エピローグ2 夢の都市
繭の中にいるはずなのに、僕の脳は別の光景を見ていた。
夢だ。だが、あまりにも鮮明すぎて現実と区別できない。
都市の大通り。
舗道は光沢のある白で、淡く光を放っている。
ビルのガラスは宝石のように色を変え、街灯は脈打つ心臓のように赤く明滅していた。
その光が反射し、通り全体を金や紫や深い青に染め上げている。
そしてそこを歩く人々——いや、女性たち。
すべてが裸か、薄い下着姿だった。
レースのブラに透けるショーツ。
シルクのキャミソールに、腰布一枚。
ある者は全くの裸で、艶めく肌を惜しげもなく晒している。
肌の色は多様だった。雪のように白い肌、褐色に焼けた肌、灰色がかった不思議な光沢を帯びる肌。
背中に鱗を覗かせる女。額から小さな角をのぞかせる娘。
獣耳を揺らす少女は、歩くたびに尻尾で腰を撫でるように揺らしていた。
彼女たちの瞳は皆、僕に注がれていた。
視線が合った瞬間、背中に電流のような快感が走る。
「……っ」
短い吐息が漏れる。
ただ見つめられただけで、胸の奥が痺れ、足元が揺らいだ。
ひとりの女が近づき、僕の手を取った。
黒髪をなびかせ、透けるシルクの下着に包まれた姿。
胸元の布はほとんど意味をなさず、丸みをくっきりと映し出している。
指先は温かく、湿り気を帯び、まるで生きた人肌そのもの。
「もっと深いところへ行きましょう」
囁きは甘く、耳の奥に直接流れ込んだ。
その声に導かれるように歩き出すと、別の女が隣に現れた。
褐色の肌に金の装飾をまとい、腰布一枚で豊かな胸を揺らしている。
汗に似た甘い香りが漂い、僕の鼻を刺激した。
さらにもう一人。ケモ耳の娘が肩に頬を寄せる。
柔らかな尻尾が腰に絡み、体温が伝わる。
「安心して。もっと楽になるから」
耳元に吐息がかかり、背筋を痺れさせた。
気づけば、左右から、背後から、次々と女たちが寄り添っていた。
彼女たちは下着姿で、あるいは全裸で、柔らかな胸や太ももを惜しげもなく押しつけてくる。
甘い香りが重なり、街全体が花園のように匂い立つ。
「一緒に」
「楽に」
「もっと奥へ」
数十人の声が合唱のように重なり、僕を囲む。
その瞬間、わずかな理性が警報を鳴らした。
——これは夢だ。幻影だ。
——騙されるな。
けれど、その声はすぐに掻き消えた。
胸に押し当てられる乳房の柔らかさ、背中を撫でる指先の温度、太ももに絡む尻尾の感触。
甘い熱が皮膚から骨の奥へ浸透し、警報は霞んで消えていった。
前からも、後ろからも、左右からも。
数十人の女が僕を抱き込み、頬に舌を這わせ、首筋に唇を吸い付け、肩や脇の下を舐めてくる。
指先は腰骨を撫で、爪先は足の甲をくすぐり、足の指さえも唇で包み込まれる。
全身が同時に責め立てられ、どこを切り取っても女の肌と体温に包まれていた。
「A-317……」
「もう一歩、奥へ」
「理性はいらない」
囁きが重なり、僕の視界は白く霞んだ。
街の光はさらに鮮やかになり、ネオンは鼓動に合わせて点滅する。
ビルの窓からは裸の女たちが笑いかけ、街灯の下では下着姿の娘たちが手を振る。
都市全体が巨大なハーレムになっていた。
汗が頬を伝い、足が震える。
だが、その震えさえ快感の予兆に思えた。
女たちの舌が脇を舐め、唇が足の指に触れ、背中を甘く噛まれる。
僕は声を上げた。
「……ああっ……!」
羞恥はなかった。
理性はもうなかった。
ただ甘美な波が全身を覆い尽くし、僕をさらに深い淵へと沈めていく。
「もっと深くへ」
「一緒に沈もう」
「永遠に、快感の中で」
女たちの歌声が響き、都市の明かりと同調する。
前後左右から押し寄せる柔らかな肌、甘い吐息、濡れた舌。
すべてが僕を誘惑し、すべてが僕を求めていた。
そして僕は——
数十人の女たちに囲まれ、都市の幻影の中で、永遠の快楽に身を委ねていった。




