ヘルドッグフレンズ
「ん?こうやって、出す」
シルエッタは自分の影から腕を6本出す。
「先生、いきなりハードル高すぎます」
まず1本出す事も出来ないし、出し方も分からないのでその辺りから教えて欲しいんだけど……
「んー、まず、影に意識を、向ける」
ふむふむ、影に意識を……
「そしたら、出る」
そこなんだよなぁ?そこが一番知りたいんだよなぁ?
「もう少し何とかならないかな?」
「んー、あっ、クロト、ゲームと、一緒」
ゲームと一緒?
「影が、機体、クロトは、操る」
「はぁーなるほど!そういう事か!」
影はキャラクターで、俺はそれを操作するプレイヤーって事か!
瞼を閉じて、頭の中でクロガネの巨腕を思い浮かべる。そして頭の中でその腕を握ったり閉じたりしてみる。
「ん、出来てる」
シルエッタの声を聞いて、瞼を開けるとそこには足元の影からクロガネの巨腕の形をした影の腕があった。
「うおっ!出来た!まさかゲームがこんな所で役に立つとは……」
時間が掛かると思っていた影の腕の習得はゲームを参考にする事によってなんとか形を作る事が出来た
「イメージ、大事、出来ないと、消える」
影の腕を出すときは常に腕をイメージしないとダメって事か
「なるほど、シルエッタはこれを6本も出せるのか……」
俺は流石にまだ1本しか出せないし、影の腕を操っている間は他の事が出来ない。これを6本出しながら、俺にレクチャー出来るシルエッタは凄いな……
「クロトに、戻れば、もっと、出せる」
まだ出せるんですかシルエッタさん……
(こっちに来た時にシルエッタも弱体化してしまった様だな、この様子だと他の仲間も弱体化しているかもしれん)
弱くなって6本も出せるのか……これは俺も頑張らないと。後、他の仲間も探すのも
「ヴァイスの仲間を探すの為にも今はコレをマスターしないとな……」
せめて2本は影の腕を扱える様になりたい。だって1本だけだとカッコ悪いじゃん?
(ふむ、頑張るのは良い事だ。たまには見ているだけというのも良いだろう)
ヴァイスは見るだけの様だ
(まぁそのくらいなら我にも出来るからな!)
コイツ煽りやがってぇ……絶対使える様になってやる!
「ヴァイス様、向こうで、2本しか、出せないクセに」
(こ、こらシルエッタ!余計な事を……)
「ほほぅ?絶対にヴァイスを超えるわ」
ヴァイスが2本しか出せない。しかもこっちでは弱体化の影響か、出した所を見たことが無い。これはヴァイスに魔法的要素で勝てるかもしれないって事だろ?こんなの頑張らない訳無いじゃないですかー
「シルエッタ!ヴァイスに負けたくないから複数使える様になるコツとかあったら教えて!」
「ん、とにかく、はっきり、イメージ、する、だけ」
はっきりイメージする……なら両腕になる様に影の腕を左右揃えよう
「はっきりイメージ……はっきりイメージ……んんんん」
クロガネの両腕を思い浮かべる。さっき出た腕はヴァイスの煽りを喰らった時に消えてしまった。あのくらいで消えてしまうなら実戦では使い物にならないだろう。これは俺の精神力の問題だろうな……
「んんん……駄目だ。さっきは何で出たんだろう?」
クロガネの両腕を思い浮かべているのに影は動かない。
「クロト、さっき、何を、考えてた?」
シルエッタも原因を探すのを手伝ってくれる
「クロガネの両腕を思い浮かべていたんだけど……」
両腕を思い浮かべたのに影の腕は出てこなかった
(先程の影は、握ったり開いたりしていたが……)
「ん?……それか?」
ヴァイスの言葉で今、クロガネの腕の形のみを思い浮かべていたという事に気付く
「ちゃんと動きも思い浮かべて……」
クロガネの両巨腕が握ったり開いたりする動きも一緒に思い浮かべる。
「ん、そう、それで、良い」
俺の影から二つの巨腕が現れる。
「このままじゃ駄目だ……この影の腕は俺の新しい腕……、大事な腕」
影の腕を新しい腕として、昼に戦ったゴリラの魔物の様に……元から4本有ったかの様に
「凄い、なんて、上達の、早さ」
シルエッタも褒めてくれる。嬉しいけど集中は切らさない様に
(ぬおっ!なんだ?どうなっている?)
ヴァイスが驚く声を上げているが、集中は切らさない。
「クロト、自分、見て?」
自分を見る?ってうわっ!?
「肩から影の腕が!」
クロガネの影巨腕が肩の辺りから出現しており、動かせる様になっていた。