第10部 恐怖する二人……桜子の襲来
ミーシャさんの特訓はきつくて堪りませんでしたわ。
腑抜けの二人に鉄槌が落ちる!
1947年7月(昭和22年7月) 東京都・六本木
夏休みだからと札幌から母が様子を見に来た。不意打ちを食らった二人だった。いつまでたっても帰るの電話もないのだから母が心配するのも無理もない。
「双子~居るか~玄関を開けろ~!」
「ドタッ、ドスン、キャ!」
家の中で大きな音が3回続いて最後は悲鳴だが、あれは沙霧だな。
「あら、お母さま、良くいらっしゃいました。ささ、どうぞ」
「やだ~お母さまは、押し売りみたいで近所に聞かれたらいけませんわ」
二人はそう言いながら母を家の中に案内する。桜子は初めての訪問になり部屋にあがると部屋は、今片づけたように綺麗にしているのはどうしてだろう。
「お母さま、お部屋は綺麗にしていますでしょう?」
「ええ、そうよね。牛一頭持った来たわよ、喜びなさい」
「ご冗談を桜子さん!」
桜子さん? 母に対してよそよそしいわね、何かありそうだが、なんだろう。
「昨日郵便が着いている筈よ、今日訪問すると書いていたけど?」
「あぁ~郵便ね、着いてましたわ、お待ちしてましたのよ」
桜子は郵便なんか出していない、掛かったな双子よ! 少しづつ締め上げるからね。
母には嘘が通じない、しかし子供にはそう言うことは判らない。
「それで郵便は他になんて書いてたかな……沙霧?」
奥から澪が出て来て沙霧に耳打ちしている。
「あらイヤだ。お母さまったら人が悪い」 「悪いわ」
「郵便なんて着いていませんわ、お母さま」 「さま」
桜子は不思議に思う。突然の訪問で娘を出し抜いた積もりが、今では逆に出し抜かれている。
「あぁそうだ、二人の成績表見せるね。全部が優秀よ、ね~」「ね~」
「わ~凄い、良く頑張ってるね~」
親には書き直された成績表が渡された。四月に改竄したばかりの成績表だから二人はにっこりほほ笑む。
「お母さま、朝餉にいたしましょう。準備して待っていたのですよ」
「朝から焼肉かい? 豪勢じゃないか」
「ハイ、お母さまが今朝お肉を持ってきて頂きましたから。お肉は味噌漬けですからとても美味しいですわ」(味噌に漬けておくと日持ちします)
頂きましたから? 可笑しな事を言うんだ。お肉はまだ竹の皮に包んだままだけど、あれ? 無い、お肉が無い。
朝食を済ませて母を近くの街に案内した、もう道路には多くの出店が出ていた。
「お母さま、こういうのは珍しいでしょう? 田舎ではこんなのは有り得ません」
「ねぇ澪、お母さまは何時まで居るかな。あんたは跳んで調べて来て」
「お母さま、澪は忘れ物で家に帰ります。直ぐに戻りますから」
「お姉さま大変、三日は居ますよ。どうしましょうか」
「そうだ、ホロお婆ちゃんに頼みましょう、よ」
「ホロお婆ちゃん……またお願いします」
「テレパ! 通じた?」
「イヤだって、あんた達の親だから孝行しなさい、ですって、よ」
「お母さま、お昼の散歩と夕餉の食材の買い物に行きましょうよ」
「そうだね、でも暑いから夕方にしましょう」
「では、お勉強を始めましょう」x2
「お昼寝ね、汽車では寝れなくて眠たいわ」x1
「お休みなさい」x3
夕暮れ過ぎに三人は起きた。お風呂に行って帰るとそこには夕餉が用意されていた。時間跳躍は便利だ、このまま三日後に跳べばいい! と三日目に思い付く。
ミーシャさんの特訓は役にたちました。
私たち、五十年後に行って来ました。




