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人狼 Zwei (ツバイ)  作者: 冬忍 金銀花
23/91

第23部 桜子の予感

 書き始めて1か月になり、ようやく半分までたどり着きました。あと2か月間、頑張ります。後半はセーラー月になるかもしれません。先にお詫び申し上げます。


(北海道 日高の人狼の章とは、時間が前後します。)



 1947年10月(昭和22年) 北海道・札幌


「ねえホロお婆ちゃん、今日は大勢で何のお祭りですか?」

「え~ぇ孫二人は元気ですよ、心配はありません」


「ねえホロお婆ちゃん。今日は何の用件でお出ででしょうか?」

「え~ぇ沙霧と澪霧は元気ですよ。たんと学校に通ってますよ」


 桜子は違和感を覚える。ホロお婆ちゃんの様子が変なのだ。他の四人はお茶とコーヒーを飲んだかと思ったら直ぐに出て行った。


 石見課長がホロお婆ちゃんから何か言われている。


「奥さん! お茶ありがとうございます。署長さまがお呼びですので苫小牧の瀬戸家に至急まいります。署長の奥様が恐いんですよ」

「そうですよねニキータさんは怖いですものね、私には敵いませんが・・・」


「もう何もお構いいたしませんですみません。ホロお婆ちゃんも一緒ですか?」


「私はもう年だから残るよ。もう二人の孫と過ごしたいからね」

「あと二時間位で帰りますからね喜びますわ、またお願いします」


 またお願いしますとは、子守の事です。


「古田! 日高の山でキャンプする時はクロの背中に食物を載せて置くんだよ。さもないと全部食われちゃうからね。それとは別にね食べ物は少し残しておくといいよ。いいね、残しておかないと全員が熊の餌になるからね、頼んだよ」


「はい手抜きが出来るんですね、了解しました」

「そうね、手抜き? そうなるのかい」


 三人は慌ただしく出て行った。一泊する予定だったのだろうか。第一、何でホロお婆ちゃんに付いて来たのかが判らない。たぶん、ホロお婆ちゃんの算段には違いないだろう。


「ホロお婆ちゃんはボケていない、振りをしているだけだ。おかしい」


「桜子さん買い物かい。一緒するよ」

「ホロお婆ちゃんには二人を迎えに行って下さるかしら、早く孫の顔を見たいでしょう。悠木さんが少し手土産を置いていきましたから食材は大丈夫ですわ」


 悠木さんは少しですがと言いながらお菓子を置いていった。このお菓子を野菜や果物に交換するのだ。第一子供にお菓子は贅沢だ。私の分が在ればいい……とか言う桜子だ。


「ホロお婆ちゃん出かけましょうか、霧のお墓参りして学校には行かれるでしょう? 玄関の鍵締めますわ。鍵は子供が持っていますので締めて行きます」


「そうさね……先に霧に会いにいくよ。御線香はありがとうね」


 二人は出かけた。かどを曲がったホロお婆ちゃんを確認して家に戻る。私はロザリオとダイヤが気になり探し出す。ダイヤはすでに消えているからロザリオを探す。


「十字架は何処にいったのかしら、この箱に封印(紙で糊付け)をしていたのにおかしいわね。封印は間違いなく当時のままだけれども……?」


 首をかしげるも十字架は消えている。ホロお祖母さまを問い詰めるしかないのか、智治にも当然訊く。


 無いとすると双子の下に飛んでしまったか。覚醒もさせていないのに飛んで行くはずはないしね。ホロお婆ちゃんの挙動がおかしい訳でもないんだが、お祖母さまもきっとご存じ無いのかしら。(ホロは全く知らない)


