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ダークネス・ゲーム  作者: 弥生 桜香
第三章

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月曜日・第一ゲームの行方 7

 友梨は疲れの所為で足が重く感じていたが、それでも、休む訳にはいかないと必死で足を動かしていた。

 段々痛くなり始める頭に友梨は自分の不甲斐なさに涙が零れそうになる。


「大丈夫かい?」


 勇真の問いに友梨は頷く。

 言葉に出す事すら億劫に感じていた。


「……。」


 何か言いたげな顔をする勇真から意思を逸らし、階段に集中する。

 友梨はこの時周りが見えていなかった、そして、勇真もまた友梨に気を取られていた為にそれに気づくのが遅れてしまった。

 それは死角から襲ってきた。

 次の階の柱から一人の人物が突進してきた。


「えっ!」

「しまーー。」


 二人は突然の事態に身構える。

 しかし、突然現れた敵は先に行っていたはずの昌獅の手によって気絶させられる。

 後々分かるのだが、それは偶然が重なり、助かった奇跡だった。

 昌獅は先に行き、とうとう屋上まで行ける所までたどり着いた昌獅は後ろを見るが、誰もいなかったために、引き返した。

 そして、その時、足元に落ちていた何かを踏んずけてしまう。

 何となく苛立った昌獅はそれを下の階に向かって投げた。

 そして、その何かが偶然にも友梨たちを襲おうとした人物の頭にクリーンヒットしたのだった。

 敵に運がなかったのか、それとも、友梨たちの方に運が向いていたのかは分からないが、幸いにも友梨たちは傷一つ追う事無く危機がさったのだった。

 ドサリと音を立てて倒れるその人物を見た友梨と勇真はホッとしたような、申し訳ないような顔で見た。


「高田さん、大丈夫?」


 何度目かの言葉に友梨はゆっくりと頷く。


 怖かった。


 本当は泣き喚きたかった。


 でも、それは許されない。


 友梨は唇を噛みしめ、気丈にも前に行く。


 しかし、それはやせ我慢。


 いつ崩れてしまっても可笑しくないもの。


 それに気づく者はここにはいなかった。


 それは不幸なのか、幸いなのか、友梨には分からないが、それでも、彼女は前に進むしかなかった。


 それしか、今の彼女には出来なかった。


 この出来事により、友梨の中の何かが歪んでしまう。


 それを知ったころにはもう修復できない程友梨の中で定着していた。


「おい、凄い音がしたが、大丈夫か?」


 上から聞こえた声に顔を上げると、額に汗を滲ませた昌獅がそこにいた。


「取り敢えずは。」

「そうか。」


 勇真の言葉に昌獅はそっけなく答えるが、ふと、視界に入った友梨を見て怒っているような顔をする。


「おい。」

「……。」


 友梨は自分に声を掛けているとは気づいていないので、ゆっくりと階段を上っている。


「おいって言っているだろう。」


 いつの間にか近づいていた昌獅が友梨の手首を掴む。


「えっ、わ、わた…し……に?」


 息も絶え絶えに話す友梨に昌獅は険しい顔をさらに険しくさせる。


「休め。」


 昌獅の言葉に友梨は目を見張るがすぐに、彼を睨みつける。


「高田っ!」

「じか…ん…ない……。」

「その体で何が出来るっ!」


 抱きしめるように拘束する昌獅に友梨は顔を青くさせる。


「は…な…して……。」

「振り払えないくせに無茶すんな。」

「……。」


 友梨は諦めたかのように体に力を抜いた。――と思ったが。


「いってぇぇぇ。」


 油断していた昌獅は足に痛みを感じて下を見ると友梨が昌獅の足をぐりぐりと踏んずけていた。


「この……アマ……。」

「だいじょ……ぶ…。」


 睨むように、挑むように睨む友梨に昌獅は溜息を一つ零し、彼女の頭を軽く叩く。


「無茶なら、離脱しろ。」

「えっ……。」

「高田………いや、友梨、行くぞ。」


 名前で呼んでもらう事に友梨は抵抗がある方だった。

 だって、常に、「高田さん」「高田」「高田の姉」それが友梨の呼び名だった。だから、下の名前で呼ばれるのは本当に長く付き合っている幼馴染や親友くらいだ。

 だけど、昌獅にそう呼ばれると、まるで彼に認めてもらえたように感じて友梨は嬉しく感じた。


「うん。」


 友梨は嬉しそうな顔をして、昌獅についていく。

 そして、蚊帳の外に追いやられたはずの勇真は何故か嬉しそうな顔をしているが、それに気づいたものはここにはいなかった。

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