07
「んー、幸せ……!」
上の甘いビスケット生地はサクッとして、そして表面にまぶされた大きめのザラメのザクザクとした食感もいい。
下の部分は、外はもっちり、中はふわふわで絶妙なバランスが最高!
このメロンパンはこれまで食べた中でもかなりの上位に入るわ!
午前の授業は集中できなかった。
カミーユにメロンパンの入った袋を持っていてもらって良かった。
自分で持っていたら――きっと、もっと集中できなかったと思う。
昼休みになると私は飛び出すように教室を出て中庭へとやってきた。
そうして早速、後からついてきたカミーユからメロンパンを一個受け取るとかぶりついたのだ。
お行儀? そんなものメロンパンには必要ないわ!
「これは確かに美味しいですね」
私と違い、食べやすい大きさに手でちぎったパンを口へ運んでいたカミーユが言った。
「……甘すぎないか」
隣に座り、私同様パンにかぶりつき一口食べると眉根を寄せてそう言ったのは殿下だ。
なるほど殿下は甘いものは苦手なのか。
しかめ面をしながら、それでも二口目を食べようとしている姿はとても辛そうだ。
「殿下、苦手でしたら無理に食べなくても……」
「でもアンは好きなんだろう」
殿下は私を見た。
「とても幸せそうに食べている。……きっと、本当はとても美味しいものなのだろう」
「食の好みは人それぞれですから。殿下のお口に合わなくても仕方ありませんわ」
「――アンが好きなものは僕も好きになりたいのに」
ため息をついてメロンパンから口を離すと、殿下は黙々と食べ続けているカミーユを恨めしげに見た。
「アシャール家は皆甘いものが好きですからね」
殿下の視線を受けて、食べるのを止めてそう答えるとカミーユは私を見た。
「マリアンヌ、そんなに急いで食べなくともパンは逃げませんよ」
だって朝からずっと我慢していたんだもの!
構わず再びかぶりついた私にくすりと笑みをもらすと、カミーユは長い指をこちらへ伸ばしてきた。
「ほら、ついています」
口元についていたらしいパンくずをつまみ取ると、カミーユはそれを自分の口へと放り込んだ。
「カミーユ!」
声を荒らげて殿下が立ち上がった。
「お前、何をした……!」
「口についたのを取っただけですよ」
「あんな……所についたのを食べるなんて!」
「――カミーユ様って、お母さんみたい」
私が内心思った事をシャルロットがぽつりと呟いた。
「シャルロット!」
ぱたぱたと足音と声が聞こえた。
「買ってきた……よ……」
紙袋を抱えて走ってきた、シャルロットの幼馴染で攻略対象の一人でもあるディオンが私たちを見て固まった。
「ありがと、ディオン」
シャルロットは立ち上がると固まったままのディオンの手から紙袋を取り、私たちへと振り返った。
「メロンパンだけだと物足りないですよね。サンドウィッチも食べます?」
「え……ちょ、ちょっとシャルロット!」
ディオンが慌ててシャルロットの肩を掴んだ。
「王子様たち相手に何してるの!」
「何って。お昼食べてるのよ」
「いや何で君が一緒に?!」
「何でって……」
シャルロットは私を見た。
「お友達だから、よね」
「ですね」
私がそう答えるとシャルロットも頷いた。
「友達!?」
ディランは悲鳴のような声を上げた。
「え、だって侯爵家の……いやそもそも、マリアンヌ様とシャルロットは揉めてて……」
「あれは揉めていたのではないし、それに今のマリアンヌ様とは何の遺恨もないもの」
「そうね。私は……何も覚えていないから、『以前のマリアンヌ』がシャルロットの事をどう思っていたかは分からないけれど。今の私は、シャルロットのことは好ましく思っているわ」
同じ元日本人というだけでなく、彼女のサバサバとした性格は好感が持てるのだ。
「私もマリアンヌ様のこと、好きです!」
笑顔でシャルロットもそう言った。




