夢のよう
僕らはようやく校門へ向かい、『入学式』と大きく書かれたパネルの近くまで来た。
「透、看板の横に立って」
母に即託されるまま僕はパネルの横へ並び、スマートフォンを取り出した母は僕にカメラを向けた。
やがて、カシャッカシャッとシャッター音が二回鳴ったのが聞こえる。
「…いいかんじ。」
母親が満面な笑みで画面を僕に向けて写真を見せ、そこには純粋な笑顔を見せた僕を映している。
一緒に撮ろうよ、そう言いかけた僕は恥ずかしさからか、それとも断られる恐れからか言葉を飲み込むようにしてやめた。
そして僕らは撮影を終え、二人で自転車を押しながら帰路に着く。母さんも自転車で来ていたらしい、なんの変哲もないママチャリだ。二つのラチェット音がカチカチと二重奏を奏でている。そしてたわいもない会話に時々弾む笑い声。
まるで今までそうしてきたみたいな光景に、夢にでも迷い込んでしまったのではという疑念すら浮かぶ。
「じゃじゃーん」
母親がその一声をあげると、白い箱の中から僕が想像していたよりも高級なケーキが出てきた。ホールケーキではなく、カットされたケーキが二つ。一つはチーズケーキ、焼き色のついた表面が目立ち、その上には粉砂糖が振りかけられていている。そしてもう一つはチョコレートでコーティングされたケーキで表面が茶色く艶がかっていた。
更には薄く削られたチョコレートが飾られ、波打つ模様がますます高級感を漂わせている。チョコレートケーキに視線を向け、おそらくこっちが僕のだろうと察する。
「さあ、食べましょ食べましょ」
母親は興奮気味に言うと、ケーキを別皿に移しフォークを僕に差し出してきた。誕生日でもないのにこんな……なんて思いつつも僕は得体の知れない食べ物に手を出すかのように口へと運んだ。




