20 ジョン・レノンが、世界は狂人の手によって動かされているみたいなことを言ったが
ジョン・レノンが、世界は狂人の手によって動かされているみたいなことを言ったが、残念ながら、確かに“そういった存在”というのは、確かに“いる”。
話が少し、それてしまった。
まあそんな感じで、傭兵として戦場で戦っても、子供のころ源平合戦に見た、“何か血肉が沸き立つようなもの”を、俺は感じることができず、傭兵をやめた。
そうして、中東にいたこともあり、せっかくだからとエジプトのほうをフラフラしていたときのことだ。
あるとき、“邪神というものの存在”を知ることがあった。
振り返ること――
「――邪神、だって?」
と、俺は、怪訝な顔をした。
その俺の前には、
「ああ……、お前さんとこの、天照大御神だったかの? その神道の神さん連中だけでなく、この世の中にはな、邪神というべき神がおってな。“彼ら”は、気まぐれにも、現れることもあるのじゃ……」
と、いかにもエジプトの村にいそうな雰囲気でいながら、少し怪しい感じの老人の男が、そう答えた。
エジプトの内陸のほうの、川に近い、名もなき遺跡――
乾いた樹々に囲まれた、佇む巨石に、地元の彦島にも似た何かを感じていたのだが、そのとき現れた老人から、詳細は覚えてないが、ふとそんな話をされたのだ。
その、老人の男は続けて、
「お前さんとこにも、似たような石があるじゃろ?」
「……? あ、ああ……」
俺は、不思議な感じがしながらも答える。
「実はのう、かつての、お前さんとこの国の、古代の日本と、古代のエジプトの王朝にはつながりがある……」
「ほう……」
「お前さんとこの“石”も、そのひとつかもしれん」
「……」
と、半ば胡散くさいともいえる老人の話だが、何かを感じていた。
――そうして、俺は日本へと戻った。
その時から、俺は何かに取りつかれたように、邪神というものを求めて日々調べていた。
「――そして、この“狂人会”と、出会ったのですな……」
と、宮本の、少し離れた横から声がした。
「ああ……、そのとおりだ」
宮本が振り返らず、口元だけ不敵に笑ませて答える。
そこにいた、異形の者の姿――
アンコウのような形をした、半魚人とでもいうべき邪神であり、なおかつ、海軍の、艦長のような装いと佇まいをしていた。
――“狂人会”
正式には、『世界を弄ぶ狂人の会』という。
フリーメイソンや、イルミナティと呼ばれる“それ”に近いものと考えてもらえばいいか。
そうして、海峡を眺めていると
――ベンベン、ベンベン、ベン……
と、琵琶を奏でるのが聞こえる。
そこには、タコの形をじた邪神の者が現れていた。
「さあ、海峡の呪詛を……、“大いなるもの”を呼び起こそうではないか……!」
宮本は、言った。
「まあ、もっとも……、自分は、“石”に“呼ばれた”のかもしれないが」




