野良猫デュエット
「(魔物……!)」
二人を以前襲った鰐頭を思い出す。
命がけで逃げ、変身して倒した魔物。もう逃げるしか出来ない自分じゃない。
「逃げるのも今日までだ。」
魔物の発したと思われる魔力(?)を感じた俺はヴァイスに尋ねる。
「ところでヴァイス?これって魔力ってやつで合ってる?」
(うむ、これは魔物が発した魔力であろう。)
「これが魔力ってやつかこれを辿れば魔物の所に行ける訳だな」
そして魔力を感じる方へ走っていく。
5分もあればクロガネなら魔物の元へたどり着くことが出来た。だが、俺より先にたどり着いている人が居た。
「アルタイルぅ右から来てるよぉ」「了解!」「せえぇい!!」「ファイア!」
これはひょっとしなくても支部の子達だろう。
戦っている相手は10体の人の子供サイズの蠍の様な魔物。
「3人は分かるがあの子は初めて見たな?」
全身蒼いゴスロリコーデと鷲の様なクローのアルタイル、黄色の軽装鎧と白鳥のレリーフがある大剣のデネブ、薄い緑色をしたトーガを纏い、リラハープと呼ばれる水瓶の様な形をしたハープを持ったベガ。そして最後の一人、赤いローブを身に纏い、大きな三角帽子を被った、短杖を持つ謎の魔法少女。
「彼女が新人か。」
先程抜け出した歓迎会を思い出し、まだ見ぬ新人が彼女であろうと予想が付く。
近接が2人に遠距離が2人。バランス的にはかなり良いのではないか?
近接の二人が蠍を抑え、後方から魔法とハープからの衝撃波の様な物が蠍を襲う。
どんどん数が減っている。これは手を出すまでも無い様だ。
「ナイス!お陰でやり易い!」「これは助かります」「中々やるわねぇ?」
3人が新人を褒めている。
「皆さんの足を引っ張らない様に頑張ります!ファイアウィップ!」
炎の鞭が蠍をバラバラにしていく。
10体の蠍を倒した後、彼女達に影が覆い被さる。
俺は離れた位置に居たからソイツを確認出来た。
ビルの上にデカい奴が。
10体居たのはきっと奴の子供だったのだろう、ビルの上に居た蠍は5mはありそうだ。
だったらアイツは俺が殺ろう。
折角だ、銃形態の性能検査の続きだ。
蠍に右手の銃口を向ける。バイザーも展開して、照準が蠍にロックされる。
その時、彼女達が俺に気が付いた様で、こちらを見ていた。
蠍がビルから飛び降りる。だが、地面に着くまでの間に俺が右手の銃で奴を撃ち抜く
「させるか!」
右手の銃身から白い光線が伸び、蠍を包み込む。光が収まった時には蠍の姿は無く、手足であっただろう残骸がポロポロ落ちていく。あっ破片が4人に降っていく。ごめんそこまで上手くはいかなかったわ。
「す、すごい……」「なんですか……これ」「うっそぉ……」「……」
4人が茫然としている。俺も茫然としている。正直俺もここまで威力出るとは思わなかった。上に向けて撃っておいて正解だったわ……
「大丈夫か?怪我は無いか?」
とりあえず怪我が無いか確認だ。
「え、えぇ誰も怪我していないわ」
アルタイルが代表して無事だと言ってくる。
「そうか、じゃあそこの石貰えるかな?」
あの蠍を倒して、出てきた魔石が彼女達の近くに落ちたので貰えないか相談だ。
「あ、あの!クロガネ!」
アルタイルが話しかけてきた。この前のアレかな?
「ん?なんだ?」
「この前はごめんなさい!あなたの気持ちも考えないでいきなり攻撃して本当にごめんなさい!」
深く頭を下げてくる。ちゃんと謝れたなら許さないとね。
「あぁ気にしてないから頭を上げてくれ」
アルタイルの件も終わったし、後はさっさと魔石取って撤退したい……
「なぁ?さっきのはお前がやったのか?」
デネブく~ん?俺はさっさと撤退したいだけなんだが?
「あぁそうだが?」
「お前すげぇな!うちに来ない?」
勧誘はお断りしてます。
「悪いがどこかに所属する気は無いかな、まぁ見かけたら手貸してやるよ」
こう言っておけば関係性が悪くなる事は無いでしょ?
「おぉそうかありがとな!あ、ついでに写真撮って良いか?」
まぁ写真くらいなら良いか。
「そこの魔石くれるなら良いぞ」
すると新人さんが魔石を持って俺の前に来た。
「ど、どうぞ、あのわ、私魔法少女スカーレットって言います!よろしくお願いします!」
そして魔石を手渡してくる。
「俺は野良のクロガネだ、よろしくされるような者じゃないさ」
魔石を左の巨腕で受け取る。
「へい!こっち向いてー」パシャ!
デネブが何処からか、スマホを取り出し、写真を撮る。バイザーも開いてないけど良いんだろうか?