第52部 双子 アメリカへ行く
1949年4月(昭和24年) アメリカ合衆国 C,I,A本部
1948年4月にサイコパス所長の要請を受けて約50人が日本へ渡日した。この行動にC,I,Aが不信に感じた。
C,I,Aの日本への関与は、日本占領期から占領終了後まで、自由民主党に活動資金を提供し、日本国民を親米化にさせる為に活動した。自衛隊の存在も当然C,I,A本部の意向を汲んだものだろうが、アメリカは軍隊と認知しなかった。吉田さんも立派なラクーンだ。自衛隊を追及されても、決して軍隊とは言わなかった。
サイコパス所長の行動や、警視庁と安全課の内偵も行われている。当然、人狼兵の存在も確認しており、事実脅威になるとの調査結果がC,I,A本部に打電されている。
安全課と警視庁の内偵と東京乱戦、いわゆる安全課襲撃事件で、桜子や双子の存在が明かされて継続の調査対象となった。さっぽろ雪まつりの若い婦人もC,I,Aの諜報員だった。
C,I,A本部は、ニコライによる宇宙パイロット養成で、アメリカ兵を改造した事は暫くは意味が解らなかった。日本へ送り出され実験及び結果を見てから可笑しいと気がついたのだった。その後の動向を調査して独立した存在となり慌ててその対策を考えたのだった。
高田ドブロク事件でそのアメリカ兵が強すぎるので、人狼兵と認識した。これらのアメリカン人狼兵を討伐する方向にC,I,A本部は決定した。
1950年11月(昭和25年)東京都・港区
桜子やヒグマのカムイコロ、それにデルフィナも呼ばれていた。姉の双子を除いた巫女たちがまた一堂に会した。ロシアに帰国したソフィアはさすがに呼ばれてはいなかった。
木之本署長は全員の前で事の説明を始めた。当然桜子は猛反対で怒り出す。刑事課の課長さんとニキータがなだめ役として働いた。
妹の双子は、いつもの事と眺めるだけだった。母が怒るのも当然だ。アメリカに渡ってアメリカの人狼兵と戦え! というのだから当然だ。
「やい、新之助! なんで俺の娘を便利屋如くに使ってくれるんだい。大概にしやがれ。この前の戦いでこの俺様が殺しておけば良かったわい」
「いやいや、桜子さん。私が死んでも他の誰かが私と同じ事をしますよ。もう落ち着いてください」
「てやんでぃ! 警視総監でも来るんかい」
「おい、ニキータさん、もう少し頑張ってなだめてくれよ。もう参ってしまうよ」
「すまんな、杉田の奥さん。この私からもお願いするよ、この通りだ!」
「誰だい? あんたは」
「いや、私は、そのあな・・た・・・」
「はは~ん、あんたは警視庁の? お偉いさんだ!」
「はい、そうです。アメリカからのたってのお願いなのです」
「そうかい、大統領のお願いかい?」
「そうです、これがハリー・S・トルーマンの親書です」
「読めないもの、出すな!」
「ごもっとも」
警視総監も読めないのだった。が、事前に内容の説明は受けている。あたかも読んでいるように話し出した。
「朝鮮戦争でロシアの人狼兵と朝鮮の人狼兵とアメリカの人狼兵が戦いました。ロシアとアメリカの人狼兵の実験だったようです。これらの人狼兵の前には、アメリカの軍隊も手も出せなかったそうです」
「そりゃそうだろう」
桜子は頷いているが、大統領の親書にこのような経緯が書かれているはずは無いのだ。しかし桜子は気が付かないでいる。
「でですね、このアメリカの人狼兵をけしかけてアメリカ軍を乗っ取る計画があるのです。このクーデターを断固阻止しなければなりません。つきましては日本の巫女のご助力をお願いします」
「ほほう、そうかい。でも嫌だ!」
桜子と警視総監とのやり取りが続いている。
木之元は、桜子の後ろ壁に大きな張り紙を掲示した。
「別室で協議いたします。203号会議室まで全員来てください。」
全員は静かに出て行った。この後は203号会議室で行われた。
「全員分かったか。今度はアメリカという国が襲われるのだ。我々が日本を打ち破ったアメリカを助けに行く。嫌でも行って協力をお願いしたい」
「アメリカを助けるなんて、嫌だよ」
「そうでしょうが、そこをなんとか!」
全員は理解が早い。海外旅行であるからして、もう頭の中はバラ色になっている。この点は木之元署長も同じだが、同じだからこそ笑みを含んだ顔には怒らなかった。
