第39話 応戦
逃げる余裕も無く、耳に響く金切声のような奇声と共にワームは何処からともなく次々と集まり始め、今では100匹は優に超した。命の危険が有るものの、今はそんなことを考えている暇はない。
既に俺たちを包囲し、まるで自分たちは何時でも料理できる状態だというのを見せしめている様にしか思えない。
「下手に動けないな」
確かにこの状況で無理に動こうとすれば殺されるのは目に見える事だ。無数のワームは見る人によってはとても不快感を与えるほどだ。
「ワームってこんな気持ち悪いもんなのか?」
余裕のあるアドロは腕を組み「まぁ、こんなもんだ」と頷く。その一言が気に食わないのか、ただ喰らいつく本能なのかは不明だが、ワームは一斉にカチカチと威嚇音を鳴らし始めた。
「こんな音、どこから出るんだ?なんか危ない気がするのは俺の気のせいか?」
さっきまでの耳障りな奇声から、急に聞きなれない独特な音に本能的な危険を察知する。
「って、やば!!!絶対今、殺そうとした!殺意にあふれてるし!?」
「きっと気持ち悪いって言ったのが癇に障ったんだな」
この状況にドヤ顔で答えるアドロ。
「気に障ったのなら、キモイってバカにしません!だから・・・って、言っても通じねぇし!」
非常に不味いこの状況をどう切り抜けるかだ。
その後、アドロが八割方を片付けたが、ワームにおける戦いは続いた。
「まじで『ヴィラマストンの聖水』のようにウジャウジャ湧いてきやがるな!!!」
そもそも彼らには死の感覚が無いのだろうか?それとも死の概念そのものが無いのだろうか、ワームは幾ら殺られようとも、仲間の屍をも超えて喰らうワーム達の姿しかない。
「あれ、自分の仲間を喰ってるのか?」
異様な光景に吐き気を覚える。転がっているワームの死骸を集まって来た新たなワーム達が喰らい尽くし、骨をも糧となる。そのワームが生きたという証にもならない。そう、彼らは、
「本能のままに生きているのか?」
絶体絶命な状況下、ワームは依然として増え続ける。
「どうしたら・・・」
相手との距離はドンドン詰められ、後ろに追いやられる。このままでは彼らの想いのままに動かされる。ワーム自体は一個体は弱く、さほど知能は無さそうだが、集団性があり、集まって連携をとる事が、彼らにとって大きな強みである。
距離を取っていたつもりだが、一体のワームが動き出した瞬間——————
「カチカチカチカチ!!!!」
威嚇音と共に、ワームは蛇のように体全体をクネクネさせ・・・刹那、視界に留まっていた筈のワームの姿は目の前に映った。俺は何も反応できず、目の前の存在を避け切れないと判断し、放心状態になる。
「はっ!」
瞬間的に目を瞑り、再度瞼を開ければ、気づいた時には目の前のワームは既に息絶えていた。
「応援に来たぞ!」
その声がアドリエ内に響き渡る―――
「応援だったか。こりゃ助かるぜ!」
アドロが真っ先に反応したようだ。応援が駆け付けたと知ると、「一安心」と安堵の声を上げ、胸を撫で下ろした。
俺達を獲物と見做したワームの大群の向こう側には5,6人の冒険者の姿が視界にボンヤリと映る。弓使い、大剣使い、1人は魔法使い。業種ずつ均等にそろっている。俺の体自体はもう、ボロボロだ。唯一無傷で済んだのはおどろおどろしく黒光りした剣だった。気のせいだろうか、何故か剣の鍔の部分に填め込まれた紅い宝石が前よりも一段と明るくなった気がした。
ワームはどうやら標的を変えたらしく、応援の方向に狙いを定め、此方からは外れた。目という器官が無い中、どうやって応援の方向と存在をどう察知しているのかだ。
「ワームなんざ雑魚モンスターになんて負ける分けないだろ?」
応援に来た冒険者の中の弓使いのリーダー格らしき人物が「ふっ」と鼻で笑いながら声を上げ、肩に背負った深碧の矢筒に手をかけた。弓使いはその場で口に手を当て、仲間に「声を出すな」とジェスチャーで指示する。
今なら皆殺しにできるのに、ワーム達は何故か全く動こうとはしない。大剣使いが近くにあった石を拾い、明後日の方向に投げ捨てる。カーンという石が打ち付けられ、音が反響する。
「キシャァァ―――!」
突如、ワーム達はその音に引き寄せられるかの様に豹変し、凶暴化する。発音源に物凄い威勢で喰いつく。その様は飢えた獣が獲物に襲い掛かるようだった。俺はその場で腰を
『次回予告』ワームにより危機に陥ったユート達にに応援が駆け付ける・・・




