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人狼 Zwei (ツバイ)  作者: 冬忍 金銀花
24/91

第24部 ニキータ 力の消失 


  1947年10月(昭和22年) 北海道・札幌


 全員が夜で見えない車窓を見ている。少し大きい街を通過すると夜景も少しは綺麗に見える。宗谷海峡のトンネルでは長い! の感嘆の声が続く。 


 無事に新幹線に乗車出来た。車掌さんの切符拝見を かわさなくてはならない。前後の車両に見張りを立てる。男でいいだろう女は親子の二ペアが迫撃戦を始めている。親が勝つか娘が勝つか。さあどっちだ。


 桜子の親子対決は、 


「ママ今度ゆっくりお話ししましょうね? って、いったい何なのよ」

「彩香は慌ててしまってね、ついママと呼んでしまっただけよ。お母さまは気にされなくてよろしいのに」

「随分と大人びたものの言い方ね。いったい幾つになったんだい」


 沙霧と澪霧 1927年10月15日生れ-20歳

 綾香と彩香 1931年06月08日生れ-16歳です。


「そうかい十六歳かい、大きくなって……もう」

「お母さんは行く前に札幌の駅で電報を打ったでしょう?」

「ああ出したね。今から行くから覚悟しーだったかな」

「その電報はここにあるんです。見て!」


 古ぼけた1枚の紙が母・桜子に渡された。日付と日焼けした色合いが証拠になる。母の桜子は涙が流れてしょうがなかった。


「ねぇ? お母さん。どうしたの? 何か変だった?」

「彩香……そうじゃないのよ。電報がここに有ると言う理由が分るかな」

「ううん全然。分んないよ教えて」

「下さいを付けないと教えない。これはね電報が無事に着いて、そんでもって受け取った馬鹿たちも無事だったと言う事よ」

「どうして?」

「だってそうでしょう? 彩香は誰から電報を受け取ったの」

「あ、そうか。五体満足の腹減らした姉さまからだ。死体満足だったら頭が無くなってるもんね」

「彩香……お前は何バカな事言ってるの、不謹慎です。母さんが余計に心配するでしょうが、この子はもう!」

「ごめんなさいお母さん、反省します」


「うんん大丈夫よ、心配掛けたね。もう大丈夫だからね」


「親が娘に心配かけてどうすんのよ。未来の姉二人が母さんの事を気遣ってこの電報を渡しに来たのよ。序でに東京にも来て欲しかったと思うよ」


「だから全員が早く来れる方法を探して教えてくれたんじゃない」

「そうよね、母親失格だわ。四人とも私の娘で良かったわ」

「でしょう?」


「上の姉二人はお母さんに会えばきっと喜ぶわ、泣いて飛んで逃げるかもね」



 母の桜子は泣きやんだ。もう仙台を過ぎた所だろうか娘の勝利になった。次はニキータとデルフィナの戦いだが、デルフィナのなぜなぜ攻撃で母のニキータは押されっぱなしになっている。


