第2話 2
奇妙なほど静かだった妹との帰り道を終えて、ぼくたちは家に着いた、ぼくが扉を開けて「ただいま」と言うと、お母さんの返事の声が聞こえてきた、それと同時にキッチンからの料理の匂いが玄関のドアを通り抜けてきた。
今の服が汗でびっしょりだったので、ぼくは体をきれいにすることにした、そのあとはただ部屋で息をつきながら、今日一日にあったことを思い返していた。
ベッドの上でちょうどいい体勢に落ち着かせてから、あのクラスメートと出会うきっかけになったことを思い出しながら、ぼくはゆっくりと目を閉じた。
たぶんすべては、ぼくがまだ小学一年生に足を踏み入れたときに始まったんだと思う、あのとき、ちょうど新学期の始まりに、クラス分けの掲示板の前に立っていた。
今この瞬間もぼくは掲示板の中から自分の名前を探すことに集中していた、でもそのとき、すぐ隣にいる誰かから突然の歓声が上がった。
仕方なくその声の出所のほうへ顔を向けた、そこには両手を挙げている小さな女の子がいた、そしてまさにその瞬間、ぼくの目と彼女の目が合った。
「ねえ!あんた、名前なんていうの?」
それが、指をぼくに向けながら彼女から聞いた最初の言葉だった、ぼくは少し戸惑いながら周りを見渡した、その質問が本当に自分に向けられたものなのかを確かめるように。
「ぼく?」
「そう、ほかに誰がここにいるの」
「ちなみにわたしの名前は瑞良、橘瑞良」
「……」
「おーい、なんで黙ってるの?名前ないの?んー、わたしの自己紹介の仕方が間違ってたかな」
「ち、違うよ」
「じゃあどうしたの、あんたって誰?そう、あんたが誰なのか知りたいの」
「……えっと、ぼくの名前は、綿根恵太」
「あー、そういうことか、よろしくね、恵太」
「……よろしく」
その言葉を言うとき、ぼくの声は少し小さくなっていて、それがちゃんと届いたのかもわからなかった、その女の子は口の端に笑みを浮かべながら急に掲示板のほうへ向き直って何かを探しているようだった、ちょうどぼくもどのクラスになるのかの確認を続けていたところだった。
そしてその日、ぼくは二つの本当のことに気づいた、一つ目は自分が1-2組にいるということ、つまりどのクラスに配属されたのかがわかったこと、そして二つ目は、さっきの女の子の名前が、ぼくが自分の名前を見つけたのと同じ紙のリストの中にあったということだった。
つまり間接的に、今隣にいるこの女の子は、これからのぼくのクラスメートだということになる、そして彼女があまりにも遠慮のない性格だったのを見て、これから先どんな雰囲気になるのか少し不安になった。
彼女との最初の出会いがどうしてこんなふうに突然起きたのか、ぼく自身よくわからなかった、しかもあんなに間接的な自己紹介のされ方で。
それが理由なのかどうか、ぼくは自分が経験したその出来事を、通ったことのある曲がり角の一つ一つも知らないまま、無理やり道の名前を覚えさせられているようなものだと思ったことがあった。
今、ぼくはその思い出からはっと我に返り、今の部屋の状況に戻った、お母さんが部屋の外から呼びかけて、お父さんが今日帰ってくることを知らせてきた、それを聞いてぼくはとても不思議な感覚になった、いつも外から色鉛筆を送ってきてくれる人が、ついに帰ってくるのだと気づいて。




