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第13話 弟子はドワーフ

 素材を自分で集めると、ものづくりの幅がひろがってくる。

 樹海で採取した木の実や草を使って木材を草木染めにしてみた。

カラフルな木材を使って家具を作ると、印象が随分変わる。それじゃあ、あんなふうに作ってみようとか思いついて、また楽しくなってくる。

 そんなわけでたくさん作ってしまい、最初の倉庫に加えて庭の奥にもう一つ大きな倉庫を作ったのに、それも一杯になってきた。

 館が広いといっても新しい家具はそんなに必要ない。父上と母上が付き合いのある貴族に贈るといっても限度がある。

 どうしたものかと父上に相談した結果、まず領内の孤児院に家具を寄附した。院長さんは「こんなに立派な家具を頂けるとは」と恐縮していた。親を亡くした子どもたちの暮らしに少しでもプラスになると嬉しい。

 それから、もの作りが得意なドワーフには余計なお世話かなと思ったけれど、まだ家具が揃ってないかもしれないと思い、ドワーフの村に持って行った。

 「おお、これは素晴らしいのう!本当にこんな良い品をもらってええんか。」

 思った以上に気に入ってもらえて良かった。

 「綺麗な装飾じゃ。彩色も良いのう。故郷を追われて落ちこんでいる者も喜ぶじゃろう。」

 僕の作るものが役に立てるなら嬉しい。

 挨拶をして去ろうとしたところで、突然呼び止められた。

 「待って下さい、僕を弟子にして下さい!」


 弟子にしてほしいと言ってきたのはドワーフの男の子だった。

 「テオドールといいます。貴方の下でものづくりを学びたいんです。」

 テオドールはドワーフにしては珍しい銀色の髪に緑がかった大きな目をした可愛い印象だった。

 「ええと、どうして僕に弟子入りを?」

 「はい、ウィリアムさんは僕らに家を造ってくれました。ドワーフはものづくりが得意といっても、あんなことはできませんから尊敬しているんです。」

 いや、ドワーフにものづくりで褒められるなんて照れる。

 「それに今回の家具です。こんなに美しい装飾が施されたものをスキルで作れるのは凄いですよ。」

 「褒めてくれてありがとう。でも、ものづくりの得意なドワーフが人間に弟子入りなんて聞いたことがないよ。ドワーフの師匠に弟子入りしたほうが良いんじゃないかな。」

 テオドールは目を伏せた。

 「実は、僕はドワーフなのに鍛冶があまり得意じゃないんです。見た目もドワーフらしくなくて力も強くありません。だから人族に弟子入りさせてもらえればと思ったんです。」

そうだったのか。確かにドワーフはずんぐりしているのに、テオはほっそりしている。力も強くなさそうだ。

 事情があるなら門前払いはできないな。それから、弟子になってもらって良いのかどうか判断するために話をした。

 ドワーフは優しい人たちで、見た目が違うからといってテオドールを苛めたりはしなかったようだ。ただ、自分も鍛冶以外で何か役に立ちたいとずっと思ってきたようだった。

 「僕も金属細工はできますが、鍛冶で鍛えた金属を細工するものなので、やはりドワーフの中では鍛冶が重要なんです。」

 いろいろと話してみて分かったのは、テオドールは人の話を聞く素直さと、理解の早い頭脳の両方を持っているということだ。

 試しに生産スキルで椅子を作ってみせて、どんなイメージをしているか説明すると、テオドールはすぐに椅子を作ることができた。

 僕の感覚的な説明でも理解してくれるんだと驚く。

 さらに話すうちに、故郷で魔物から逃げるときに両親とはぐれてしまい、今は叔父さんの家族と一緒にいることも分かった。

 だから早く独立して食べていけるようになりたいらしい。

 そういうことなら弟子になってもらっても良いかな。

 よし、父上に相談しよう。


 善は急げだ。家に戻ったらすぐに父上に話をした。

テオドールが僕の説明を理解して生産スキルで椅子を作ったことや、素直で理解も早いことなどを父上に一生懸命に説明した。

 「はは、分かったよ。ウィルはそのドワーフの少年のことが随分気に入ったようだね。」

 「はい、ぜひ一緒にものづくりをしたいと思います。」

 「なるほど、生産スキルの才能があるドワーフの子か。将来はウィルの右腕になってくれるかもしれないね。うん、当家で雇うことにしよう。」

 良かった、父上はテオを雇うことを認めてくれた。

 その翌日、ドワーフの居住地に迎えに行くと、テオドールは喜んでくれた。

 叔父さんにはもう話はしてあるとのことで、すぐに辺境伯家に住み込みで働いてもらうことになった。

 「師匠、これからよろしくお願いします。これからはテオと呼んでください。親しい人たちにはそう呼ばれているんです。」

 テオが来てくれたことで、僕のモチベーションはさらに上がった。

 テオを指導しながら、自分のものづくりにも取り組んでいく。

充実した日々を送っていると、父上の執務室に呼ばれた。執務室に呼ばれるということは仕事の話だ。

 「何でしょうか、父上。」

 「おお、呼び出してすまんな。最近はますますものづくりに励んでいるようだな。実はそんなウィルに頼みたいことがあってな。」

 「僕に頼みですか?」


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