dialogue
バン、バン、バン!
ドタ、ドタ・・・・・・
「思ったより弾丸の減りが早いのね。まあ、いいや。拳銃なんてそこらへんにたくさんあるし。お、見つけた」
ガチャッ!
「!!」
「はあ、はあ、はあ・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・やっぱり、君だったんだね。あのときの」
「あんたも、まさか・・・・・・」
「そうだよ・・・・・・あのときの僕だよ」
「・・・・・・・・」
「あんた、刑事になってたのね」
「ああ。そういう君こそ・・・・・・犯罪者になってたなんて、思わなかったよ」
「あら、知ってたの?」
「当たり前じゃないか。僕は刑事なんだぞ! ・・・・・・この前、テレビで君の名前が挙がったから、気になって刑事資料をあさってみたら、たくさん出てきたよ。強盗、無免許運転、そして殺人・・・・・・君がたくさんの犯罪を犯していることが分かって、僕は落胆したよ」
「何であんたが落胆するの?」
「分からないのか!? 僕は君に失望したんだ! 君の事は、正しい人間だと思ってたのに・・・・・・なんだよ、このザマは!」
「・・・・・・勝手にそんな風に思われても、困るんだよね」
「は・・・・・・はぁ?」
「あんたにそう思われても、押し付けがましいだけだっつってんのっ!!」
「どういう意味だよ! 何で押し付けがましいって事になるんだ!」
「嫌なのよ、正しい人間って奴が!」
「・・・・・・学生時代、私の人生は散々だった。親には裏切られ、友達にはおだてられ、挙句の果てには、あたしの非行が分かったとたん、誰も相手にしなくなった。信じられないよ。ついさっきまで〝あなたの事は一生大事にするわ〟なんて、馬鹿の一つ覚えみたいに言ってたくせに! その後あたしが非行人間だって分かって、気に入らない人間だって分かったとたんこのザマよ!」
「・・・・・・・・」
「そんなこんなで、結局人間なんて、ただの使い捨てのおもちゃなんだって思った。自分が気に入ればとことんおだてて、飽きたり気に入らなくなったらその場でポイ。そういうものなんだって分かった。
だからあたしは、そんな世界に合わせてやったのよ。とことん人間をおだてて、使い捨てにした。あたしの場合はそれが悪事だったってだけ。だってそうでしょ? 人間はただの――」
「それは違う! 君は間違ってる!」
「・・・・・・何が間違ってるって言うのよ!」
「根本が間違ってる! 人間は使い捨てのおもちゃなんかじゃない。人間は純真で、平等で、生きていくうえでとても大事なものなんだ。ちょっとした事で勝手に突き放したりはしない!」
「じゃあ何であたしは、こんな扱いを受けたのよ!」
「君自身がそうさせたんじゃないか! 言っておくけど、君の周りの人たちは、決して君をおだてたりなんかしてない。君を信頼して、大事にしてたと思う。でも君が非行を繰り返しているのを知って、絶望したんだよ。自分が信頼してた君が、こんな悪事を働かしていたなんて、てね! 何が馬鹿の一つ覚えだよ! 人の気持ちを踏みにじるのもいい加減にしろ!」
「それはこっちの台詞よ! だったら何でそのとき止めてくれなかったのよ! 勝手に人のことを信用して、絶望してさぁ! ふざけないでよ、もう!!」
バン、バン、バン!
カラン、カラン、カラン!
「ふざけているのは、そっちだろ!?」
「・・・・・・・・」
「人が君のことを信頼するのも絶望するのも、君の行動次第だよ。それなのに、人に自分の良し悪しを判断してもらおうなんて、勝手すぎやしないか?」
「・・・・・・・・」
「君は、もっと人のことを理解しなきゃだめだ。自分の行動で、人がどう思うかを知って、行動を弁えなきゃいけない。人から本当に良く思われるためには、まず君が変わらなければだめだ」
ギュッ
「あ。ちょ、ちょっと・・・・・・」
「君には、悪人にだけにはなって欲しくなかった。学生時代の、皆に慕われる、よき人間であって欲しかった。今となってはもう遅いけれど。でも、今からなら、君は変われる」
「・・・・・・・・」
「君に期待してもいいかい?」
「・・・・・・・・」
「君のことが好きだ」
「・・・・・・だめ」
カチャッ
「!」
「言わせておいてなんだけど、あたしはもう、変わることはできない。心の歪んだ、悪徳少女のままだと思う」
「・・・・・・・・君、い、一体」
「でも、あんたが教えてくれた事で、あたし、自分を見つめなおすことができた。自分が何者なのか。これからどうしなければいけないのか。あんたのお陰で知ることができた」
「・・・・・・・・」
「でも、あたし、そうしたら、あたしがあたしでなくなっちゃうと思うの」
「・・・・・・え?」
「変わりたくないの。よき自分に。あたしが歪んだ人間で無くなったら、皆はそれで喜ぶかもしれないけれど、あたしは納得できないの。あたしらしさ、というよりは、アイデンティティ。あたしがよき人間になったら、あたしのアイデンティティが失われてしまう気がするの」
「・・・・・・そんなことは無い!」
「分かってる! でも、あたしって馬鹿だよね。自分の悪いところ、欠点や弱点だけで、自我を作り上げてしまうんだから」
「・・・・・・・・」
「でも、あたしの欠点に気付いてくれる人がいて、あたしは嬉しかった」
「・・・・・・・・」
「ありがとう。・・・・・・でも、ごめん」
そして、部屋の中に
乾いた銃声が響いた