 早く出ないと子供たちが帰って来るからと、いそいそと出かけた。


 第一の目的地はお肉屋さん、預けたお肉を引出しにいくのだ。


「その前に智治さんに電話っと」


 私はルンルンと愛する旦那様に電話をかける。


「杉田と申します、主人をお願いします、はい。智治さん、ホロお婆ちゃんが来てますのでお早くお戻りくださいませ。ええ、お肉は私が……お願いね」


 智治には早く帰るよう頼んだ。余談だが今日から一週間後にニキータの一同が襲来する。


 夜になり食後に十字架の事を二人に尋ねた。当然の如く知らない、である。桜子の不安は大きく膨らんでしまう。智治に話したら馬耳東風の子守唄になり智治は寝てしまった。


 ニキータの一同が来るまで待つ? 思考停止にしたのだった。一週間後ニキータの一同が来た。羆同伴とは驚いて泡を噴く所だった。


「みんな……よく来たね、でも全員は上がれないな、男たちは庭に回ってちょうだい。縁側で収容します」


「ごめんね~桜子……大勢で押しかけしまって、お手伝いするね」

「お~い彩香、綾香~下りといで~」

「お母さまだ、はーい! 行きまーす」

「お婆ちゃん行きましょう」


「お母さま久しぶりです。ですが? 後ろの女性は、ど・な・た・でしょう? なにか不思議な感じがします」


 カムイコロもまじまじと双子を見ているのだ、麻美に訊いた。


「ねえ、そちらのお子さんは、どなたのお子さまかしら?」

「はい桜子さんのお子さんです。親父は智治さんと言って庭の右に立っている人ね」


 カムイコロは、はっとして思わず立ち上がった。羆の癖かもしれない。


「人狼? かな。ねえ麻美さん。あの方はもしや人狼ではありませんか?」


 カムイコロは大きく眼を見開いて左右を見ている。もう何がなんだか。


「こんな事……ありえな~~い!」


「カムイコロさん、こちらの複雑な家庭も私の事も話せばなが~くなります。かくかく云々、魔法……説明省略の術! でお分かりでしょうか、カムイコロさん」


「ええ、よーく分りました。宝石の力は凄いですわね。二十年三十年の事が一瞬で伝わるのですもの宝石は手放せないわ」


 桜子と双子はともに忙しい。ホロも台所に立ったままで居間には顔も出さないでいる。時たま声は聞こえるが姿は見えない。


「ニキータさんと悠木さん、お手伝いをお願いするね。麻美とカムイコロさんと三人でお話ししますのでよろしく」


 三人は静かな部屋へと行った。


「カムイコロさんはね、日高の山で巫女が現れるのを親子代々で待ち続けていたと言うの。理由は羆から人間になりたい、と言う事です」

「麻美や智治さんのようにね。でも出来ないわ、力の有る巫女が居ませんので」


 ここからが大騒ぎになるのだ。これからを書きたい為に沢山の文字を連れねました。数回は書き直すと思います。


「あら、東京に三人の巫女が居るらしいじゃない。桜は知らないの?」


 桜子は猛烈に怒り出した。


「それって、沙霧と澪霧の事?」


 麻美は、はっとした。そうなのだと今さらに気が付いた。何も言えない。


 大きい声で怒鳴る。ホロが気が付き慌てて部屋に入った。今度はホロに、


「お義母さん、今まで私に嘘をついていたのですか? どうなんですか」


 もう、ホロも何も言えなかった。


 桜子の怒鳴る声を聞いて智治とニキータらが続いて入って来る。みんなは棒立ちになったままに桜子の詰問にさらされる。


「ニキータ! あんたは知ってたの? どうなの、答えなさい。うちの双子が巫女になってるって、どういう事?」

「署長、あんたもグルで黙ってたんですよね、どうなんですか?」

「智治……何とか言って、沙霧と澪霧が巫女になってると言うんですよ。あんまりじゃありませんか。大事に育てた霧の子供たちを何で巫女にし……」


 最後は声にならない、桜子は両手で顔を塞いで泣きだしてしまった。誰もなだめる事は出来そうも無かった。


 綾香と彩香が桜子に寄り添い父の智治を呼んだ。綾香は父に、


「お父さん、ここは二人に任せて。みなさんを居間に案内してください」


 桜子の泣き声を背中に感じながら全員が退室して行く。暫くして桜子の泣き声が段々と小さくなった。


「お母さん、私たちはお母さんの味方ですよ。大丈夫です愛する二人のお姉さまを信じましょうよ、ね? お母さま」(綾香)


「お姉さまたちは聡いですよ、違いますか? 二人ともお母さまの子供です、親が信じないでどうするのです。親バカでいいじゃないですか」(彩香)


「お母さん、私たち双子を見て下さい。お母さまを悩ます事は沢山ありましたが、悲しませた事はないでしょう? 困らせた事は……私たちも多少は反省しています」(綾香)


「二人ともお母さまを信じています、東京の姉だってお母さまの事は心配していますし、私たちは姉の事も案じていますよ」(綾香)


「だから大丈夫です、お母さま。さ、また、厳しく詰問に行きましょう」

「ちょっとお姉さん、お母さんをけしかけないでよ」(彩香)


「ありがとう二人とも。ありがとう元気が出たわ。皆殺しね!」

「止めて……それだけは止めて!」(彩香)


 桜子は洗面所で顔を洗って来た。そして鏡台の前に座った。何かぶつぶつと言っているがはてな?


