第20話 麻剣 スリーピング・ビューティ
「なにっ!?」
生成時に発生した衝撃により、男は後退りする。光が収まり、私の手に握られていたものを見て……男が、ポカンと間抜けに口を開けた。
「……は? 草じゃねえか」
鼻で笑われるけど、無理もない。立派な金属の柄の部分には、皮肉にも王家の紋章がこれ見よがしに刻まれている。なのに、そこから伸びる刀身にあたる部分は……巨大な葉っぱ一枚なのだから。
「アッハハァ! この土壇場で渾身の一発芸とは、恐れ入ったぜ!」
私を見下しながら、無防備に距離を詰めてくる男、しかし。
「……な!?」
私が無心でその葉っぱを横薙ぎに振り抜いた瞬間、男の剣を弾き飛ばした。私の剣は、驚くほど鋭利な切れ味を持っているらしい。
「チッ、腐っても王の血筋ってか。だが、小娘が急に玩具を握ったところで、俺の敵になるはずが……」
無言になる男。私が無意識にとっていた構えが、想像よりも堂々としていることに一番驚いていたのだ。生きるために毎日繰り返してきた10年間の農作業。その中で身体に叩き込んだ長物の使い方は、完璧に私の体に染み込んでいる。
おまけに、コヴィ様に叩き込まれた護身術もあるのだ。「いざという時、羊泥棒くらいはメッタ打ちにして倒してこい」と、特訓をさせられていたじゃないか。
「農家を舐めるな!」
「くっ……」
行儀のいい剣術なんか知らない。でも、地に足をつけて泥臭く生き抜くための経験なら、私にだって、たっぷりあるんだぞ!
「まずい……金髪男との戦いで、ほぼ余力はない」
男が焦りを見せた瞬間、私は一気に距離を詰めた。
「これが私の答えだ!」
誰も殺められない、小鳥も食べられない子犬。けれど、私だって歩けば棒に当たる。辿り着いた地平の果て、手に入れた牙は武器であっても凶器じゃない。誰かの命を奪わずとも、進み続けてみせる。
魔剣、転じて――
「麻剣! スリーピング・ビューティ!」




