第71部 ブルートパーズとヒスイ の秘密?
この章はとても長いです。楽しく書きあげました。みなさん頑張って読んで下さい。
1952年8月(昭和27年)ロシア・イルクーツク
翌日の朝は全員が寝坊している。朝食ならぬ昼食となる。ドンパチを行った翌日というのに、危機意識が無いのだろうか。
「あれだけ逆襲したのよ。もう攻撃は無いわよ」
「そうかな~。それならばいいけれども」
「ノック!ノック!ノック!」
「はい!」
「こちらに、木之本さまはいらっしゃいますか?」
「署長! ルームサービスです。来てください」
「ほぇ?」
「ウランバートルのウルガさまより、ご伝言でございます」
そう言って二つ折りの紙切れを署長に渡した。
「ありがとう。これを!」
「はい、失礼します」
「ところで、なんで君たちが男の部屋に集まっているんだい」
「いいえぇ、別段要件はございません」
「彩香~、あったわよ~。このジュースでいいの?」
「いや~ん。黙っててよね。ばれたじゃない」
「なんだ、冷蔵庫荒しか! 好きなだけ持っていけ!」
「署長、伝言のメモにはなんと書かれていますの?」
「ウルガからだね。わぉ! ホロとターニャが無事に戻ったと!」
「えぇ? 本当ですか! 良かったわ。直ぐみんなに知らせましょう」
巫女たちはバタバタして出て行った。冷蔵庫のお酒以外は無くなっている。署長は取り急ぎ、ウランバートルへ電話を掛けた。
「あ、ワシは日本国の木之本という者だが・・・・・・」
「はい、ウルガさまですね・・・・・・・」
署長は全員を集めて、
「これよりモンゴル・ウランバートルへ行く。またヘンティー山脈に戻り調査の続きを行う。よろしいか?」
「途中で両親とも合流するのでしょう?」
「もちろんだ。桜子さんの力も必要だもの」
「それに、・・・・」
「それに?」
「おう、それに彼のハバロフスク所長から親書が届いている」
「で?!」
「モンゴル・ヘンティー山脈方面で待つ。道案内は戻しておいた」
「これは、ホロお婆さんのことだろう。巫女の真実を発表したいらしい、というのだ。行かねばなるまいて!」
「そうだね!」
木之本は、白川課長、刑事課の課長と相談して、機動隊は45人を帰国させる決定を下した。機動隊の中から5人を選抜する。過酷な面接試験が行われた。
若い巫女の8人を相手に、2時間のスクウェアダンスを行う!というのだ。ホテルの先にある広場で、テントやテーブルを並べて、酒も並べられている。
「いいか、今からノンストップでスクウェアダンスを踊ってもらう。2時間だぞ。いいか? 最後まで残った5人を連れていく」
「署長! 1時間に短縮して下さい、お願いです」
「ならぬ。脱走は許さんぞ。魔法で結界を張る。36㎡だ! 頑張れや」
クリナとアナスタシアは言われたとおりに、結界を張る。参加する巫女8人は、クリナ アナスタシア 沙霧 澪霧 デルフィナ ソフィア 綾香 彩香。
「さぁ、いくで~~~~」
「ばこ~~ん!」
開始の鐘が鳴った。総員の58名が一斉に踊りだした。結界は巫女の二人も踊るから開始早々に消滅しているが、ロープを張ってもいたから男どもは気がつかない。
さすがに選りすぐりの50人だ。30分でも脱落しない。なんたって若い巫女が相手だから、全員が張り切る。会場の外からは拍手喝采が起こる。転ぶ男や投げ飛ばされる巫女すらいる。
1時間を過ぎて大量の脱落者が出る。疲れた隊員には、ビールが出された。そして酔いが直ぐに回るから、負け惜しみの、ヤジ! が飛び交った。
「ヒューヒュー」
「ヒューヒュー」
「ヒューヒュー」
祭りは佳境にはいる。
「残り時間が30分になります。これからは飛び入り大歓迎でございます」
シビルとクライが近くにいる男どもを、見境なく会場に放り込んだ。この中には白川課長もいた。
会場のロープはだんだんと引き絞られて、狭くなっていく。しかし、誰も気がつかない。残り10分で決着がついた。機動隊の隊員が5人になった。飛び込みの残った男は瞬時に放り出される。
「おめでとうございます。この5人にはモンゴルへの豪華な旅行がプレゼントされます」
最後のイベントに、巫女らによる素晴らしいフィナーレが行われる。
「最後のフィナーレでございます。では・・・」
澪霧が発表する。
「これより会場の男性を見事に消してご覧にいれます。消えましたら拍手喝采をお願いします」
巫女らは残った5人と白川課長を中央に集めて、8人で手を繋ぎ囲い込む。そして8人は周りを全速力で反時計周りに走った。最後に、
「それー! ヤー」
大きい掛け声とともに両手もあげた。ピンクの文様が浮かんで、見事に6人は掻き消えてしまった。そして、空から5人が落ちてきた。巫女たちはその5人を受け止める。
??????
