第7話 星に誓ったこと
思い出の地巡り。
あと、エレーナはこの後ドレムにベタ甘になりますw
ドレムは、エレーナが行きたいと言っていた展望台へと足を運んだ。
螺旋状の階段を上がって行く二人。
数百段はある階段を上り切り、屋上まで辿り着いて見たものとは______
無数に上空に散りばめられていた、星の数々だった。
煌めく景色に呆気に取られるドレム。
エレーナは展望台の柵に身体を預けた。
そして語り出す。
「……ここはさ、私がリオーラと一緒に旅に出るときにさ……絶対にティタノゾーアを倒そう、って二人で誓った場所なんだ。アルタルキアの星は何処で見ても綺麗だけど……やっぱりここが一番景色がいいの。」
ドレムも感心しつつ、身を乗り出す。
「確かにな。俺も人間界のあの村を支配してた時にも……星は初めて見たからな。……綺麗だよ、本当に。何せ魔界にゃあ、星は見えねえからな。」
右頬に頬杖を突きながら懐かしんでいた。
と、暫く無言で星を眺めていたドレムだったが、ここでふと、切り出した。
「なあ……エレーナ……前に誓った、ってんならよ、今は誓うこと、ねえのか?」
「え? いや、特には……どういう意味?」
「……ティタノゾーア様は死んでねえぞ。」
「は? え、え!? 私が倒したはずだよね!? どういうこと!? ドレム!!」
「……前にティタノゾーア様が倒されて魂が他の魔王に回帰した、って言ったろ? 俺含めて。」
「あー……言ってたね、そういうこと。」
「……ティタノゾーア様は封印されてるだけだ。今のところは、な。俺もまたお前に会う前に知ったことなんだけどな。つまりは、っていうと……お前が倒した、俺を含めた7魔王の魂がティタノゾーア様に吸収されたんだよ。俺たちが倒されると共に。」
ドレムが話した真実は、エレーナに絶望感を付与させた。
が、ドレムの目は真っ直ぐエレーナを捉える。
「……ウチの部下によれば虎視眈々と復活の刻を待っている、ってことさ。……勇者の剣、アレをちと、調べさせてもらったんだ。そうしたら……」
「うん……」
「あの剣はもう一段階進化できる。完全にティタノゾーア様を屠れるように。」
「え……!? ドレム、じゃあアレは……」
「俺たちの魂を吸収したあのお方は強いぞ。お前らの仲間が瞬殺されたのも、納得はいくだろ。……どうだ? 俺と協力して、ティタノゾーア様を完全に滅さねえか? 勇者の剣の覚醒に必要な鉱物はどうやら俺たちがいる魔界にしかないらしい。」
ティタノゾーア再討伐を持ちかけ、モチベーションを高めようとするドレム。
エレーナは戸惑いを隠せなかった。
「ど、ドレム……それは分かったけどさ、アンタはティタノゾーアを裏切るってわけ……!? それってどうなのよ……!!」
ドレムはニヤッと笑みを浮かべる。
そしてエレーナにこう話した。
「確かにティタノゾーア様は俺の恩人だし、絶対的な魔界の頂点に立つお方さ。けれど……ティタノゾーア様の支配体制には魔族の奴らは辟易してるんだよ。今ティタノゾーア様が封印されて、ようやっと平和的に立て直しを利かせている状態なんだ。……だからこそだ、俺は一領主として、民を想いやらねばいけない。そのためにはティタノゾーア様を屠ることが……民のためになり、それぞれの領地が和平的に魔界が一つになることが俺の今の望みだ。」
ドレムは途中口角が下がり、柵に預けた腕の拳をグッと握りしめた。
掴みどころがないドレムを見て、エレーナは思考が混乱した。
何故主人を裏切ろうとするのか。
エレーナにはわけが分からなかった。
たとえ魔界の真実を知ったとしても。
「……俺はここに今誓うよ。ティタノゾーア様を殺して、魔界に安寧を齎すってな。そんで、エレーナ、お前と……」
「ちょ、ドレム?? どうしたの……?」