「どこか知らないお母さん。この時間移動とか瞬間移動とか……いったい何ですの? どこから魔法が出て来るんですか、答えなさい」


「はい、お答えいたします。巫女の力です。以上」

「早いわね、よく理解できましたわ。つまり、この力は母親から娘に必然的に遺伝するのですよね?」


「はい、そうです」

「ならば私にそのすべてを譲りなさい。いいでわよね!」

「ハイ!」


 金切声の返事が帰って来た。


 ニキータは終始小声で受け答えをしていた。もう母の負け確定だ早かった。ニキータは夫に相談すべく新之助を呼んだ。


「ねえシン……もうデルフィナに力を渡していいかな」


 デルフィナは1935年11月22日生れの十二歳にもう直ぐなる。他の巫女たちも十歳以上で覚醒してきた。十二歳は遅いのかもしれない。


「そうだな、巫女の力にこれ程前向きなのも珍しいかも知れない。ニキータさん渡そうか巫女の力。ニキータさんはもう力は無くなっているんでしょう?」

「そうなんだよもう力は無いのよ、悲しいわよ。でもデルフィナが受け継ぐからいいのよね、これも娘を放置した罰ね罰は受けなければならない」


「シン……桜子を呼んで来て。桜子に頼みたいの」


 新之助は桜子を隣の車両に呼びに行った。桜子に声を掛ける。


「あのう桜子さん……古だぬきのニキータがお願いがあるからと来て欲しいそうですので、お願いします」

「ええ直ぐに行きます。行こうか彩と綾!」


 二人は?????。初めて名前を省略して呼ばれた。親が娘を大人として認めたものだ。親子が友達になった瞬間である。


「母とお友達か! なんか嬉しい」「嬉しい!」


 車両を移動しニキータ親子の横に座る。務めて穏やかに、


「なにかしらニキータさん。親子の対決は収まりましたの?」


「桜子ごめんね。水入らずを邪魔してね」

「二人ともありがとうね、少しあなた達のお母さんを借りるわ」


 ニキータはデルフィナに力を渡したいから覚醒させて欲しいと言う。


「分りましたニキータさん。デルフィナも巫女の力に目覚めていいのね?」

「はいお願いします。巫女になってどこかの遠い母のお手伝いをいたします」


「デルフィナ横になって寝れるかな、覚醒の呪文で気を失うかも知れない。もしもに備えて横になってね」

「はい小母さま」


 桜子はデルフィナの手に黒の宝石を握らせ呪文を唱える。


「我は汝の記憶を司る。我は汝の真名を唱える、ファティーマ デルフィナ」


 デルフィナは穏やかに眠った。


 次に綾と彩に向かい、


「あなた達は自力で覚醒したようね、巫女の宝石で一番強いダイヤがあなた達を産んだ時に譲渡されたようなのよ。だから上の姉二人もあなた達の傍で暮らしたから自力で覚醒したと思うの」



「ホロお義母様。沙霧と澪霧の傍にもう一人巫女が居るのよね」


 桜子の声色こわいろが強くなっていた。


「ええそうなのよ。ニキータさんも誰だか知りたいのだけれどもまだ誰かは判らないでいるわ」

「それもこれも三人が変な衣装! そう、この世に無い衣装を着ていますの。もう理解できません」


「巫女はきっと呼び合うのですわ桜子さん。この私も必死で念じて呼びかけましたもの必然でしょうね。私は羆から人間に戻りたいです」


 カムイコロは初めて口を開いた。駅弁を食べていたのだ。


「カムイコロさんの気持ちもよく判ります。東京の病院についてから人間に戻りましょうね。今からでは出血もあるし出来ないわ」 


 ニキータは桜子の問いに答えた。


「とても仲のいい感じがします。同じ学校に通っているかもしれません」

「でも本当にあの三人の素性は判りません、ごめんなさい」


「はいニキータ……もういいわ」


「綾と彩。あなた達の覚醒は恐らくは不十分なのよ、だから二人とも覚醒させるね」

「もう巫女の力を悪い方に使ったらダメよ、ただでさえ双子で見分けが付かないものね。さ、二人とも横になって、呪文を唱えるわ」


 彩香だけにに聞こえるように耳元で小さく囁いた。


「桜子は、汝に命ず。ボガトィリの唄を讃えよ、ヴォルフェンリード」


 彩香はピクリ! として眠った。今度は綾香だ。


「桜子は、汝に命ず。ボガトィリの唄を讃えよ、ヴォルフェンリード」


 綾香も眠った。 


「これでダイヤの封印は解けたわ」


「カムイコロさんは駅弁を食べ終えたかしら。沢山食べないとお腹が空きますのよね」

「カムイコロさんの封印も解きますわ、彩と綾の手を取ってください。二人は宝石のダイヤなんです。ダイヤと合わせて封印を解くと色んな巫女の力が使えるようになります」


「あ、桜子! 宝石の封印解除が先よ。でしょう?」

「麻美、ごめんなさい、気がいていたわ、ありがとう」



「カムイコロさん、宝石を持ってこちらに来てください」


「桜子さん宝石は琥珀よ。文献にも言い伝えにも無い色よ、どうなのかしら」


 ニキータは続けて、


「色々考えたけれど抜け落ちた宝石じゃないかしら。首飾りを作った時に故意に外したか抜け落ちたかな」


 ホロは、


「抜け落ちは無理じゃ無いかしら。もう一人の巫女が居たのよ。誰か双子とか二人を産んだとか、じゃないかしら」

 