一人足りない。そう白川課長が居なかった。
「おや~? 一人足りませんね、ではもう一度」
「・・?・? それ~!!!」
7人の巫女が再度掛け声と共に、両手を高く指し伸ばした。すると、
空からは、沙霧が綺麗な花嫁衣裳で、白川課長がキリッとした花婿衣裳の姿でゆっくりと降りてきた。とても鮮やかなロシアの民族衣装だった。
「ご婚約! おめでとう!」
「おめでとうございま~す」
「ヒュー、ヒュー」「ヒュー、ヒュー」「ヒュー、ヒュー」
隊員どころか、教授や課長、ニキータやカムイコロも出し抜かれたように驚いて見ていた。
「みんな~、ありがとう~~~」
「なんだこりゃ~!」
幸せな二人の空にピンクの文様が浮かびあがる。そして、綺麗な花が多数降ってくる。
「わ~ぁ、きれい!」
盛大な喝采が沸き起こった。そのまま婚約発表会場になっていく。ホテルからはさらにお酒やジュースが届いた。簡単なおつまみも届いた。そして、そのままホテルの宴会場に場所が移る。
「あぁ~あ、ここに両親もいたならな~~~~~」
妹の二人が一番残念に思ったのだった。そしてこうも思った。
「両親には婚約発表のお話がたくさん出来るわ!」
「オヤジ! なんでここに居るのさ。いつ来たんだい?」
白川警視庁長官が会場に来ていた。それもこれも全部がこの長官の指示だった。
「ラク~~ン!」
1952年8月(昭和27年)モンゴル・ウランバートル
無事に慰労会も兼ねたイベントが終わった。みんなは良い思いでになったであろうか。
これよりウランバートルへ向かう。ウランバートルからさらに東へ250キロのヘルレン川まで行く。ここには彼のハバロフスクが待っている。今でもイカレ所長と呼ばれているだろうか。チンギス・カンのオルド跡とみられるアウラガ遺跡が目的地だった。
ハバロフスクがいう、巫女の秘密とは?
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アウラガ遺跡は13世紀にチンギス・カンの霊廟と目されている。この近くに
チンギス・カンの墳墓が存在する可能性が高いという。
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屈強な機動隊の5人が同行する。これほど頼もしい事はなかった。へなちょこ老人の教授や課長、署長は力仕事は出来ないのだ。隊員の残りは白川警視庁長官と共に帰国した。また長官は有能な考古学者を二人連れて来て置いていった。一人は吉本という男だ。もう一人は本田女史といった。
これで全員がトラックに分乗して、荷台に乗り運ばれた。2台目、3台目等は先頭の車の埃をたんまりと吸って行く事になる。これはこれで悲惨だろう!
