第11部 ニキータとミーシャの再会
1947年7月(昭和22年7月) 東京都・六本木
ミーシャは暇だからとソフィアの送り迎えをしていたら、帰宅途中に突然呼び止められたのだ。声を掛けたのはニキータで白の宝石を感じ取ったからだ。
ミーシャは珍しい異国の風景や通りの歩道に並ぶ露店と、露店に並ぶ品々がお気に入りでニキータの宝石には全く気付かないでいた。
「よう!……ミーシャじゃないか、どうして日本にいるんだい?」
ミーシャはとても驚いた、開いた口を手で塞ぐが指を開いていたから口の中が○見えだった。
「もう入れ歯か?」
「あれれ~どちら様で! 私をご存じでしょうか~?」
ミーシャは言っている言葉と顔の表情が異なり第一に眼が笑っていた。
「この野郎! 恍けやがって。久しぶりだね、二十年にはなるかな」
「お母さま、この方は何方ですの?」
「俺か? 俺はニキータ、逸れ巫女さ」
「私と同じでオオカミの巫女よ、だからガラが悪いでしょう?」
食材を買い増してミーシャの家に行く。ニキータは智治の治療で早くに帰国を果たして戦線離脱をしていたから、ミーシャとは8か月程と付合いが短い。それでも再会の話しは尽きない。
翌月になって二人は直ぐ再会する事になる。
1947年8月(昭和22年8月) 東京都・八丁堀
ソフィアと二人で八丁堀までお魚の開きを買いに出た時だった。またしても人狼兵に出くわしたら私らを覚えてでもいるのか、狙い撃ちされた格好で挟み撃ちにされて動けないでいた。
「ソフィア、いつもの作戦で逃げるよ、いい?」
「ガッテンだ、左の奴の後ろに飛ぶから、お母さんは左に逃げて」
「頼んだよ」
ソフィアは盾を出してソードに変えた。
ソフィアは左の人狼兵の後ろに飛んで、併せて母のミーシャも走った。
「ソフィア~危ない、後ろ!」
ミーシャは叫んだ。ソフィアが飛んだその先には一人の人狼兵が隠れていたのだ。すぐさまソフィアは挟み撃ちにされ三人で争いになる。私たちの戦法がばれていたもので、右にも同じく一人が隠れていた。総員で4人が相手となった。
ミーシャはやぶれかぶれで手前の人狼兵に体当たりをした。あまり力も無いが人狼兵はよろめいた。この時にソフィアはソードで一突きにして倒した。もう一人の人狼兵は一瞬立ち止った。ソフィアはこの瞬間を見逃さない、人狼兵をまたしてもソードで一突きにしたが脇の下で外した。
「お母さん早く逃げて、直ぐに人狼兵を倒したら追い付くから」
ミーシャはそうしようと走り出した時に、はっとしてソフィアに向かい走り出したのだ。
「ソフィア、剣を頂戴。ソフィアは飛んで逃げて、早く!」
ミーシャはソフィアから剣を受け取り人狼兵に襲い掛かり、ソフィアは見えない所へ飛んだ。この時である、ニキータと古田透が現れたのだ、ミーシャは人狼兵と戦いながらニキータに応援を頼んだ。
「ミーシャじゃないか、直ぐに助けるから。古田! 向こうの二人を頼む」
「ニキータありがとう、助かったよ」
ニキータとミーシャの二人だから直ぐにけりはついた。
「古田! 直ぐにいく」
何とか人狼兵と戦い、三対二で決着がついた。
ニキータと古田で人狼兵を手早く簀巻きにした。
「古田、回収班を呼んでおくれ」
古田は連絡しに走った。だいぶん向こうに車は止めていたらしいから戻りが遅い。私たちはソフィアが見つからずに済んで良かった。
「ミーシャ、あんた一人で倒したんかい」
「一人くらいならば大した事はないわ、でも後の三人は無理だったかもね」
「でも捕える事が出来て助かったわ、ありがとう」
研究所の回収班が現着して人狼兵を回収して行った。イカレ所長も同行していて人狼兵の変化を観察していた。このイカレ所長は玉の付く所が好きらしいようだ。
「イカレ所長! もう殺すなよ。生け捕りにする身にもなってくれ」
「殺せないんだから、んな事はどうでもいいだろう?」
「????、これかね? この剣で刺せば人間に戻るんだね、どれ……」
「……貸せね~よ」
「あんたは最近子供産んだでしょう、だからソードの力が弱いわよ」
「やっぱりそうかな、力が弱いだろうな。ソードで刺しても人狼兵は人間に戻らね~もんな」
「私はしっかりとキープしてるわよ、凄いでしょう」
「どうすりゃ? いいんだい」
「なに簡単な事さ、離婚すればいいだけさ。いっぺん離婚すれば?」
「いやだよ、いい旦那を貰ったからムリだ」
ミーシャは離婚はしていない、置いてきているだけだ。力も当然無いのだがニキータは信じてしまう。ミーシャは現にソードを持ったままなのだから、元に戻せないのが証拠だ。でもニキータは何とも思わなかった。
ここからミーシャのスカウトが始まるのである。もちろんの事ミーシャは逃げるわな。
「私の人生だもの、他人の好きにはさせないわよ」
ミーシャの心の叫びがニキータに届く事は無いのだが。




