第83部 人狼の女戦士 アランと綾香!
霧香=姉の霧の文字を、妹の香の文字を取って略したものだ。四人の名前になった。
1954年7月(昭和29年)日本・宮城県 牡鹿半島
今日の戦いは、相打ちというか、7対3の負け越しのようだった。共に戦力が残っていない。人狼の巫女はアラン一人になっている。ドロンと女は捕虜に出来た。人狼兵は全滅させたし、かの悪徳兄弟もイカレ所長の妻に火炙りの死刑になってしまった。
「さ! 今日の戦闘は終わったわ。敵さんは一人だもの、手も足も出ないわね!」
シビルが感想を言った。
「あら、シビルさん。手も足も出ないのは、こちらも同じですわ」
クライが食らいつく。桜子は思わしくない戦況で、とにかく巫女の安全優先を考えて作戦を立案する。
「ねぇ、シビルとクライ。この戦いはどういう意味があるのかしら」
「それは解らないわよ。あのインチキの研究者の娯楽でしょうね」
「シビル、それは言い過ぎよ。桜姐さんの家族はたくさん怪我をしたわ。死人も出ているのよ。簡単に娯楽だなんて言わないでくれるかな?」
「ごめんなさい。決してそのような事を考えてはいないわ。でも、他にね?思い当たるような事が、浮かばないのも事実よ」
「ドッカ~~~ン」
遠くで花火が夜空で破裂するような音が響く。巫女たちは驚いてテントから全員が飛び出した。
「ドッカ~~~ン」
「ドッカ~~~ン」
どうもアランが空を飛んで、花火もどき? で、遊んでいるかの様子だった。もしくは何かの合図か? そう思った瞬間、澪霧は捕虜の二人を見に行った。
「もう、なんともないわ」
二人の芋虫の姿を確認して、
「大人しく芋虫で居てくれるかな。出来るだけ殺したくはないからさ。お願いね」
「バーろう! 大人しく出来るか。晩飯を出せ!」
「いやよ、噛みつかれるもの。勘弁よ!」
この日は慰労会は何もない。機動隊の怪我の治療で騒がしいだけだった。
翌日。頭がバカになっていたヒグマは、無事に元のカムイコロに戻った。そして、メシさえたくさん食べられたら、直ぐに戦えると言った。頭の包帯は、他の巫女を気遣ってか、自分で外している。
「さて、巫女のみなさん。相手は巫女の一人ですので、戦いは止めて撤収したいのですが、どうでしょうか」
「こらぁ、木之本。昨日みたいな事は言うな。第一に刑事課の課長はどうしたんだい。居ないのかね」
「はい、課長は昨晩から敵情視察に出ております。もう少しで帰るでしょうか」
桜子はどう言っていいか分らずに、署長に噛みついたのだ。怪我人も多い。
「そうだね、怪我人から撤収させる方がいいだろうね」
そんな弱気の桜子にカムイコロは、
「俺は残って戦うぜ。昨日のお礼をしたいもの」
「桜子さん、残った隊員も合わせて掃討作戦を行いますか。もう、早く全員を逮捕して帰りたですね」
「ドッカ~~~ン」
昨晩と違い地上で爆発した。アランの報復攻撃だ。ドロンと女の檻の横で最初の爆発だった。昨晩は落ちる時間と爆発のタイミングを計る実験だった。
澪霧は、捕虜が心配だからと直ぐに向かうが、直ぐに2発目が投下される。
「ダメよ~、みんな逃げて~~」
「ドッカ~~~ン」
檻に命中し二人はほぼ瀕死状態だった。カムイコロはそんな二人を抱えてテントまで運んだ。
「あんたらが死んでも構わないわ! でもね、私たちの目の前では死なないでね」
カムイコロは優しいのか? これで人質が取り返される心配が無くなる。敵は一人だけとなった。
だが、容赦ない爆撃が続いた。空からは、私たち巫女の動きは良く見える。何処に逃げても空爆される。
霧香の四人は散り散りになり、アブソリュート・カルテットにはなれなかった。
「ドッカ~~~ン」「ドッカ~~~ン」
「ドッカ~~~ン」
容赦なく爆弾は降り注ぐ。少し間が空いた時は爆弾の補給に降りた時だ。少しは反撃の時間が出来る。
