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死霊令嬢  作者: マキシム
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後編

キース・インベルは死霊となったミリー・アルポネに追われながら、各地をさまよい歩き、とある町にいた。キースの姿は髪が肩まで伸びきり、無精髭を生やし、来ている服はボロボロで、悪臭が漂っていた。かつての王族としての面影が一切なかった。キースが初老の修道士とすれ違った時・・・・


【修道士】

「待たれよ。」


キースが振り向くと、修道士が自分を見ていた


【修道士】

「そなたは死霊に取り憑かれている。」


【キース・インベル】

「・・・・だからなんだ。」


【修道士】

「こちらに来なさい。」


修道士に案内され、とある教会へと着いた。教会とはいっても古く、無人だった。修道士はとある部屋へ入った。その部屋はトイレと鉄格子つきの小さな窓以外は何もない部屋だった


【修道士】

「そなたに取り憑いている死霊は1週間後にそなたに襲いかかるだろう。これから言うことを守れば、そなたの命は助かるかもしれん。」


修道士は部屋中にお札を張り、1週間分の食糧と水筒を用意して上げた


【キース・インベル】

「ありがとうございます。」


【修道士】

「いいか、1週間この部屋で過ごすのだ。死霊は毎夜、そなたの下へ現れる。絶対にそなたからこの部屋を出てはいかん。それに誰が話しかけても、絶対に部屋を出てはならん。生き延びたければな。」


そういうと修道士は去っていった。そして外はすっかり夜になり、キースは部屋に籠って食糧を少しずつ食べていった


【ミリー・アルポネ】

「キース様。」


【キース・インベル】

「ひぃぃ。」


扉の外では死霊となったミリーが窓から覗いていた。その顔は憤怒の形相でキースを睨み付けた


【ミリー・アルポネ】

「憎らしい、お札で結界を作るなんて・・・・怨めしい!」


【キース・インベル】

「ヒイイイイイ!」


キースは窓から見えない場所へ移動し、朝が来るまで待ち続け、1日が終わった。キースは食糧と水を食らいながら、生を噛み締めていた


【キース・インベル】

「絶対に生き延びてやる!」


そして2日目の夜が来た。キースは身構えていると・・・・


【シャロン・ミリアン】

「陛下。」


【キース・インベル】

「シャロン!」


キースは突然のシャロンの声に驚いた。シャロンは既に死んでいるのに・・・・


【シャロン・ミリアン】

「陛下、私と言う者がありながら、他の御方と浮気するなんて・・・・・許せない!」


【キース・インベル】

「ヒイイイイイ!」


突然のシャロンの怒鳴り声で思わず、キースは部屋の隅でうずくまった。それでもシャロンの怒りは収まらなかった


【シャロン・インベル】

「私が生死の境をさまよっている間に、貴方は他の女と睦み合っていた!私は絶対に許せない!お前だけは絶対に許せない!」


【キース・インベル】

「ゆ、許してくれ!許してくれ!」


キースは必死になって謝ったが、シャロンの怒鳴り声が響き、キースは震えながら朝が来るのを待ったのである。やがて朝になり、シャロンの怒鳴り声も止み、小鳥のさえずりが響いた


【キース・インベル】

「ぜ、絶対に出ないぞ!」


キースは食糧と水に齧りつきながら、早く1週間が過ぎるのを待っていた。時が立ち、3日目の夜がやって来た。すると部屋中が揺れ始めた


【キース・インベル】

「ヒイイイイイ!」


キースは部屋の隅でうずくまっていると・・・・


【アルポネ公爵】

「殿下、お久しゅうございます。」


【キース・インベル】

「ア、アルポネ公爵!」


扉からミリーの父であるアルポネ公爵が声をかけてきた。それと同時に揺れが収まった


【アルポネ公爵】

「我等、アルポネ家は先祖代々に渡って国に仕え、忠誠を誓いました。だが陛下と殿下は我等に濡れ衣を着せ、妻と娘もろとも、死を与えた。殿下、先王陛下と想い人は我等が殺しました。後は貴方だけです。」


アルポネ公爵は淡々とした口調で先王と想い人を殺害したことを暴露し、次は自分の命を狙ってきたのだ


【アルポネ公爵】

「さぁ殿下、我等とともにあの世へ参りましょうぞ!」


アルポネ公爵が喋った後、再び大きな揺れが発生し、キースは耳をふさぎ、朝が来るまで部屋の隅でガタガタ震えながら待っていた。そして窓から朝日が照りつけ、キースは一安心した


【キース・インベル】

「4日目。」


キースは食糧と水を食らいながら、ひたすら1週間が立つのを待ちわびたのである。そして4日目の夜、キースは部屋の隅でうずくまりながら、朝が来るのを待っていた


【国王】

「キースよ。」


【キース・インベル】

「ち、父上!」


扉の向こうから父の声がした


【国王】

「キースよ、もう大丈夫だ。ワシがミリー嬢と話をつけた。もう出てきてもいいぞ。」


【キース・インベル】

「父上!」


キースが扉へ向かおうとしたが、修道士の言ったことを思い出した。誰が話しかけても絶対に部屋を出るなと。キースは部屋の隅に戻り、うずくまった


【国王】

「どうした?キースよ?父の命が聞けぬのか?これは勅命ぞ!出てこい!」


部屋は再び大きな揺れが発生し、キースは耳をふさぎ、朝が来るのをひたすら待った。国王がひたすら出てくるよう呼び掛けても、キースは無視し続けた。そして朝が訪れ、キースは一安心した