途中で乗員の入れ替えがあった。各トラックには最低でも巫女二人が乗車した。そして埃が届かないくらいに、大きく車間距離を取った。巫女は逸れない為の通信兵になったのだ。
トラックは物資輸送も兼ねるので、5台が用意されている。
1952年8月(昭和27年)モンゴル・スフバートル
無事にモンゴル・スフバートルのホテルに到着した。後続のトラックとは30分ほどの距離・時間がある。
「私! いっちゃ~ん」
誰かが? 叫んでシャワーを浴びに走っていた。そう言いながら、巫女はどんどんテレポートしてホテルに着くのだった。
「私も、いっちゃ~ん」
綾香と彩香は両親の居る部屋に飛び込む。部屋の前で二人は脆くも涙目になっていた。
「お母様! お父様!」
二人は年甲斐もなく両親に飛びつく。そして泣きじゃくる。やや遅れて沙霧と澪霧も入ってくる。白川も一緒に入口まで来たが、家族に遠慮して自室に戻った。クリナとアナスタシアは、しめぼったい部屋へ、大声で入ってきた。
「お母様、お父様、ただいま到着いたしました」
こうして両親の元に6人の娘が揃った。もっとも、泣いているのは、母の桜子も同じだった。
直ぐに娘らのマシンガントークが始まった。6人も居るから止まる訳がない。でも、両親は優しく娘の髪を撫でながら、細目で見つめて話を残らず聞いた。
「おうおう、そうかい。沙霧! おめでとう。良かったね!」
「うん、ありがとう!」
「でね、妹の二人はね、もう少しで死ぬところだったのよ。それで・・・・・」
「うん、無事で良かったね。本当に無事で・・・・・」
桜子の嗚咽が気持ちよく聞こえる姉妹だった。父の智治も泣いていたが・・・・。
まだ話し足りない娘たちだったが、夕食の時間になり呼ばれて食堂へ移動した。
「さくらちゃん、身体はもう何ともないでしょうか」
安部教授は親愛の情を込めて、学生の時の呼び方で声をかける。
「はい、阿部教授!」
桜子も同じように学生の時の呼び方で返事をする。
みんながみんな、無事に生きている事を報告した。夜中近くまで楽しいひと時が続いた。
同じ食堂にはテーブルに着いている三人の姉妹がいた。いつまででもお酒やお茶を飲んでいた。
「あなた、ロシアンティーは何杯目よ! もうジャムは無くてよ」長女
「おねえぇこそ、お酒は飲み過ぎよ」三女
「仕事する気なの? どうなのよ!」次女
「いいじゃないの。今日ばかりは幸せな時間を与えてあげましょうよ。ね?」
三女が優しい言葉でつぶやいた。
こうして旅の疲れもどことやら。楽しい時間が過ぎて行く。
1952年8月(昭和27年)モンゴル・ウランバートル
スフバートルからウランバートルまでは、強行突破がなされた。荷台の全員でなくとも悲鳴を上げた。
ウランバートルでは、無事に帰ってきたターニャとホロ。そしてウルガの三人が出迎える。ゴルバチョーフ一家は再会で無事を喜んだ。ホロお婆さんに会えた双子の姉妹らも当然喜んでいる。
ゴルバチョーフはターニャと一緒に、
「今回はターニャの為にご尽力を頂きました事に感謝いたします」
「ありがとうございます。私の為に大きな怪我までさせてしまいました。申し訳ありません」
ターニャは、桜子や綾香と彩香、そして、気絶した? 安部教授に向かい何度も頭を下げてお礼を言った。
そして白川を見て?
