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元お助けキャラ、死んだと思ったら何故か孫娘で悪役令嬢に憑依しました!?  作者: 冬野月子
第8章 カーニバル

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05

 モーリスは真っ直ぐ湖へと向かって歩いていく。

 言い知れない恐怖が胸の中に湧き上がった。


「あの、モーリス様」

「この湖は濃い色をしているでしょう」

 正面に視線を送ったまま、モーリスは口を開いた。

「ここはとても水深が深いんです。夏でも水温が低くて落ちたら助からないと言われていて、遊泳禁止となっています」

 それはゲームでも出てきた記憶がある。

 危険だからボートも禁止されていると。

 でも、どうしてそんな話を……。

 心臓が痛いほどバクバクする。


「だから、この湖の中なら誰にも俺たちの邪魔はできないんです」

「……モーリス……さま」

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ、冷たいですがすぐに分からなくなるでしょうし、俺は絶対貴女を離しませんから」

 モーリスは私に笑顔を向けた。


(……心中、するということ?)


「や……」

「結婚式が挙げられないのは残念ですが。ああ、せめて誓いの口付けだけでもしましょうか」

 モーリスの顔が近づいてくる。

 逃げたいのに身体が――マントで包まれて、何より怖くて動かせない。


「マリアンヌ様……」

「シャー!」

 突然目の前が真っ黒になった。

「くっ何だ!?」

 黒い影がモーリスの顔を襲っていた。

 それを振り払おうとして彼は腕を上げ――私は地面へと落ちた。


「っ」

 背中から落とされて、くる、と思った痛みはけれどこなかった。

 一瞬のことだったけれど、地面に着こうとする瞬間、ふわりと浮いたような気がした。

(これ……守護の術?)


「くそっ!」

 気を取られているとモーリスの声が聞こえた。

 見ると、黒い鳥が彼を襲うようにその周囲を飛び交っていた。

 あれは……セベリノさんがくれた影だろうか。

 目の前には、モーリスと私の間で、私に背を向けて立つ黒猫の姿。


(守ってくれているんだ)

 小さな背中がとても頼もしく見えた。


「このっ!」

 モーリスが鳥を振り払うと私へ向かってきた。

 セレストが威嚇の声を上げると、モーリスの視線がセレストへと向いた。

 その目に憎しみの色が宿る。


「危ない……」

「リリアン様!」

 その瞬間、モーリスの身体が横へと吹き飛んだ。



「リリアン様!」

「……セベリノ、さん」

 息を切らして駆け寄ってきたセベリノさんが私の前に膝をついた。

「大丈夫ですか」

「は……い」

「怪我は?」

「いいえ」


「良かった――」

 大きく息を吐くとセベリノさんは私を抱きしめた。


「遅くなって申し訳ありません。間に合って良かった」

「ニャア!」

 驚いたようにセレストが声を上げた。

 その声のした方を見たセベリノさんは軽く目を見開いた。


「これは……」

「動くな!」

 離れた所から声が聞こえた。

 見るとモーリスの身体を拘束する男性がいる。

 あれは……カイン?


「彼もリリアン様の後を追ってきたようですね」

 私の視線の先を見てセベリノさんが言った。

 ゲームでは既に見習い騎士だった、力のありそうなモーリスを、カインは簡単に黒い紐で縛り上げていく。

「あの紐は魔術によるもの。相当術を使いこなすようですね」

 そんなカインを見てセベリノさんが言った。



 モーリスを縛り終えたカインがこちらへ来た。

「マリアンヌ様、ご無事ですか」

「ええ、ありがとうございます」

「……ところで、今『リリアン様』と……」

 セベリノさんをちらと見て、再び私を見る。


「貴女は一体……」

「この方はリリアン様」

 セベリノさんがそう答えて、視線をセレストへと移す。

「そこにいるマリアンヌ様のお祖母様ですよ」


「お祖母様?」

「マリアンヌ?」

 私とカインの声が被った。


(え、マリアンヌ……?)


「ニャーア」

 セレストの鳴き声が湖畔に響き渡った。


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