「ほら、みんな!集まって!」
綾香が四方に叫ぶ。澪霧から、彩香から、沙霧と順に集まる。
「さ、反撃するわ、準備はいいかしら!」
「いつでもよ!」
「フュージョン!」
「フュージョン!」
「W、フュージョン!」
アブソリュート・カルテットが誕生した。同時に爆弾がすぐ横で4回爆発した。
「ドッカ~~~ン」 「ドッカ~~~ン」
「ドッカ~~~ン」 「ドッカ~~~ン」
「きゃー! もう堪んないな~。洋服だったらマル焦げになっていたわ」
「そうね、この鋼の姿も捨てたものでもないわ。」
「さ! 反撃するわよ」
「アブソリュート・カルテット!戦闘開始~~~!」
「アクア・バード・スプラッシュ!」「ファイヤー・バード・スプラッシュ!」
「アブソリュート・カルテット!!」
「ツバイ・ファイヤー・スプラッシュ!」
アランが飛翔する空に向けて魔法が放たれる。しかし、全部が躱されて当らない。
「ドッカ~~~ン」 「ドッカ~~~ン」
魔法が爆弾で消された。それどころか、余計に爆弾が降ってくる。
「ドッカ~~~ン」 「ドッカ~~~ン」
「ドッカ~~~ン」 「ドッカ~~~ン」
「キャ~~~~~~ッ!!!」
「ドッカ~~~ン」 「ドッカ~~~ン」
あまりにも酷い爆撃で、アブソリュート・カルテットが強制解除になってしまった。
「もう、だめだわ! 魔法も届かないし、カルテットも解除したわ」
綾香は、
「私にみんなの力を頂戴!」
「どうするのよ」
「みんな~、集まって~~~~」
集まれるだけの巫女が集まった。
「みんな、私に魔力を送ってちょうだい。」
巫女の全員から、たくさんの輸血をしてもらった綾香だ。全員の巫女の力はすんなりと受け渡しが出来た。
「ありがとう。とても力が増えたわ。後は、お母様ね!」
綾香は飛んで母の元に行く。
「おや、綾香! 空が飛べるのだね?」
「ええ、そうよ、お母様。今からアランを落してくるから、お母様の力を送って頂戴ね。絶対に負けないわ!!」
「綾香! 送るよ~」
「ツバイ・ツァオベラー!」
綾香は、カルテットと同じ両手両足が刃物になり、鋼鉄の身体へと変身した。四本のソードを、平たくて大きいい翼に仕立てて飛んでいく。
「綾香!頑張れ~~~!」
巫女たちはもちろん、機動隊も署長と課長の二人も応援する。
綾香はアランが飛んでいる空には直ぐに到達した。が、アランは当然の如く逃げて回る。最初の魔法は綾香だ。
「アクア・バード・スプラッシュ!」
アランは相殺魔法で綾香の魔法を打ち消す。これが3回続いた。
「ファイヤー・バード・スプラッシュ!」
「アクア・バード・スプラッシュ!」 「ファイヤー・バード・スプラッシュ!」
「アクア・バード・スプラッシュ!」 「ファイヤー・バード・スプラッシュ!」
アランに向けた攻撃は、ただ単に誘導的な使い方だった。綾香は直ぐに本星の特大魔法を放った。
「ツバイ・ファイヤー・スプラッシュ!」
しかし、アランは手持ちの爆弾を空に放棄して、綾香の魔法を空中分解させた。
「このう、アランめ! こしゃくな~~~」
「はは~んだ、攻撃は当らないよ~~~だ!」
綾香は立て続けに2回の魔法を放つ。
「ファイヤー・バード・スプラッシュ!」
「アクア・バード・スプラッシュ!」
アランは爆弾の放出と相殺の魔法を放つ。
「ファイヤー・バード・スプラッシュ!」
「おら。アランに、ごしっぱらけるさー。アランにおれさま、ほろぐー」
「私はアランに腹が立ったわ、アランに雷を落としてやるー」
「ツバイ・ウインダム。ツバイ・ライデ~ン!!!」
アラン目がけてもの凄い風に轟音と光を纏った幾筋ものカミナリが落ちる。
綾香は続けて特大魔法の詠唱にはいる。
「綾香が命じる。風よ我の僕しもべとなりて、かの女を討ち落せ!ツバイ!