「まぁ、いい男だわ!」
「なにを言うのよターニャさん。当然の事よ。とにかく無事で良かったわ!」
「あぁ、すみません。不謹慎なことを申しました」
話がかみ合わないようだ・・・。
ゴルバチョーフはお礼の晩さん会を開いた。誰もかれも、戦い以上に車で揺られて痛い目にあったのだ。そういった事情で時間は短く設定してあった。
今日ばかりは、家族単位で部屋割りがなされ喜んでいる。ゴルバチョーフ家はもちろん杉田家もしかり。
一番喜んだのは木之本家だっただろう。初めての親子三人が揃ったのだから。
デルフィナは、綾香や彩香、そして沙霧と澪霧。この四人が両親に甘える姿を見て感化されたようで、デルフィナ自身から両親に接するようになった。兎に角どこまででも不器用だったが・・・・。
残念なのがその他大勢?というところか。遅くまでヤケ酒が続いていた。
クリナとアナスタシアは、イラニという小さな村に捨てられていた。そして不明ながら、ウランバートルに売られたようだというが、小さかった二人には分からない。
翌日になり一行は、ハバロフスクが待つ、チンギス・カンのオルド跡とみられるアウラガ遺跡へ向かうのだが、
「途中で、クリナとアナスタシアの出生を調べにイラニ村に寄る。ここは二人が居た処だ。何か手がかりの一つでも見つけたい」
木之本署長が言う。
「ええ!!本当ですか? ここには育ての両親が居ます。ぜひともお願いします」
「よかったね、クリナ。アナスタシア」
「うん、とてもうれしい!!です」
イラニ村は小さな村で住人は本当に少ない。以前はゲルが多数在ったというが、今ではゾド(寒雪害)と呼ばれる異常気象で遊牧の仕事は出来ず、遊牧民は全員がウランバートルに引っ越してしまっていた。
「もうどこにゲルが在ったかが判らないわ」
「そうね、あの山は木々がたくさん立っていた処だと思うんだ」
「でも、もう苗木のような木しか無いね!」
「ほんと、寂しい所だったんだ」
身体が大きく成長した二人には、故郷がとても小さく見えた。今までが大きな都市を見てきた所為なのだろうが、やるせない二人だった。
「あそこに老人が居るね、訊いてみようか」
ルカが遠くで歩いている人を見つけて言った。しかし日本人には見えないほどの遠くだった。ルカは署長に何か話している。
「私たちだけで行くわよ。さ、トラックに乗ってちょうだいな」
「はい、お願いします」「・・・ます」
つちけむりを立てて進むトラック。クリナとアナスタシアはどことなく落ち着かない。クライとシビルは声を掛けずに、そおっとしておく。
「あのう、少しよろしいでしょうか?」
歩いていたのは老婆だった。クリナとアナスタシアはトラックから降りて声を掛けた。老婆は黙って二人を見ている。クリナとアナスタシアの二人は怪訝そうに老婆を見つめる。
シビルが二人に声を掛ける。
「クリナとアナスタシア、どうしたの?」
すると老人は相好を崩して泣き出した。
「本当に、クリナとアナスタシアかい? もう大きくなって判らなかったよ」
「えぇ? お母様? お母様なの?」
「そうだよ、母だよ。お前たちよく帰ってきたね。とてもうれしいよ」
「ほら、この貧弱な胸を見なよ。お前が吸っていたおっぱいだよ。だからこんなに萎んでしまったね」
老婆の胸の乳房には少し大きいほくろがあった。このほくろで乳を飲みながら遊んでいた記憶が甦ってきた。こうなると、見知らぬ老婆も、在りし日の若い母に変身したかのように見えてきた。
「わー、お母さんだ。逢えてうれしい。もう二度と会えないと思っていたもの」
「うん、そうだよ。お母さん。逢えてうれしいよ」
クリナとアナスタシアは、老婆に抱きついた。そして泣き出してしまった。クライとシビルは顔を見合わせ、トラックをみんなの元へ走らせた。もちろん二人は置いていっている。
「署長! 偶然ではないでしょうが、クリナとアナスタシアの母親が見つかりました。全員で行きましょう」
「もう行っていいのかい? もう少し待って行こうじゃないか」
