第51話 一度目の満月
空を見ると、満月。
ヒロは緊張していた。
死と隣り合わせの戦場をすでに何度が経験したヒロだが、慣れるものではない。
できれば逃げたい。
ヒロとしては、今時点でできることはやったつもりだ。
そういう意味では、開き直って自信が多少ある気持ちもあった。
ゾームが襲撃してきたとして、何体来るかは分からない。
だが、費用との折り合いで10体まで同時に対応するための人数である30人、10組の討伐隊を確保できた。
それとは別に、ジュドー、メグを隊列に加えている。
もうゾームの倒し方の要件定義は終わっているので、ジュドーとメグには上位の技や魔法を思う存分使ってよいと伝えている。
これで、10体以上のゾームが来たとしても対応ができるだろうという算段である。
王都シュテールは城壁に囲まれている。
街の端と外の境目は、全て壁。
そのため、迎え撃つのは壁の外。
城壁の外は荒野が広がる。
夜で真っ暗な荒野を臨みつつ、ヒロと冒険者は待機している。
中に入られれば街の人に多くの被害が出るため、プロジェクト達成条件である”被害者5人以内”は満たせなくなる。
外で討伐しきることが条件なのだ。
ヒロは満月の明かりに照らされても、それでも真っ暗な街の外を眺めている。
ゾームが必ず襲撃にくるとは限らない。もしかしたら、来ないかもしれない。
もう他の国に移動したかもしれない。
そうであってほしいとヒロは願う。
だが、冒険者の一人が、悲報を叫んだ。
「赤い光が見える…!」
そうか、来たか。ヒロは思った。
冒険者並みの視力がないヒロには、まだ赤い光は見えない。
だが、ジュドーもメグも南を見て武器や杖を構えた。
ジュドーが真剣な顔でつぶやいた。
「数が…多そうだな。
10体以上いるかもしれない」
徐々に、ヒロにも赤い光が見えた。
確かに、かなりの数の赤い光がうぞうぞとこちらへ向かって動いているように見える。
ジュドーが叫ぶ。
「全員、配置に付いてくれ!」
冒険者たちが3人一組で横に広がった。
メグとジュドーは隊列の中心に陣取っている。
ヒロは戦いにおいて足手まといなので最後尾にいる。
だが、隊列に参加したのは、大魔法を使えるかもしれないという一縷の望みがあるためだ。
ジュドーが鼓舞する。
「トレーニング通りにやれば、ゾームは倒せる!
みんな、見た目は恐ろしいモンスターだが、落ち着いて対応してくれ!」
了解、とか、おう!とか、それぞれの冒険者の声が聞こえた。
そうして、一度目の満月においての戦いが始まった。




