第16話
「うっす。中山さんがこの前、おまえのこと見たってよ」
元高校球児の同期、横峯くんと改札で会った。
「おはよ。中山さんって誰だっけ?」
「おまっ、得意先の担当者覚えてないのかよ!」
「ああ。その中山さんね。よく電話するから名前は知ってるけど、私、会ったことないから顔知らないもん」
「会ったことあるだろ?」
「いつ?」
「最初に契約するとき、うち来てくれたじゃん」
「そうだっけ?」
そんなに記憶力は悪くない方だと思うけど、さっぱり覚えてない。
「ほら、超感じの悪いおじさんと、いい感じの若い人だよ」
「ああ!あの人ね」
感じの悪いおじさんとは、横峯くんが話しているのに、パソコンで別の仕事をしていた人。
その隣で、真剣に話を聞いてくれた若い人がいた。
『せっかく時間作ってここまで来たのに、どうして話聞かないんでしょうね。申し訳ありません』
おじさんがトイレに行っている間、ちょっとこぼした愚痴が可愛かった。
「あの人が中山さんか。私、顔と名前が繋がってないまま連絡してた」
「まじかよ。中山さん、お前のこと、いつもめっちゃ褒めてるよ」
「え?そうなの?嬉しい。なんて?なんて?」
「気が利くし、急な依頼や変更も快く聞いてくれて助かるって、さ」
「きゃー。感激。で?どこで私のこと見たって?」
「駅のエスカレーターですれ違ったって」
「あ」