「そーだね!」
はやる気持ちをくじかれたシビルだった。
テントを設営し終わったその夜。ゲルでは、
二人の両親は老人とは言えない年齢なのだが、食が足りていなかったから老けて見える。クリナとアナスタシアは両親に、これでもか! というほどの食べ物を口に押し込んだ。
「もう、もう、よしておくれ! ジジババを殺す気かえ? グプ、グプ・・」
「ごめんなさい。たくさん食べて若くなってよ。切実な願いよ? 分かってちょうだい」
「明日から頑張るよ。もう勘弁しておくれ!」
クライとシビルは、この微笑ましい一家を見て、クスクスと笑った。
食後は大きめのテントに主だった者が集まり、二人の生い立ちの聞き取りがはじまる。
「えぇ、この娘は間違いなく私らの子です。オオカミが森に乳飲み子の二人を置いて行きましたので、連れて来て育てました」
「私たちは、オオカミの子なの?」
「いいや、れっきとした、人間の子だよ」
綾香と彩香は二つのティアラを二人の母親に渡した。
母は受け取り静かに見つめる。過去を思い出しているのだろうか。そして母は両手に持ったティアラを高くかざして、
「惨白き牝鹿の巫女よ。ここに顕現せよ。顕現せよ!」
「ピンイン、ネクズ・キヤン」
呪文を唱えた。この呪文に桜子が大きく反応した。桜子はばったりと倒れる。クリナとアナスタシアの母は、他の者を制止した。*)惨白き牝鹿-とは。さん・しろき・めじか と読むのでしょうか。
「すまないね~。堪忍しておくれ。急に呪文を唱えないと、コアイ・マラルは顕現してくれないんだよ」
クリナとアナスタシアの母は桜子の元へ行った。
「おうおう、この老いぼれは初めてだよ。始祖の巫女に会えるなんて。こんな幸せなことはもうないよ。もう巫女の顔になってるね」
桜子の顔を全員が見つめる。そこには母らしからぬ見覚えの無い顔があった。
「大丈夫だよ。このワシがついておるから心配はいらないよ。じきに目を覚ますからね。 おう・おう・・・おう、・・・・」
老母はうっすらと涙を浮かべる。そして桜子を起こした。
「コアイ・マラルさま。さぁ起きてください。コアイ・マラルさま!」
「なんだい騒々しい! このワラワを起こしたのは、そなたかい?」
「はい、あなたさまの娘にございます。お久しゅうございます」
「?そうか、娘か。それからこの二人が今の巫女だね」
「ほれ、クリナ、アナスタシア。挨拶をせい」
「えぇ? だってお母様。今ではその、お母様ですよ?」
「おう、それは偶然ではないぞ。ワラワはお前ら巫女を探していたのじゃ。だからこうして巡り逢えているのだよ」
「ティアラを持ってそこに立て! 今覚醒させる」
「アンバガイ・カン。 チャウジン・オルテゲイ。二人に命ずる。ピンイン、ネクズ・キヤン。今ここに巫女として目覚めよ! アクス・ファティーマ」
「綾香と彩香。このティアラをアンバガイとチャウジンに渡したよ。これからお前たちは、ピンクと紫の宝石を持つ巫女を探しなさい。綾香と彩香にはピンクと紫の宝玉が、今後の二人を導くであろう」
「・・・・・・・?」
「はい、お母様!」
「隣のテントにいるヒグマを呼びなさい。彼の者も巫女にしてカムイ・神である。カムイの力を覚醒させましょう」
「急いでヒグマを呼んできて。酒飲んでるから、冷たい水をぶっかけるのよ。いいわね!」
「そんな~」
「出来ないとは言わせないよ!!」
クリナとアナスタシアはクライに催促されてヒグマを呼びに行った。カムイコロはいきなりの呼び出しに少し怒っている。
「なんだい、気持ちよく飲んでいたの・・・・・・に、さ?」
「セングン・ビルゲ。こちらに来なさい。今、巫女として目覚めさせます。さ、セングン・ビルゲ 。ここに来なさい」
「カムイコロさん。いうことをきいて下さい。お願いします」
「ああ、分かったよ。これはなんの茶番だい?」
「セングン・ビルゲ。汝に命ずる。ピンイン、ネクズ・キヤン。今ここに巫女として目覚めよ! アクス・ファティーマ・カムイ!」