めいめいが勝手なことを言い出した。
「飛行機で行くんだ!」
「当たり前でしょう? 船なら退屈で死んじゃうわ」
「アメリカ大統領のお誘いよ! 大きなホテルに泊まれるわ」
「顎で軍隊の指揮を出来るんだ」
これはデルフィナが言ったのだ。
「大きな熊さんと会えるのかな。ビッグフットに会えるといいな!」
「いつから行くのですか?」
「12月になって、姉の双子が帰って来てからだが」
「それまではホテルに泊まっててもよろしいの?」
「はいはい、冗談はお終いよ!」
ニキータが大きい声で皆を制した。これからはニキータの言葉である。
「全員は警視庁の体育館横の宿舎に泊まってもらう。アメリカに発つまではここの体育館で組手をして体力をつけてくれや」
「なんだ、面白くない」
これもデルフィナが言ったのだ。しかも母のニキータに聞こえるように。ニキータは娘を睨んで黙らせた。
「そうです、お仕事ですので面白いことはありません」
「と、火器機関銃の練習はここの地下でするよ。護身用に小さい拳銃を携行させるからその練習も行うよ、いいね」
さすがに若い巫女達に拳銃とかを持たせる訳にはいかない。それでも丸腰で充分だろう。
大きな音とともにドアが開いた。桜子が入ってきた。
「おいニキータ! 俺の機関銃は大きいのを頼む!」
「はいはい、桜子には専用の機関銃を用意しておりますよ」
「ほほう、それはいい。で、どのような武器だい?」
「数発で熊も倒せるくらいの、大きい銃ですよ」
「俺を殺すんかい!」
「嫌ですよ、カムイコロさん。あなたには、この大きな鉈です」
「おお、これはいい。よく切れそうだ」
「そうですよ、敵さんの首を落としてください」
「駄目よ、カムイコロ。人殺しになります」
「そうだな、これは却下だ!」
カムイコロには下手に出るニキータだ。桜子同様苦手なのか。
無事に会議が行われたので、警視総監は安心して帰っていった。桜子は1億ドルの報償で買収されていた。付随して東京に2棟の新築の住居と札幌にも自宅の新築を無心している。ご立派としか言えない。だが報償は支給はされなかった。東京の新築の住居は履行されたが。これは妹の二人も部下にしたいが為の工作である。ここにもラクーンが居た。だが、途中で入居者が変わってしまう。
1950年12月(昭和25年)神戸市・長田区
12月5日には姉の二人が呼び戻された。まだ事後処理の書類作成が山のように残っているのだが。
「澪! また特命のお仕事らしいわ。5日には東京に戻って次の仕事の指示を受けろ! というのよ」
「そうね、今日は2日だから長田区役所襲撃事件は事後処理が出来ないね」
「いいじゃないの! 山のように書類を書き上げる事から解放されるし、机に座りっぱなしでお尻が痛くて堪らないのよ」
「お尻の解放が優先なのね!」
「そうよ、悪い! でさ、明日の夜行で帰りましょう」
「今の仕事は今で終わりね。ホテルに帰って着替えて街に行きますわよ」
「OK! お姉さま。どこに行きますの?」
「長田区から離れればいいから、そうね、三宮あたりはどうかしら」
「海が近いからおいしい海鮮料理が食べられるかもね」
けっしておいしい料理が待っていることは無く、双子が人狼兵の数人を料理して海に投げ込んだのだ。
「もう、どうしてこうも兵隊が多いのかしら」
「あちらも必死なのよ。ロシアのイカレ所長が健在という証拠ね!」
「でも少し性格と知能が違うよ! 利口になっているよ」
「ピーナッツ5個分とか? もうありえな~い」
「でもさ、人狼兵が、石井? 中将とかなんとか叫んでいたわよ」
「石井中将って、誰かな」
「そうね、謎だわ!」
よってここの人狼兵は、あのサイコパス所長が作り上げた人狼兵だ。サイコパス所長の陰謀が始まった。
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石井中将とは、731部隊の軍医総監・石井四郎の事である。ハバロフスク裁判にこの石井名前は出ていない。おそらくアメリカに捕まり化学兵器の情報提供で、司法取引により無罪放免にされたようである。満州の研究所はソ連により全員が捕虜にされて、ハバロフスク裁判にかけられた。一方日本の研究所の人員は、アメリカのいいように料理されて、情報すべてがアメリカに流出した。
