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君と彼らが僕の心に火を灯す  作者: 牧村せつら


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120/120

まだ出ていない答え

 12時45分。競技はすべて終わった。会場の空気は、静かだった。先ほどまでの張り詰めた緊張も、削る音も、もうない。整然と並べられた完成課題。現寸図とともに番号が振られ、審査員が一つ一つ確認している。だけど…この場で結果が出ることはない。

「……これで終わり、か」

雄介が、小さく言った。

「うん」

あいりが答える。

「私もう動けない」

ほのかが疲れた声で言った。それ以上の言葉は、出てこない。

 望は、並べられた作品を見ていた。明日は、自分の番。

だけど今は…ただ、今日の3人の仕事を見ている。

「どうだった?」

振り返らずに、聞く。雄介は、少しだけ笑った。

「わからん。けど……やれることはやった。ほんま、和也と琴葉すごいわ。自分でやってみて、よう分かった」

「そっか」

それで、十分だった。望達とは少し離れたところからで和也と琴葉は並んで完成課題を眺めている。

「……終わったね」

和也が言う。

「うん」

琴葉の視線は、並べられた作品に向けられている。

「結果は、まだ先だけど」

「そうだね」

少し間があって

「でも、もう結果は決まっている」

琴葉の言葉に和也は、少しだけ頷いた。

 やることは、全部やった。あとは、変えられない。雄介は、自分の手を見た。何度も削り、何度も戻った手。震えた手。止めた手。

――あのとき、戻った

あの一手。

――あれで、よかったわ

結果がどう出ても…それだけは、変わらない。あいりは、自分の作品の前に立っていた。

――最後、鑿入れてよかった

ほんの一鑿。誰にも気づかれない。でも…自分には分かる。それでいい。

坂崎が、雄介とあいり2人のもとに歩いてきた。

「お疲れさま」

短く言う。二人は、同時に頭を下げた。

「……どうでしたか」

あいりが聞く。坂崎は、少しだけ考えてから答えた。

「いい仕事だった。今できる最大の事をやったと思うよ」

それだけ。余計なことは言わない。でも…その一言で、十分だった。

和也と琴葉は雄介達のそばに移動した。

「お疲れ」

「お疲れさま」

「……ほんま疲れたわ」

雄介は、少しだけ笑った。

あいりも、小さく頷く。

「うん」

会場の外に出る。冷たい空気。空を見上げる。冬の空は、澄んでいた。

「結果、いつだっけ」

雄介が言う。

「3月の10日」

和也が答える。

「1ヶ月先やな……」

苦笑い。

でも…焦りは、もうない。

今は、ただ。終わったという実感だけがある。

「……なあ」

雄介が言う。

「また、やりたいな」

ぽつりと。和也が、少しだけ笑う。

「くせになったかい?」

「やればいいだろ」

琴葉も、頷く。

「今度は、もっといいの作りたい」

あいりも、静かに言う。

「うん」

結果は、まだ出ていない。それでも…残ったものは、もうある。削って、迷って、選んだ時間。そのすべてが、確かにここにある。勝つかもしれない。負けるかもしれない。どちらでも、消えないものがある。

 刃が入った感触。木が応えた手応え。あのときの判断。それが、自分の中に残っている。だから、人はまた作る。次は、もっといいものを。そして…

 まだ出ていない答えを、

 自分の中で、少しずつ形にしていく


第120話の投稿になりました。ここまでお読みくださりありがとうございます。

雄介達の技能五輪県予選が終わりました。何とか完成出来ました。雄介は自分が体験する事で、改めて和也と琴葉の全国大会への挑戦が大変だったことを実感しました。そして課題を完成させることの達成感を学んだでしょう。結果はどうであれ、一つ成長することが出来たエピソードでした。

次回は、望の二級技能検定試験受験です。お楽しみいただければ幸いです。

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