「さ、これであなたは目覚めたわ。もうヒグマではありません。人間ですよ」
「本当に人間になったんだな。ヒグマには戻れそうにないな」
「ええそうですよ、私のいとしい娘よ。セングンよ、メノウを探しなさい。直ぐに現れるから心配はいりませんよ。メノウで以って人間となります」
「メノウ?」
本田女史と吉本は、まぼろしを見ているような気持になっていた。いくら考古学の知識が有るからといっても、この摩訶不思議な事実は決して知りえる事は出来ない。貴重な体験だった。口を大きく開けて見ているだけだった。
「4個の宝石が揃ったらお前たちはとても強くなります。いいですか? 力を遣い過ぎたら転生します。気をつけなさい」
「それから、クライ、シビル。あなた方には二人の娘を育ててくれました。感謝の意を授けます」
「クライ、シビル。我は汝らに力を授ける。ピンイン、ネクズ・キヤン。今ここに巫女としての力を受けよ! アクス・ファティーマ!」
「これで結界の魔法が使えます。ご存じですよね。娘が使っていた魔法です」
「はい、コアイ・マラルさま。ありがとうございます」
二つのティアラの宝石は、いつのまにか輝いていた。
コアイ・マラルは眠るように静かに横たわる。と、みるみると顔が桜子に戻っていく。そののちに桜子は目覚めた。
「ヒグマ。あんたは私の娘だったんだね。もう嫌だよ。またまた娘が増えてどうしたらいいんだい。困ったものだよ・・・・・」
「もう、嫌ですわ! お母様。かわいい娘を可愛がって下さいまし!」
ここの全員が大きく笑った。転げまわって笑う・・。大きい図体で可愛い事を言うから、可笑しくて、おかしくて、何時まででも笑いが止まらない。
「もう、耐えられない。北海道の山に帰りた・・・」
カムイコロ、クリナ、アナスタシアは、惨白き牝鹿(コアイ・マラル)の巫女だという。
蒼き狼(ボルテ・チノ)とオスマントルコのクリミア人の巫女との娘と惨白き牝鹿(コアイ・マラル)の巫女。同じ巫女だがルーツが違った。
本田女史と吉本は、もう別世界に足を突っ込んだようで、理解が出来なかった。白川長官の面目丸つぶれ! にしてしまった。
「なあ、本田くん。長官には何と説明するかね」
「ありのままで構いませんよ。息子さんとそのお嫁さんに、間を取り持ってもらいましょうよ。ね?」
「そうだね!」
クリナとアナスタシアの父親が初めて口を開いた。
「クリナとアナスタシアよ。すまないね、物心がつく前に嫁に出してしまったよ。後で後悔して呼び戻しに行ったんだが、見つける事が出来なんだ」
「ああ、そうだよ。あの時のことは許しておくれ!」
「ううん、大丈夫だったから、もう何とも思っていないからね。それよりもさ、 クライさんとシビルさんには、とてもお世話になったわ。日本のお母さんにもここまで育てて頂きました。この三人のお母様に、お礼を言ってね!」
「クリナとアナスタシアが大変お世話になり、ありがとうございます。また日本には新しい母が出来たと申しております。お母さんには感謝いたします」
「はい、もう分かりました。私どもも娘が二人も増えて喜んでいますのよ。もう四人も六人も同じですわ」
「ほぇ~、6人ですか?」
「はい、今は7人ですが、なにか?・・・・」
「ひゃ~、7人ですか・・・・」
「俺も娘にしてくれるんだね。桜子お母さん、ありがとうよ!」
カムイコロは感謝の言葉を述べる。
「父親にも言っておくれ。それと、6人の娘にもね」
「あいよ、酒瓶持って挨拶するさ。お父様どこに居ますか~」
「やっぱ、ヒグマの性格は変わらないね~。困ったものだ」
明日の朝からヘルレン川のアウラガ遺跡へ向かう。ここでの戦いで大きな事件が起きるのだが・・・・。
*)惨白き牝鹿-とは、さん・しろき・めじか と読むのでしょうか。
中国語では、惨白=ピンイン。 惨=心がひどくいたみ悲しむ。
蒼き狼に嫁に行くから、心が痛む私なの。と訳す?????




