026 仲間
「俺があれだけ試行錯誤を繰り返し、考えに考えても閃かなかったというのに、どんな名案があるというんだ? 聞かせてくれ」
今は藁にも縋りたい気分だ。
相手がシャーロットなら縋るどころではない。
「簡単ですわ」
シャーロットが人差し指を立ててウインクする。
「仲間を募ればいいのです」
「仲間……だと……」
「そうですわ。ミカエル以外の三天使を倒さないで抑えつつミカエルを倒す――これが倒し方ですよね? であれば、ミカエル以外の天使を仲間に任せるのです。そして、文人様は一対一でミカエルを倒す。これで問題解決ですわ」
「いや、それはそうだが……そんな仲間、どこにも……」
「本当にそうですか?」
「えっ」
「私がそうであったように、文人様と共にいたいと願った人は他にもいるのではありませんか? 特に女性の方で」
「なんで女性?」
「だって文人様は困っているレディーを見捨てておけない方ですから。私を助けてくださった時だって、わざわざ路地裏まで駆けつけてきてくれたではありませんか。見ず知らずの私を助けるために」
「そういえばそうだったな」
「私以外にもお友達の女性はいませんか?」
「友達の女性……」
スマホを確認する。
フレンドリストの大半が男だ。
しかし、シャーロット以外にも二人の女がいた。
マリナとリゼルだ。
「マリナ様とリゼル様はお強いですか?」
「ああ、強いよ。マリナの近況は分からないが、リゼルは最近ソロで40まで上げたと言っていた」
「ではお二人にも頼みましょう! よほどのことがない限り引き受けてくださいますわ! 間違いありません!」
「いやぁ、いきなり声をかけるのは都合が良すぎるというか……」
「何を遠慮しておられるのですか! ええい、こうなったら私が代わりに入力してさしあげます!」
シャーロットが俺のスマホを奪って操作しようとする。
しかし、スマホはピクリとも反応しなかった。
「残念だったな。スマホは本人以外の操作を受け付けない」
「そういえばそうでしたわね……。ヘルプを熟読したのに忘れるとは不覚……!」
観念したシャーロットがスマホを返してくる。
「とにかくお誘いくださいませ」
「えー、でもなぁ」
「でももへちまもございません! 早くお誘いなさい!」
「あ、はい、すみません、今すぐ誘います」
シャーロットの迫力に負けて、俺はマリナとリゼルにチャットを送る。
その様を眺めながら、シャーロットは「よろしい」と満足げに頷いた。
「シャーロット、前に比べて性格も強くなったな……」
「なっ……! そ、そんなことございません!」
「いやいや、あるから」
「ございません!」
「ある……というか、なんだこのやりとり」
俺達は声を上げて笑う。
その時、スマホがブルブルと震えた。
マリナとリゼルの両方から返事が届く。
『今すぐに行きますデース! 今度は私が文人を助けマース!』
『ダンジョンにいるけどなる早で戻るからちょっと待ってて』
「本当に快諾してくれた……」
「当然ですわ!」
シャーロットは「ふふん」とドヤ顔をした。
◇
マリナとリゼルが来たので、テーブル席に移動した。
皆で丸いテーブルを囲んで、メシを食らいながら話す。
「文人、ますます強くなりましたネー!」
「追いついたと思ったら前よりも差が開いていて笑っちゃうよ」
PTに加わったマリナとリゼルが俺のレベルに驚いている。
「二人も大したものだと思うよ」
マリナのレベルは56で、リゼルは45になっていた。
「マリナ、イマジンムーブは使えるようになったか?」
「使えないデース!」
何故か誇らしげに言い切るマリナ。
それに対してシャーロットとリゼルが目をぎょっとさせる。
「イマジンムーブなしで56までソロで上げたのですか!?」
「凄すぎでしょ! 文人より凄いんじゃないの!?」
「俺もそう思うよ。マリナは規格外だ」
「文人には敵わないのデース! それに私は雑魚専なのデース! ボスとは戦っていないのデース!」
しばらくは交流もかねて雑談に耽った。
どこで狩りをしていただとか、どんな戦い方をするだとか。
あと、何故か、俺とはどうやって出会ったのかも話していた。
「雑談はこのくらいでいいだろう」
話が落ち着いたところで、俺は本題に入った。
「チャットでも言った通り、塔の50階にいるボスを倒すのに力を貸してほしい。かなり危険だが本当に大丈夫か?」
「大丈夫デース! 軍人は困っている仲間を見捨てないのデース!」
「私も問題ないよ。文人には強くなった姿を見てもらいたいし」
「念のために言っておきますが私も問題ございませんわ。リゼル様と同じで、私も強くなった姿を文人様に見てもらいたいので」
「オーケー、なら誰がどの敵を担当するか決めよう」
俺は敵の特徴を事細かに伝え、三人と作戦会議を行った。
この世界に来てから初めてとなるチームミーティングだ。
仲間の存在が頼もしいと思ったのは生まれて初めてのことだった。
◇
そして、次の日――。
朝、準備を済ませて塔の前で合流した。
「塔はかなりの長期戦になる。物資は用意したか?」
「見ての通りよ!」
リゼルがパンパンに膨らんだバックパックを地面に置く。
ヒデヨシキャッスルに行った時のマリナみたいだ。
「私だけ〈マジックボックス〉がないとか、なんだか悲しいんですけど」
「安心してくだサーイ! シャーロットが持ってくれマース!」
「お任せくださいませ」
シャーロットがSiriNに命じ、リゼルのバックパックを〈マジックボックス〉に収納しようとする。
するとリゼルのスマホにその旨の通知が表示された。
他人のアイテムを勝手に収納することはできないのだ。
「これでよしっと!」
リゼルが承諾した瞬間、彼女のバックパックが消えた。
「ありがとー、シャーロット!」
「問題ございませんわ。必要になったらお申し付けください」
「りょーかい!」
「皆、忘れ物はないな?」
最終確認だ。
三人は頷いた。
「勝ちに行くぞ!」
「「「おー!」」」
最近は勝てる気がしなかったが、今日は負ける気がしなかった。
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