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イミテーションの過去

 唐突に現れたライオン型の魔物が咆哮を放つ。


「ガオォォォォ!!」


「こ、これが魔物か、醜い……」

「なんて醜悪な外見なの……」


 2人は現れた魔物に醜いなど言っているが、しっかり物影に隠れている。


「これを倒すのが魔法少女なのだろう?さっさと倒せ!」

「そうよ、私達の研究成果を壊させないで!」


「なんて身勝手な……」


 身勝手すぎる言い分に魔法少女もこんな奴らを助けなくてはいけないと思うと嫌気がさしていただろう。


 魔法少女とフェイル、魔物、賢司と紀子、と魔物はお互いの間に現れた為、こちらが注意を引けばあの2人が逃げ出す事が出来るだろうが、注意を引いた場合自分が危険に晒される。だが


「こっちだ!……」

 フェイルは自分の方へ魔物の注意を引き付ける事を選んだ。


「グルゥ?」


 立ち上がり、魔物に近づいていく。


「何やってるんですか!死にたいんですか!?」

 魔法少女が止めるが構わない。


「そうだよ……もう良いんだ」

 研究の為と人体実験を繰り返し、培養槽に入れられて強制的に体の傷を治され、また実験。

 そんな日々を終わらせてくれる魔物が目の前に現れた。これは運命なのだろうとフェイルは思っていた。


「そうだ、お前は囮になれ!我々はさっさと逃げるとしよう」

「ここで死んだら意味が無いわ、さっさと倒しなさい!」


 2人が出口に向かい走る。


 その時魔物が2人の方へ顔を向けゆっくり歩きだした。


「な、なぜこっちに来るんだ!そっちの失敗作の方へ行け!」

「おかしいでしょ!なんで私達の方へ来るの!」


 そんな2人を見て魔法少女は動かない。


 だが、フェイルは動いていた。


「グオアァ」

 魔物が前足を2人に振り下ろそうとしていた所に走り、2人を突き飛ばす。


「あぐっ……」

 背中に爪の一撃を受け、倒れる。


「ふっ、ふふっそうだ、それで良い!」

「よくやったわ!そのまま私達の盾になりなさい!」

 何故こんな2人を守る為に動いたのか、何故こんなに痛いのに少し嬉しいのか、何故もう実験しなくても良くなるのにこんなに悲しいのか。何故、何故、何故


 どれだけ考えても答えは見つからず、朦朧とした意識の中、立ち上がろうとするが体に力が入らない。


 魔物は2人に迫っていき、遂に壁際に追い込まれていた。


「早く私達を助けなさい!フェイル!」

「起きろフェイル!早く私達の盾になれ!」


 2人が叫んでいるが体がいう事を聞かない。


 動けないフェイルに対して2人は怒りを露わにする。


「この失敗作がぁ!!我々の細胞を改造して造ったのに何故こんなに使えないのだ!!」

「役立たず!16年も使ってやった恩を返しなさい!」


 2人は自分達が窮地にあることも忘れてフェイルを罵倒する。


 背中に負った傷の痛みや守ったハズの2人からの罵倒で涙が溢れるが、体は動かない。


 魔物もやり取りに飽きたのか2人へ攻撃をする。


「このゴミがぁ!お前なんk」

 そこまで言った時点で賢司は魔物の前足によって叩き潰され、地面のシミとなった。


「ひぃ!助けて、誰でもいいかr」

 紀子は魔物に頭から喰われた。


 10秒も掛からず、2人の科学者がこの世から消えた。


「あんな奴らは死んで当然だわ。でも、あなただけは絶対に助ける!」

 魔法少女は2人を見捨て、フェイルを救う事を選んだ。


「時間は掛けない!一撃よ!」


 魔法少女は杖を構え、魔物に魔法を放つ。


「ライトニング!!」

 杖から放たれた雷撃は魔物を黒焦げにするほどの膨大なエネルギーがあり、魔物は一撃で沈黙した。


 初めて見た魔法少女の魔法。2人をあっという間に殺した魔物さえも1撃で倒す力を持った少女。

 こんな存在が居るなんて16年研究施設に居たフェイルは知らなかった。


「大丈夫!?今助けるから!」

 少女がこちらにやってきて治療しようとするが、フェイルの体に異変が起こる。


「ぐあぁぁ……熱い、体が熱いぃぃ、痛い、何……これ……」

 先程魔法少女が倒した魔物からフェイルに何かが流れ込んでいる。


「まさか!?さっきの魔法で魔法陣が起動しちゃったの!?」

 そのつもりは無かったが図らずも不老不死の魔法を使う事になってしまった魔法少女と使われてしまったフェイル。


 本来、片方の人の命を奪い、もう片方を不老不死にする魔法を片方は魔物で行ってしまったのだ。

 魔法陣が光り、字に罅が入ったかと思えば魔法陣の文字がいくつか宙に舞い、消えていく。


「もしかして、魔法が改変されている……?」


 いくつかの文字が消えた魔法陣は輝きを増し、フェイルの体の下へ魔法陣が動いていく。


「体が熱い、痛い。どうなってるの僕の体……」


「ヒール!……弾かれた!?この魔法いったい何なの!?ごめん私には何も出来ない……お願い、生き延びて!」

 回復魔法を弾かれた魔法少女は祈りながら魔法が終了するのを待っている。


 魔法陣が消え去り、横たわるフェイル。まさか失敗したのかと思った時フェイルがむくりと起き上がった。


「あれ……?僕生きてる……?」

「良かった!生きてた!」


 フェイルは2人の悪魔が残した魔法陣によって一命を取り留めたのだった。




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