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1950年12月(昭和25年)東京都・港区
12月6日になり、姉の双子が帰って来たので全員が揃った。揃ったのでC,I,A の長官のチェスターと、諜報員の二人と諜報員参謀の4人が生活安全課にやって来た。
「久しぶりね! 彩香さん、それと、綾香さん」
「あら、そうでもないかしら? スザンナ。先週から私たちを見ていたでしょう」
彩香が返事をした。スザンナは7日後に日本に来ると言っていたから、その後の1週間は日本に居たはずだ。時々視線を感じていたから、スザンナとリリーだと思ってそう言ったまでだ。実は秋葉原に通っていた。
綾香は気が付かないようだったから、
「遅かったわね。でもなんでここに居るのさ!」
綾香は本当に何も気づかず、考えもしなかった。先の一言で言い表している。
「私たちは、C,I,Aよ。これからもよろしくね!」
「まあ、なあに? C,Aってなんなのよ!」
「・・・?・・・・・・・?・・!」
返答できないスザンナだった。スザンナとリリーはこの仕事に自負していたのに鼻っ柱を折られてようで、無性に腹がたった。スザンナの顔の形相が変わり出した。今にも綾香に食って掛かろうとせんばかりであった。
「もう、綾香ったら。しようもないわね。ほら、スザンナに謝って頂戴!」
「どうして?」
「スザンナはその、C,I,Aの諜報員なのよ。ついでにマフィアの娘なの。偉いのよ。身分も高いのよ。どお? お分かりになったかしら?」
「ああ、そうだったわね、どうかしてたわ。ごめんなさい!」
「それに、C,I,Aは大統領直々の調査機関なのよ。綾香も知ってるでしょう?」
「うん、知ってるわ! ごめんんさい、シーエーと聞こえたのよ。謝るわ」
ようやくスザンナの機嫌が直った。それは、彩香が上手におだてたからであって、綾香が謝ったからではなかった。
「スザンナはもう立派な戦士ね! 感動したわ!!!」
「まあ、嬉しいわ!」
「あら? そおう! そんなことは無いとおもうけれど?」
スザンナのアホ! リリーは心で呟いた。しかし、彩香にはいつも感心させられるリリーだが、競争心むき出しにはしていない。これからは、4人で学校の部活もできるかは不明だが、仲よくしていて損は無いと思った。後に激しい心に変化するかもしれないが。
刑事課の課長が合同演習を行う計画を立てた。意思疎通を優先的に行う実験であって、けっして力の誇示ではないのだ。正岡子規記念球場で、全部の機動隊員を集めて訓練を行った。(正岡子規記念球場は、東京都台東区上野恩賜公園内にある球場です。)
「よ~し、全員俺の説明が分かったな! 理解できんのは殺されるからな」
「それと、巫女の皆さんは手抜きでお願いします。絶対に部下に怪我させないでください。よろしくお願いします」
アメリカに行く部隊と残留部隊に分かれて訓練が行われた。若い者は巫女どうしで訓練も行った。綾香と彩香には日本刀を持たされた。
「なによ、これ。重くて持てないわ」
「そうよね、持てないわ」
二人して日本刀を放り投げた。代わりに木刀を持って戦った。3~5本は折っていたようだ。暫くして硬い桜の木刀が渡された。重たいが折れる事はなくなった。
巫女の訓練? には機動隊が観客となって、集団が自然と丸くなる。
明後日の夕方に羽田から出発と決まった。
出発当日、
「ここの空港は戦災の影響が無いのね」
彩香の言葉にスザンナが答えた。
「当たり前でしょう? 戦争で勝利しても降り立つ空港が無くなればさ、上陸出来ないでしょう」
「あ、そうか。そうなんだ」
ありきたりの返事をしている。ただの話のつなぎ目? 会話の開始のためだった。
スザンナは軍資金で秋葉原に通っていた。恥ずかしいので二人には言えなかったのだ。妹の二人も秋葉原で衣装の買い物をしている。
もう、四人して日本文化をアメリカに知らしめるのだろう。特に巫女の四人は未来の秋葉原から買い物をしている。お金はどうしただろうか。
これからアメリカに行くのだが、待っているのは人狼兵ばかりでは無かった。




