木曜日・想い 3
「あっ、智里お姉ちゃん。」
「げっ。」
時は戻って、昌獅が友梨を捕まえた頃。中学校の門の前に一人の少女がいた。
一人は純粋に驚き、一人は嫌なものを見たかのように顔を顰めている。
「あら、駄犬その反応は何なのかしら?」
ゆったりと艶然と微笑む智里に涼也は本当に嫌な顔をする。
「何であんたがここにいるんだ?」
「……あら、そんな口の利き方をする?」
眉を上げ、涼也を見る智里に、彼は目を細める。
「あんたみたいな人にこんな口の利き方がまずいと言いたい訳?」
「目上の人に対してそんな口の利き方をしていいのか、といいたいのよ?」
優しく諭すような内容の癖に、その眼は冷めきっている。
まるで、責めているような感じのする智里の視線を受け流し、涼也はさっさとこんな事を終らせたいのかもう一度同じ言葉を吐きだす為、口を開く。
「何であんたがここにいるんだよ。」
「ふぅ…。」
まるで駄目な子どもを見るような、そんな残念そうな、呆れたような眼差しを智里は涼太に向ける。
「分からない訳?」
「また、何か起こったのか?」
「はずれ。」
あまりにも涼太が頓珍漢な答えを言ったかのように、智里は侮蔑に満ちた目で彼を一瞥する。
「美波。」
「はーい。」
「行くわよ。」
「……何処に?」
妹に声を掛け歩き出そうとする智里に実の妹である美波は元気に返事をするが、すぐに何処に行くのか全く見当がつかなかったのか小さく小首を傾げる。
「分からない訳?」
「うん。」
あっさりと頷く美波に智里は額を押さえる。
「まだ、あの愚姉の方がマシだわ。」
「えっ?」
「まあ、いいわ、忘れ物を取りに行くのよ。」
「忘れ物?」
「ええ、忘れ物。」
智里はしっかりとした足取りである場所に向かう、美波はキョトンと首を傾げ、涼太を見る。
涼太も智里の意図が全く読めず、顔を顰めている。
「分からないのならそれでもいい、でも、他人任せだといつか後悔するわよ。」
「……。」
智里の意味の分からない言葉、先の未来で涼太はそれを経験する。
未熟な自分。
無知な自分。
無力な自分。
それで助けられない大切な人。
だけど、それは今ではなかった。
今の涼太は智里の言葉に怪訝な顔をするだけで終わった。