【キース・インベル】

「5日目。」


キースは少なくなった食糧と水を食らいつくのであった。そして5日目の夜がきた。キースは部屋の隅でうずくまりながら、朝が来るのを待っていた


【ミリー・アルポネ】

「恨めしや、キース様。」


ミリーの声が部屋中に響いた。キースは耳をふさぎ、ミリーの問いかけをひたすら無視した


【ミリー・アルポネ】

「憎らしい!憎らしいぞ!キース!出てこい!」


ミリーの怒鳴り声とともに今までとは比べ物にならないほどの巨大な揺れがキースを襲った。キースは体勢を崩した。キースは体勢を整えようとして、ふと窓を見た。そこには血塗れのミリーが睨み付けていた


【キース・インベル】

「み、ミリー、許してくれ!私が悪かった!許してくれ!」


【ミリー・アルポネ】

「ユルサナイ、ユルサナイ、オマエガシヌマデ・・・・」


キースは土下座をし、許しを乞うたがミリーの怒りは収まらず、なおも恨みの言葉を吐き続けた。そこから時が経ち、いつの間にか朝になっていた。キースの心はすっかり疲弊しきっていた


【キース・インベル】

「・・・6日目。」


キースは食糧には手を付けず、ひたすら眠りにつき、目覚めた時は既に夜になっていた。6日目の夜が心身ともに消耗したキースに襲い掛かった


【ミリー・アルポネ】

「キース様、いい加減、出てきなさい。」


【シャロン・ミリアン】

「陛下、私たちとともにあの世へ行きましょう。」


【アルポネ公爵】

「そうです、さあ、参りましょう。」


【国王】

「早くこちらへ参れ!」


死霊たちが早く来いとキースに呼びかける、キースはひたすら耳をふさぎ、無視をし続けた


【キース・インベル】

「早く、早く、終わってくれ!」


キースはガタガタ震えながら、朝が来るのを待っていた。ひたすら我慢し、朝を待ち続けた。そして朝が来たのである


【キース・インベル】

「今日で7日目、今日乗り切れば私は助けるんだ!」


キースはやっと希望が見えてきたことに歓喜し、残りの食糧と水を食べつくしたのである。今日さえ乗り切れば、ようやく自由の身になれるのだから・・・・


【キース・インベル】

「さあ、来い!もう私には怖いものはない!ハハハハハハハ!」


キースは勝利を確信していた。そして最後の夜を迎えた。キースは死霊たちを警戒しながら、朝を待っていた。しかし死霊たちは一向に現れず、キースの中で余裕が出てきた。そして窓から朝日が差した


【キース・インベル】

「やった、やった、やったぞおおおおおお!朝が来たぞおおおおおお!」


キースは喜び、朝日を拝んでいた


【キース・インベル】

「ざまあ、見ろ!ミリーよ、私の勝ちだ!」


キースは喜び勇んで扉を開け、教会の外へ出た。しかし外はまだ夜だった


【キース・インベル】

「えっ!よ、夜だと!」


キースはまだ外が夜だと知り、早まったことをしたと後悔し、うずくまるのであった


【ミリー・アルポネ】

「ふふふ、ついに出ましたね。」


【キース・インベル】

「ヒイイイイイイ!」


キースの目の前にはミリーの死霊が漂っており、キースは思わず腰を抜かしてしまった


【ミリー・アルポネ】

「ふふふ、この日をどれほど待ち望んだか、さあキース様、私とともに!」


ミリーはキースの手を掴み、あの世へと連れて行こうとした


【キース・インベル】

「ヒイイイイ、やめてくれ!やめてくれ!死にたくないんだ!」


キースは必死で抵抗し、ミリーの手を振りほどいた。そしてキースはミリーに土下座をした


【キース・インベル】

「私は生きたい!生きて生きて、お前への償いをしたい!」


キースは涙ぐみながら必死でミリーの死霊に命乞いをした


【ミリー・アルポネ】

「そこまで生きたいのですか?」


【キース・インベル】

「イギダイ!」


キースはプライドをかなぐり捨て、小便を垂れ流しながらも必死に命乞いをした


【ミリー・アルポネ】

「ならば生きなされ、生きて、生きて、私たちの無念を語り継ぐのです。」


【キース・インベル】

「ミリー・・・・ありがとうございます!」


キースは安堵した瞬間・・・・


【ミリー・アルポネ】

「そのかわり。」


ミリーはキースの頭を両手でつかんだ。キースはわけが分からず、途方に暮れていると・・・・


【ミリー・アルポネ】

「今日から貴方はキース・インベルではなく、ただの語り部として生き続けるのです。これは私たちが貴方に与える呪いですわ。」


ミリーは微笑み、キースの頭に呪いをかけた


【キース・インベル】

「アアアアアアアアアアアアアアアアア!」


そこでキースの意識は途絶えるのであった、めでたし、めでたし


【老人】

「という話じゃ。」


【子供たち】

「怖い!」


一人の老人が子供たちに怪談を聞かせていた


【老人】

「いいかい、悪いことをすれば、必ず報いを受けるということじゃ。みんなも気を付けるのじゃぞ。」


【子供たち】

「ハーイ!」


子供たちは元気よく返事をしたのちに一人の子供が質問をした


【子供】

「ねえ、おじいちゃん、その人、どうなったの?」


【老人】

「さあのう、何せ300年前の話だからの。」


【子供】

「ふ~ん。」


【老人】

「さあ、今日はここでおしまいじゃ、みんな気を付けて帰るのじゃぞ。」


【子供たち】

「ハーイ!」


そういうと子供たちは去っていき、老人だけが残った


【老人】

「さて、行くかのう。」


その後、キース・インベルはどうなったかは、みんなの想像にお任せいたします、めでたし、めでたし







皆様の応援のおかげにて完結しました。他作品も是非、ご覧ください

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