんだ。


「まずい!侵食値が急激に増加している。総員一時撤退しろ!」


班長の声は聞こえるが足がすくんで動かない。澱の手であろうものがもう目前まで及んでいた。避けられないと思い目をつぶった瞬間だった。


「………邪魔」


その声がした瞬間、風がその場を駆け抜けて行った。

ギャァァァァァアア

澱の悲鳴が響き渡った。何事かと思い目を開けるとそこには、片手に祓刀を持った若い青年が佇んでいた。


「東城楓李(とうじょうふうり)、現着しました。」


その名を聞くと周りがザワザワとしだした。久世はその名前を聞き頭を抱えた。


「お前に出撃命令を出した覚えは無いのだが?」

「……あっそ。」

「はぁ…後で話がある。その前に目の前のそいつら片付けろ。」

「了解。」


突如現れた青年によって現場に出現した澱はあっという間に祓われていった。青年は澱を祓うだけ祓うとその場を離れようとした。すると無線越しに久世の声が聞こえてきた。


「東城、お前また命令違反か?今月何回目だ…」

「命令違反というか…仕事しただけ。文句言われる筋合いは無いと思う。」

「あのな、あくまでも組織だぞ?上司からの命令があるだろ!?」

「……スンマセン」


謝る気の無い声に久世は更に頭を抱えた。当の本人は祓刀をしまっている。


「じゃあ俺帰ります。」

「明日事務所来い。命令だ。」

「…………気が向いたら。」

「おい!こら東城…って無線切りやがったな。」


楓李は無線を切りポケットへしまってしまう。そして慌ただしい現場を見渡しすぐにその場を後にしてしまった。


静かに去っていくその姿に榊は近くにいた先輩に声をかけた。


「先輩、あの人って誰ですか?」

「お前この仕事してて東城知らないの?」

「最近…来たばっかなので…」

「東城はうちで最強の境断官だよ。」



『澱』それは人の負の感情が作り出す災害。人の怒り・哀しみ・後悔・懺悔・妬み・恐怖などマイナス感情が合わさると澱は発生してしまう。


澱は人に侵食し自殺や傷害事件、パニック事件など様々な事件を引き起こす。それを唯一祓うことができるのが境断官と呼ばれる存在である。東城楓李は現代日本において最強の境断官であった。


「しかしなぁ、あいつなかなかの問題児だから気をつけろよ。」


そう言って先輩はどこかへ行ってしまった。榊は楓李が去っていった方向を見つめた。最強の境断官と言っていたがその姿はどう見てもただの大学生だった。


「あの子が…最強か……」


密かな憧れを抱き榊は仕事へと戻って行った。


一方楓李はイヤホンをつけ人混みを通り過ぎていく。大通りには飲み会後であろう学生や居酒屋のキャッチそして仕事終わりであろうサラリーマン達で溢れていた。


「………うるさ」


雑音を払うように楓李は曲を流した。そして周囲を見渡すとうっすら澱の残滓やとても小さい澱が漂っていた。


(あれくらいなら…大丈夫か)


普通の人間には見えないそれに楓李はため息をついた。


「増えたな……」


その声は誰にも聞こえず暗闇へと溶けていくのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。