伯母さまの業
亀更新ですみません。
今日は、ガゼリを呼んで一緒に、うんうん、次の製品について話し合っておりました。時計ですが、どうやら、壁掛け時計には、結構ニーズがあったようです。特に主婦の方々に好評で、値段をギリギリまで下げたら、結構買ってもらえるようになりました。
今は、デイデイトにできないか、考えているのですが、この世界の1年が特殊すぎて、どうすれば、いいのか解決できそうにありません。これは、やめた方がいいのでしょうか。デジタルだったら、一発で解決できるのに。しかし、そんなテクノロジーは、ここにはありませんし、私も知りません。
そのとき、視界の端に怪しい禍々しい狡猾そうな顔をした男がこちらを覗いているのを捉えました。私は立ち上がり、皆に、向かって叫びました。
「だれか!あそこに怪しい男が!」
ところが誰も、反応しません。ガゼリもあちゃーといった感じで、頭を掻いています。
「ガゼリ、これはどういうこと?どうして誰も反応しないのでつ!!」
「あ、あれは、お館様だ。」
「へ?」
思わず変な声が出てしまいました。
「どういうことです?」
「あれ、この公爵家のお館様、アン様のお父様だよ。頼まれて、今日、連れてきたんだ。」
なんということでしょう!あんな怖い顔をした男が私の親?????
「あー言い忘れてたが、お館様、時々ああやってアン様を覗いていたんだよ。まさか、バレちゃうとは思わなかったが。」
そういってガゼリは、立ち上がった。
「公爵様、どうやらバレてしまいました。どうぞ、こちらへ。」
彼女は、片膝をついてお父様(?)を迎えました。片膝?私はピンときました。
「ガゼリ、あなた、もしかしたら、騎士ですね。」
「そうです。アン様、いままで謀っておりまして、申し訳ありませんでした。私は、父が職人でして、ずっと跡取りとして仕込まれており、騎士になってから、アン様につくように、アン様のおばさまに、お願いされていたのです。」
ニヤア、とまがまがしい悪人顏のおとこは笑った。怖い。ところが、声は恐ろしいほど弱々しかった。
「すまなかった。アンよ。じつは、父のこの顔は見ての通り、ものすごく怖い。悪人顏、悪魔のようだとよく言われた。そのせいで、皆、私を怖がる。娘に、この顔を見せてはいけないと思って、いままで接触をさけてきたのだ。」
声は恐ろしいほど優しかった。しかし、嗄れて低音で、魔王の声と言われても信じたぞ。
「まあ、この顔のおかげで、皆、父を勝手に恐れてくれるから、政敵もおらず、楽なのだが。」
まあ、そうだよね。こんな恐ろしい顔の人間に敵対しようとは思わない。これで合点がいった!お母様があんなにお綺麗で、見目麗しいのに、私の顔が整ってはいても、ちょっとずる賢く見えるのは、こいつのせいだった!!しかも笑い顔もちょっと怖いし。コンプレックスなんだよね。
「私が忙しく時々しか家には帰ってこられなかったが、いつもお前のことを思っていたよ。」
うわ、泣き出した。鬼の目に涙?泣いた赤鬼?
「お父様、そんなことは思わず、これからは、堂々とアンに会いに来てください。」
私がいうと、私を抱きしめておいおい泣き出した。そんなに悪い人ではなさそうだ。
私もぎゅっと抱き返してあげると、大きな声で泣き出して困った。周りの女性たちも、つられて泣いている。お母様とこの人だと本当に、美女と野獣だよな。お父様には悪いけど。
ガゼリもちょっと涙目だ。後ろに片膝をついて、控えている。
どうも、ガゼリは、公爵家の騎士団の副団長らしいよ。どうも中年女性にしては、力がアホのように強いはずだ。ドワーフかなんかのような力だったからね。
お父様と私は、座っていろいろ話し込んだ。
お父様は、この悪人顏のせいで、結婚ができない伯爵家の次男だったそうだが、頭がよく、副大臣にまで上り詰めたところで、お母様と結婚したようだ。伯母さまも、この怖い顔が気に入って、妹と結婚させようとしたようだ。多分、王様への嫌がらせで怖い顔のお父様を選んで、公爵家に据えたんだな。これで大臣だから、王様もさぞ、いつもビクビクしてるだろう。
そこで、知ったのだが、公爵夫人という伯母さまの称号は、愛称のようで、本当の公爵夫人は、私の母らしい。といっても全ての権力は伯母さまが握っていらっしゃるがために皆が、伯母さまを揶揄も含めて、公爵夫人と呼んでいるようだ。とはいえ、お父様も伯母さまは怖くて頭があがらないらしい。まあ、そうだよね。しかし、この怖い顔のお父様が恐れる伯母さまということで、皆には相当怖がられて余計に、伯母さまには誰もよってこないので、気の毒だそうだ。
まあ、伯母さまには、一生をかけて、王様に嫌がらせをするという使命(?)があるので、それはそれでいいだろう。でもそんなに好きなら最初から、求婚を受け入れたらよかったのにね。
昨日の豪雨に濡れて風邪をひいてしまいました。やれやれ。