「女の戦よ、化粧を整えて殴り込みよね。これでもう泣かないわ」


 双子はほれぼれと母親を見上げた。双子は詳しくは知らないが母は何度と無く死線を漂って来たのだ。根性は座っている、あのニキータよりも強い。魔法は使えないがそれでも強い。この中でも一番強いのだ。


 課長以外の全員は居間と縁側に揃っていて、母よりも先に双子の妹の彩香が口火を切った。


「明日からは土日です、私たち双子も東京へ行きます」


 みんなは驚いて口を挟む。


「明日から学校は休みだろうけど、二日じゃ東京には着かないよ」


「麻美……ちょっと返事しなさい。あんた沙霧と澪霧の事を知ってたの? 十字架もダイヤも此処には無いのよ知らないうちに無くなってるのよ。みなさんが来た時に確認したわ。麻美、どうなの?」


 桜子は麻美に嚙みつきかねない剣幕にタジタジになった。


「ごめんなさい本当に知らないの。ごめんなさい」


「お母さん麻美お母さんは知らないわ、怒らないで」


 綾香がなだめた。彩香が続けて発言した。


「これから直ぐに東京に行く方法があるわ、これは未来の姉から聞いたのよ良く聞いて。ここには元も含め、これからの巫女も合わせて何人の巫女がいるかしら?」


「それって……どう言う事よ。ここに何人もの巫女が居るというの?」

 

 カムイコロさんが驚いて大きな声を出した。


元が麻美の一人。

現がニキータ、ホロ、カムイコロの三人。

新が綾香と彩香の二人。

元人狼と現人狼が合わせて二人。


「ここには巫女が六人と巫女の夫が二人の合計で八人、これにクロを呼べば九人になるのよ」

「ごめんなさい。不明な力がある母を忘れてました。合計で十人です」


 さらにカムイコロさんが驚いて、うっかり半分ほど羆に変身してしまった。綾香と彩香はびっくりしてしまう。カムイコロは目が点になっていた。


 東京へ行く方法が一同はまだ意味が解らないでいた。


「これから東京へ行くのよ、方法は」

「方法はって今日これから汽車に乗っても、青森に行く船は無いわ」

「弾丸列車は海も超えるのか、あ、あぁん?」


 彩香の説明は続く。


「そうですが、説明を聞いてください」

「十人の巫女とその関係者がいるわ。他は知らないから汽車で東京に帰って」


「十人が手を繋いで念じるの、今から八十四年後に飛ぶのよ」


「そして札幌から東京に直通電車が走ってるの、東京まで4時間で着くわ。その幻の電車で行くのよ。できるのよ」


「ちょっ、彩香、未来の姉とは、誰よ」

「東京のお姉さんですよ。ごめんなさいお母さま。私たちは未来のお姉さまから聞いてて知ってましたの。本当にごめんなさい」


「あんたらも私の子供やね。いい根性しとるよ。東京から戻ったらお仕置きよ」

(北海道新幹線が2030年度末に開通する予定だ)


「うん、お母さま。耐えて見せるわよ、ね? 彩香!」

「ううん、嫌よ。姉ちゃんだけでいい」


「今なら間に合うから行くの? 行かないの?」


 課長が慌てて部屋に入って来た。署に電話を掛けに行っていたのだ。


「早く行きましょう東京では巫女と人狼の戦いが始まっています。今日で3日目です、急ぎましょう」


「綾香、彩香。教えて、どうしたらいいの? お母さんは心配で死にそうよ」


「OK! ママ!」

「ママ? 何処の子供だい?」


「ママ今度ゆっくりお話ししましょうね」

「彩香早くしよう」

「みんな手を繋いで、いい? 今から八十四年後に飛ぶのよ。みんなは私たちに同調するだけでいいのよ念じるわ」


 クロも呼んだ。馬には手が無いがしっぽで良いだろうか? とにかく繋いだのだ。九人と馬が忽然と消えて札幌に飛んだ。ここから八十四年後に飛ぶ。話も飛ぶ無事に八十四年後の札幌に着いた。


 JRの人には内緒で新幹線の中に潜入して無賃乗車で東京に行った。お金が使えないので八十四年前の入場券を買ってはいるも九十九.九%が無賃乗車になろう。


 東京では、ドラキン34妹さんしまいが激しく戦っていた。


とりあえず更新、と。ここまで読んで頂いた方に感謝します。



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