イミテーションの過去
「忘れていたけど、これが傷だ」
背中の傷を二人に見せる。シルエッタが正体を見せてくれた様に俺も隠していた過去と傷をさらけ出す。
「うーむ……クロトよ、その傷だが魔法では無く、呪いだぞ?」
ヴァイスが魔法では無く、呪いだと言ってくる。
「呪い?」
「クロトの両親は魔法文字を解析したと言っていたが、魔力を注ぐ事で変質したのだろう。そもそも我が知っている限り、不老不死は1人の生贄で出来る様な代物では無い」
「魔法のコストが払えないから要素を削り、クロトは自分で死ねない、歳を取れないという呪いにその魔法が変質したのだろう。我の世界だと大罪人に施す呪いと似ておる。」
呪いか、しかも罪人にする物って……魔法より酷いんじゃないか?
「マジか……だったらもっと悪いじゃん。こんな俺と一緒に暮らしたいか?」
呪いを持ってるなんて知ったらそんな奴とは一緒に居たくないだろう。折角友達になってじいちゃんに自慢したかったのに……
「今更そんな物がどうしたというのだ?我はクロトが何者であっても親友だ!クロトは違うのか?」
「クロト、私達、見捨てない、なら私も、クロト、見捨てない」
二人は俺の過去を聞いた事で俺から逃げるなんて事はしなかった。
「ありがとう、俺を見捨てないでくれて……二人ともありがとう」
俺が普通の人間じゃなくても関係ない、まるでじいちゃんと同じだ。
「クロトは我らが人間で無くても受け入れてくれただろう?我らはそんなクロトと共に居たいのだ!」
ヴァイスは俺と一緒に居たいと言ってくれる。
「クロト、泣いてるの?いい子、いい子」
シルエッタは俺の頭を撫でてきた。座って話をしていたからシルエッタでも背伸びせずに頭を撫でられる高さに俺の頭があったからだろう。
「この歳で慰められるのはちょっと恥ずかしいな……」
嬉しくて涙が出るのは良いとして、見た目は俺より小さいシルエッタに頭を撫でられるのは恥ずかしい。
「だいたい、今更クロトに見捨てられたら我はどうしたら良いのだ?」
おう、ヴァイスのせいで涙はスッと引いてしまったよ
「そうだな、行き倒れの魔王様をまた行き倒れにする訳にはいかないもんなぁ?」
「それは忘れてくれ……」
ヴァイスのお陰で先程までの雰囲気は無くなり、いつもの感じに戻る。
「シルエッタ、部屋を見に行くか?」
部屋を割り当てたと言っても何か不都合があるかもしれないので確認だけはした方が良いだろう。
「うん、見たい」
「よし、じゃあ行くか」
シルエッタに割り当てた部屋に向かい、居間から出る。
ヴァイスも気になるのかついてくる。
「部屋の掃除はいつもしてるから埃は無いと思うけど……」
「綺麗、ここ、私の、部屋?」
「あぁ、好きに使って良いぞ?物の配置変えたりしたいなら手伝うし、何か欲しい物があれば言って?」
「良いの?」
「ヴァイスなんて部屋でゲームしたいって言うからモニターにゲーム機も用意してやったりもしたし、シルエッタも遠慮するなよ?」
「あれは済まなかった。冗談半分だったのに用意してくれるとは思わなかったんだ」
遠慮するなよって言ったらホントに遠慮無しで言ってきたヴァイスの正直な所は好きだから用意したんだけどな。シルエッタも要望があったら何でも言って欲しい所だ。
「ありがとう、クロト、今はいい」
ちゃんとお礼が言えるのは良い事だ。
「おう!今日はもう遅いし、俺はそろそろ寝るけどシルエッタ達はどうする?」
「私も、寝る、クロトの、部屋は、何処?」
寝る前に俺の部屋の場所を聞いてくるので答える。
「俺の部屋はこの廊下の先の突き当りの所だ」
二階で一番遠い廊下の先が俺の部屋になっている。
「ふーん、わかった」
なーんかニヤニヤしているシルエッタ
「我も寝るとしよう。シルエッタよ、あまりクロトをいじめてやるな?気に入ったのは分かるがクロトはまだ慣れておらん」
フォローしてくれてるんだけど不安を煽っている様にしか聞こえない。今日は部屋に鍵かけるか……
「じゃあ、二人ともお休み」
「おやすみ」「おやすみだぞ」
二人と別れて部屋に入る。
「俺の過去を打ち明けてもほとんど接し方変わんないんだもんなぁ……」
ヴァイスとは1ヵ月以上一緒に暮らしてるけど俺の過去の事を黙っていたのは悪かったかもしれないなぁ、でも俺に対する態度が変わらないってのは嬉しいね。
「シルエッタは今日会ったばっかりなのに友達になれたし、やっぱヴァイスと似てるなぁ」
ヴァイスの仲間という事でその辺もやはり似てくるのだろうか?ヴァイスはシルエッタが俺の事を気に入ったって言ってたし、まぁ仲良くなれるなら何でもいっか。
「ヴァイスの他の仲間ってのも早く会ってみたいなぁ」
ヴァイスの為に散り散りになった仲間を集めてあげたいと思うのと同じくヴァイスの仲間と友達になりたいという欲も出てきた。
「ま、今日はもう寝て、明日はシルエッタにクレープ作ってあげないとな」
俺は念の為部屋に鍵を掛け、自分のベッドに入る。