女たらしは女の敵です
右を向いてもー。
「…(ひそひそ)」
左を向いてもー。
「…信じらんない…(ひそひそ)」
どうみても四面楚歌です、聖名明です。
現在進行形で女の敵認定されてるのですがどうしたらいいでしょうか。
☆
事の起こりは勿論、仮とはいえ婚約者の誤解からついた「女たらし」の称号。
この称号の効果がまたすごかった。
『称号:女たらし
効果:女性からの不信感5割増し・噂の伝達率3割上昇』
うん。
元々見合いパーティで大量に女性に会った俺である。
そこに婚約者の前で違う女にセクハラした的な噂が流れたらどうなるでしょうか。
結果:女性からの遠巻き
遠巻きって言うか!
それ内緒話じゃないよね!!
見えるところでひそひそして行くのマジやめてくれないかな飯がまずくなる!!
「…セーナ、英雄は色を好むってのはわかるが浮気バレバレなのはどうかと思うぞ?」
「んなわけねーでしょうがッ!!! 誤解です!」
大体婚約者の前で何かするかっていうんだ!
誤解にも程がある!
「む? セーナはまさかの童貞か」
「いえ、初体験は済んでますが」
「若いのにやるな」
…いや違うだろ!
ってか料理人になるまでにそれなりに経験はするだろうが!
成人して何年たってると思ってんだ!
いやいや違う。料理長問題はそこじゃねぇ!
「せぇぇぇぇぇなぁぁぁぁぁぁ!!! そこになおれええええ!!!!」
そして厄介な騎士団長がやってきたよー☆
来るとは思ってたけど意外に遅かったねっていうか。
(やば!?)
血糊ついてますけどむしろ遠征帰り直後ですかアンタは!?
鎧はボロボロ、顔色は蒼白なのか真っ赤なのかよくわからん状態、そしてヤバイくらい匂いがって…ちょ…!
その鎧つけたまま突進してこないでええええええええ!!!
俺まだ下味つけてる肉とか持ってるんでそんな匂いついたら食べれなくなるわぁ!!
「「調理場にそんな状態でくるんじゃねぇえええ!!!」」
「そんなこと知るかああああ!!!」
あぁ、なんたるカオス。
ところでいい加減、遠巻きの女性陣目をキラキラさせたまま団長の行方見守るのやめて、止めてくれませんかね…。
☆
匂いがヤバかったので、料理長に団長ともども調理場をたたきだされた俺は、騎士団長室まで連行されていた。
うん、有無を言わせず。
別に振りほどいても良かったのだが、そこで身体能力を出すとねうふふ・・っていうか…。
女性陣がガン見してくるんで抵抗できませんでした…これ以上の噂は勘弁して頂きたい…。
「…さて…弁明を聞かせてもらおうか…」
「とりあえず逃げないんでまず風呂はいってきてくれませんかね…」
説得をしたところ、さすがにどうかと思ったのか風呂には入りに行ってくれた。
仕方なしに座って待っていると、来客用に補佐官が俺にお茶を入れて持ってきてくれ…って…。
…おい…。
「「……」」
忘れてました。
騎士団長の補佐官、娘さんでした。
どうみても俺の婚約者(仮)のサルディナさんです、本当に…っていうか、騎士団長も呼びだした理由忘れて補佐官に茶を出させてんじゃねぇよ!!!
「あ、あのー…」
「は、はいっ!?」
お盆を持ったままフリーズのサルディナさんに声をかける。
とりあえず騎士団長に弁明より、本人に弁明の方がいいよなあ…。
まず何を言えばいいだろう…。
「まず確認したいんですが、いいですか?」
「え、えっとなんで、しょう…」
警戒しているようだが、俺の言うことも聞いてほしい。
うん。
これだけは言わせてくれ。
「俺、この国に来て数か月になるんですけど」
「え、はい?」
「なんでいきなり女性の胸揉もうとするような男だと思われてんですか?」
「え…!!」
そう。
言いたかったのはこれだった。
ぶっちゃけよう、そんなセクハラ男、数カ月もいたら噂になっていてもおかしくなかろう。
俺はあの道具屋へ行くのは初。
初でそんな事するって、どんだけ飢えてる男だと思われてたんだかそこからまず気になっていたのだ。
「え、だ、だだって、手の形がちょっとおかしくて…!」
「空中に手を伸ばしただけで、そもそも道具屋の娘さんの方に伸ばすなら下に手を向けてるはずですが俺」
「……あ…」
後もう一つ、言いたかったのがコレ。
俺と道具屋の彼女は確かに、正面で向き合っていたさ。
正面で向き合っていて、胸に手を伸ばそうとしたってマジどんだけ。
そして身長差がありすぎて、俺の手は上に向いていたはずなのに、胸に向かっていると思われたとか酷過ぎる。
「だ、だだって、アキラ様は…」
「?」
「初対面で私の胸に倒れてこられたじゃないですか! だからむ、むねがす、すすすきなのか、と」
「いやいやいやいやいや、あれ気絶してたでしょうが!!」
どんだけ わざとだと 思われてたんだよ!!!!!
これは気絶した俺が悪いの?
ねぇ俺が悪いの??
「あ。あのあの…誤解でした、か…」
「うん」
「で、でもでも」
手の形についてはまあ、弁明の余地がない。
まさかウィンドウがあるとか言えないしなあ…。
「デート中に、他の女の人に声、かけるなんて…ッ」
「俺からかけた覚えはないんだけど」
「えっ」
「雑貨やでぼーっとしてたから探し物があるか聞かれただけでしたよ?」
「あう…」
たたみかけると放置した覚えだけはあったらしく、俯かれる。
う、うーん。。。
誤解が解きたいだけで、別に責める気はないんだけどなあ…。
難しい。
「大体デート中に、美人の婚約者を放って他の女性に気を取られたりはしないよ」
「こ、婚約者……」
「うん?」
婚約者の言葉に真っ赤になる彼女。
…おろ…?
違ったっけ…?
「……こんな、早とちりの私でも…まだ婚約者って、よんでくれるんですか…?」
「あ、ああ」
上目づかいヤバイ。
涙目うるる状態で見られると、何も悪い事してないのに罪悪感がこみ上げる。
ええと…どうしたらーいいの、かなー?
つられて赤くなりつつ、見つめ合う。
騎士団長が帰ってくる頃には、何故か既に出来上がっているような空気が漂っていたとかいなかったとか…。
とりあえず空気読まない騎士団長に安心しつつ、俺はそろっとフェードアウトして帰ったのであった。
ぽぽーん。
『称号:女たらし
効果:男性からの褒め言葉に変更されました』
……。
おい、団長。
俺を見て何を思ったんだアンタは!?
つーか称号消せよ神様!!!




