第98話 プレッシャー
すでに戦いは始まっている。
3人一組の討伐隊、兵器、ジュドーにメグ。
それぞれ訓練通りにゾームに対抗する。
「やはり、鎧を来たゾームが結構いる…!」
ヒロがつぶやく。
ヒロはまだ魔法が使える状態ではないため、ジュドーとメグの後方にいる。
ヒロの言葉にジュドーが返す。
「改良した兵器は鎧も貫くんだろ?」
鎧を来たゾームが多々いる。それに兵器が対応できるか。
兵器の準備は万端に思えるが、戦いに慣れないヒロは少し声を抑えて答える。
「ええ、そのはずですが…実地テストは初めてですから…」
「おい、自信もってくれよプロジェクトマネージャー!
俺は、ヒロを信じてるぜ!」
そう言って、ジュドーは眼前に現れたゾームに切りかかった。
プレッシャーだ…。
ヒロは思った。
リスクはできるだけつぶした。やれることはやってきた。
とはいえ、完璧なんてない。
コストとの兼ね合いで、最善を尽くす。
これがビジネスにおける適切な対応だとヒロは思っている。
プロジェクトマネージャーは時に大きな期待や重責を感じる時がある。
大風呂敷を広げて期待を過度に煽れば、それはもっと増す。
が、ヒロ自身は期待を過度に煽ったつもりはない。
兵器で絶対に倒せると思っていないからこそ、ジュドーやメグに頼っている。
相手の期待値は適切にコントロールすることが、プロジェクトマネージャーのすべきことでもある。
ただ、期待値の制御をしたとしても、期待はかけられてしまうものだ。
こんな、命がかかった場面では、みなヒロの手腕を信頼する他、戦いへ前向きにはなれないのだろう。
ただ、この大きな期待に応えられれば、ヒロはかつてないほどの充実感を得られると思っている。
つまりは、これまでにないほどの魔力。
その魔力を使えば、元の世界に戻ることだってできるかもしれない。
「ジュドーさん、きっと勝てます」
そんなことを逡巡し、ヒロはジュドーに言った。
ジュドーは華麗な剣技で、メグは強力な魔法で、ゾームを葬り去る。
ヒロはメグに目をやった。
冷静ではあるが、少し焦っているように見えた。
あたりをキョロキョロしている。
「メグさん、エルザスを探しているのですか?」
「そう。あいつがいない。あいつを倒さないと…!」
「落ち着いてください。
ゾームたちを倒せば、エルザスは出てこざるを得ないはずです。
この数のゾームです。討伐すれば、何か手を打ってくるでしょう」
そう話すヒロの横で、叫び声が聞こえた。
悲鳴ではない。
よしっ!
というポジティブな声だ。
「ヒロさん、鎧のゾームにも兵器が通用します!」
兵器を使った冒険者が、ゾームの亡骸の前からヒロに報告する。
周りを見れば、つぎつぎにゾームは倒されていくところだった。
「これは…いい調子です!」
ヒロは、言わずもがな充実感と魔力に包まれた。
「よし、この魔力でエルザスを探し出し、そのまま討伐します!」
ジュドーがヒロに言葉を投げた。
「頼んだぞ、ヒロ!
…ってなんだあれは?」
ジュドーは遠くを指さした。
何かが、こちらへ向かってくる。
「ゾームの援軍か…!?
いや、違う!キラーマンティスだぞ!」
ジュドーは叫んだ。