ハッとしたドレムは我に帰り、顔を背ける。
「な、何でもねえよ! と、とにかくティタノゾーア様を完全に殺すことに……協力してくれ、頼む。」
ドレムの頼みとあらば、断るわけには行かなかった。
たとえ、個人の要請であっても、だ。
「……分かったわ。そういうことなら。でもアンタはさ……魔界に行くにしても準備があるでしょ……?」
エレーナの言うことも尤もで、ドレムには現状魔力も武器もない。
エレーナだけに任せっきりになるのは流石に頂けないだろう。
「俺はまあ、そうだな。ここで武器を調達する。俺が支配していた場所に行って、そこで武器を作る。俺が作りたい武器はそこにしか素材がねえんだよ。」
「じゃあ……私も行くわ。」
「……いいのか? とはいえ俺が居た洞窟とは別の洞窟にしかねえんだぞ?」
エレーナの意思は固かった。
「今のアンタを独りにしておくほど、私はそんな薄情な人間じゃない。」
「ハッ、そうかよ。けどまあ、そこの主に見つかる前に回収しねえといけねえからな。採ったらとっととずらかる予定さ。」
「そうね……それが一番安全かもね。ドレム。」
「てなわけだ、後で日時を決めてから行こうぜ。」
「……うん、わかった。今日は帰ろ?」
エレーナに促され、ドレムも帰路についた。
着替えて寝ようかというタイミング。
いつものように添い寝するために布団に潜った時だった。
不意にエレーナが、ドレムに抱きついてきたのだった。
Gカップの胸の柔らかな感触が、ドレムの背中に当たった。
「お、オイ!? 待て、エレーナどうしたんだよお前……!!」
しかし、エレーナはギュウッ、と抱きしめて離さない。
「……離れたくない……アンタを、離したくない………」
耳元でエレーナはドレムに囁く。
「なんだよ、急に……! なんでこんな急に抱きついてくんだよ、お前さぁ…!」
離れようとするドレムだが、離すまいと、エレーナも脚をガッチリホールドした。
「……私はもう多分……アンタが居なくなったらダメになると思う……だから……アンタには死んで欲しくない……今のうちにドレムの身体の感じ……忘れないように……さ?」
「オイオイオイオイオイ、待て待て待て、エレーナ。俺が死ぬ前提ってなんだよ。」
「怖いの……」
「怖いってなんだよ、ガキじゃあるめえし。」
エレーナはなおもホールドを強めた。
噛み締めるかの如く。
「もしドレムが死んじゃったら、って考えたら怖くて……ただでさえ仲間が死んじゃって壊れかけたのに……正直ギリギリなの。貴方が私の壊れた心を繋いでくれてる。思いっきり、甘えられる……ティタノゾーアとかは今はどうでもいい、私はただ……ドレムが私の側にいてくれるだけでいいから………」
エレーナにとって、ドレムがどれだけ自分が大事な存在になっているかというのをこのホールドと共に受け取った。
「……大丈夫だ、俺は勝手には死なねえよ。……絶対死なねえって保証はねえよ、そりゃ。けれどよ、お前が悲しむような……絶望するような死に方はしねえ、約束するよ。それに……」
といい、息を一つ吐く。
「………魔界のことも好きだし、お前のことも好きだしで……出来ることなら両方大事にしたい、だけど現実はそんな甘いもんじゃねえさ。両方を守れるなんざ、今の俺じゃあ絵空事にしか聞こえねえだろ? だからこそ、俺も強くなる。お前を守れるような男になってやる。」
これを聞いたエレーナの頬が紅くなる。
身体を最大限に押し付け、ドレムを抱きしめた。
「……ありがと、ドレム……おやすみ……」
二人は眠りについた。
翌朝ドレムが目覚めた時も、エレーナはドレムを抱き枕のように抱きしめて寝ていたのだった。
次回はドレムがかつて支配していた村を訪れます。
お楽しみに。