 ニキータは考え込んだ。桜子は、


「多分どれも違うよ。ニキータの黒の宝石でも元はダイヤの台座でしたよ。クロだって台座の2個の宝石で生まれてますもの。琥珀は熱して台座と宝石をくっ付ける役割をしていたとかじゃないかしら」


「え~いままよ、どうにでもなれ。カムイコロさん覚醒させますわ」

「覚醒しないとダメですか?」


「桜、自分の経験からして覚醒しないとダメだと思う。中途半端では人間に成れない。多分怪我するだけよ」

「そうなんですね、では呪文をお願いします」


 桜子は呪文を唱える準備をする。


「カムイコロさん琥珀を手に持ってください。いいですか覚醒させますわ」


「桜子は、汝に命ず。ボガトィリの唄を讃えよ、カムイコロ」


カムイコロに変化は無い起こらなかったようだ。


「どうしたんでしょう何も起こらないわ。やはり宝石が違うのでしょう」

 

 桜子は娘たちが起きるのを待つ事にした。黒の宝石が在れば何か変化が起きるかもしれない。


「もう少し待って子供たちが目を覚ましたら黒の宝石の力を借りましょう。何かが変わるかもしれない」


「おい、こら! 起きろ。あ、あぁん?」

「ダメよ起こしたら。ニキータ、あんたは一番に殺されるから止めなさい」

「そうでしたすみません、もう元気なのは啖呵だけです」



 デルフィナが先に目を覚ました。桜子はデルフィナに宝石を貸してとお願いする。


「デルフィナ、少しの間、黒の宝石を貸して下さらない?」

「はい小母さま。どうぞ」


「カムイコロさんはこの黒の宝石を琥珀と一緒に握りしめてください」

「握りめしですね? いいですよ。お願いします」


「桜子は、汝に命ず。ボガトィリの唄を讃えよ、カムイコロ」


 またしてもカムイコロに変化は無い、起こらなかった。カムイコロはがっかりしてしまう。


「あ~よく寝た、ここは? そうか列車の中か」


 双子が目を覚ましてキョトンとした感じでみんなを見ている。


「気分はどうかしらお二人さん。頭が冴えていると思うけれど?」

「うんとてもいいみたい。まだ少し寝ぼけてるかな彩香は?」

「ヒドイ! 綾香姉さんのイジワル」


「うん、いいみたいね。良かった」

「でね三人さん。カムイコロさんが覚醒しないの、どうしてか判るかな」


「羆のカムイコロさん、あなたのお名前は何と言いますの? 違うんじゃありませんか?」

「カムイコロは熊の名前です。巫女としての名前は???忘れました」


「三人とももっと言って、後はお母さんが何とかするから」


「クマ、ヒグマ、カムイ、コロ、ニャン、コハク。これでどうかしら」

「じゃ、お母さん、呪文を全部の名前で唱えて!」


 コピペしました。どれか当たるでしょうか。


「桜子は、汝に命ず。ボガトィリの唄を讃えよ、クマ」

「桜子は、汝に命ず。ボガトィリの唄を讃えよ、ヒグマ」

「桜子は、汝に命ず。ボガトィリの唄を讃えよ、カムイ」

「桜子は、汝に命ず。ボガトィリの唄を讃えよ、コロ」

「桜子は、汝に命ず。ボガトィリの唄を讃えよ、ニャン」

「桜子は、汝に命ず。ボガトィリの唄を讃えよ、コハク」



「ところでデルフィナさん。力は貰えましたか?」

「うん出来るみたい、宝石を戻して!」

「忍法、葉隠の術!」

「あ、消えた!」

「待って……黒の宝石、私を置いて行かないで」


 この続きは杉田一家の七人の再会にて!


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