ウインダム!! ファイヤー・バード・アクア・スプラッシュ!」
「アラン! 負けたり~~~」
綾香はアランに向けて、合成魔法のスクリュー魔法を、呪文つきで放った。アランは完全に防ぐ手だても無く、まともにカミナリと魔法を食らった。
「ギャーーーーー!」
アランは真っ逆さまに落ちていく。
「は~~い、これで終わりね~~~」
落ちた処は、刑事課の課長と白川課長が待機していた。
「御用だ!!!」
「・・・・・・・・・」
アランは虫の息で、直ぐに救護テントに運ばれて治療を施された。
生存者は、粉々になった本部のテントに集まった。
「戦闘! 終了!!!!! みなさん、終わりました~~~」
「やったー!」
「よく戦った。巫女のみなさん、ありがとう!!」
「沙霧さ~ん。よく頑張ったね! 俺はもう朝から生きた気がしなかったよ」
穣は思いっきり沙霧に抱きついた。
「あらあら、穣さん。大丈夫でしたの?」
「その言い方は無いだろう。こう、もっと、よい言い方があるだろう」
「穣の応援で、無事に勝利出来ましたよ」
「うん、良かった。呼び捨てかい!!」
署長と刑事課の課長は、一番偉い白川課長へ報告する。
「白川課長! 奥様の活躍で戦闘が終了いたしました」
「課長! 直ぐに引き上げましょう」
白川課長は、石巻の臨時駐屯所に連絡して、救護班と車の手配を依頼する。序に戦勝祝いの準備もするように言い伝えた。
「俺ら。負傷兵はどうしてくれるんだ~い!」
と、恨みの言葉も聞こえるが、無視された。
1954年7月(昭和29年)日本・宮城県・石巻
ここにはホロと亜依音も滞在していた。隊員とホロはここに駐屯地が在る事を知らなかった。二日前に設営されたばかりだからだが、白川長官が命じて造らせていた。
その白川長官に戦闘終了の連絡が入るのである。
「長官、勝ちました。勝ちましたよ。全員を無効化にしました」
「そうか、よくやった! おめでとう!」
「はい、ありがとうございます」
「課長! あの、イカレとサイコパスの二人はどうした?」
「あ! すみません。忘れていました。・・・・」
「そうか、やはり連絡が行って無かったのだな。あの二人は火刑になったそうだ。
はは、脅かしてすまなんだ!」
「か・け・い?」
「そうだ」
「お父さん、いじめないで下さい。亜依音は無事でしょうね?」
「ああ、ワシに抱かれて嫌がっているわ。鳴き声が聞こえるだろう?」
「お父さんは、孫までいじめるのですね。酷過ぎです・・・」
夕方になり、全員が戦闘域から離脱して、ここ石巻に到着した。ここには気が触れた約一名のアメリカ人がいる。アメリカ海軍の捜索は、明日から行われるという。
戦闘地域は、来年度の予算で原発の敷地へと変貌する。
白川長官は、巫女たちを集めてお礼を言う。署長と課長も呼ばれている。
「今回はみなさんのお蔭で、人狼兵の討伐が出来ました。御礼申し上げます」
「それと、みなさまには、石巻温泉でゆっくりとお寛ぎ下さい。穣が費用を出しますので、ご遠慮なくお過ごしください」
「わーーい!」
巫女たちは黒い服から埃を立てながら、温泉宿へと走って行った。
「さてと、署長と課長。二人には大変苦労をかけた。勲二等の昇級を与えよう。他に何かあるかな?」
「はい、勲二等とは? 署長よりも上には行けません。どうしてですか?」
「木之本君は、もう退官だ。退職して悠々自適に暮らしたまえ! それから、課長は生活安全課の署長になってくれ! 今後も尽力を頼むよ!」
「はい~~。」
「二人とも温泉宿で休んでくれたまえ!」
「はい~~。」
巫女たちが世話になる温泉宿は、風呂のお湯は無くなり、障子は破れて破損、枕は庭の泉水の中まで落ちていた。宿が壊れないだけでも良かったほどだった。この温泉宿は、半年後からは改築・増築で大きくなり繁栄が続いた。
「ちょっと! みんな。私のふくらみを返してくれないかな。服がダブついて着れないでしょう? 第一に貴女たちだって大きくなったら、ブラが着れないでしょうに・・・。? イヤなのね!! もう強制的に戻してもらうわ!」
「澪霧が命じる。私のふくらみを、かの女どもより取戻したまえ・・・」
「お・・・・ッ・・・・・パイ!!」
「キャー、ギャー、キャン、イヤン」
「誰か一人多いわね。でも、もういいわ。前よりも大きく膨らんだし・・むふふ!」
「母も参戦よ! これは母娘の戦争よ!」
杉田家の全員が、北海道に帰る。霧への戦闘終了の報告と亜依音の紹介に。




