魔装少女 起動
「体内?えっ!?体の中に有るの!?」
(うむ……変身アイテムは何になるかランダムで決まってしまうのだが……我らが変身した存在はあまりに特殊だった様で変身アイテムも特殊な物になってしまったようだ。)
体内に変身アイテムが出来るとか大丈夫なのか……?
「体内に変身アイテムとか……いったいどんな物になったの?」
恐る恐るヴァイスに尋ねる。
(マナジェネレーターなる器官とでも言うべきか……いや、隠さず言おう。クロトよおぬしの心臓が変質して変身アイテムとなった。)
心臓が変身アイテムとかこれもうわかんねぇな。
「心臓が変質するって大丈夫なの?俺死なない?」
(案ずるな。心臓自体に問題は無い、普通の心臓だ。)
普通の心臓は変身アイテムにはならないよ。
(説明が足りなかったな。クロトよ、おぬし単体の時は普通の人間だ。)
「よかった。人間辞めた訳じゃなかった。」
(ただ我とクロガネに変身した時に心臓がマナジェネレーターという器官に置き換わる。だから心臓が変身アイテムとでもいう機能を持った器官に生まれ変わった……という事だ。)
「じゃあ変身アイテムってより変身器官って言った方が良いのかな?」
(うむ、それが一番表現として正しいと思われるぞ)
やっぱり人間辞めてね?でももう受け入れるしかないか。
「じゃあ変身解除して家に帰るか。」
(変身解除と念じれば解除出来るぞ。逆に変身と念じれば変身出来る。)
「分かった。変身解除!」
その瞬間、身体から光る粒子が溢れ、クロガネの姿が解ける。そして、その場には玄斗とヴァイスの二人が立っていた。
「変身解除して直ぐだが我はクロトに入らせてもらうぞ。」
「はいはい、身体に異常は無いな?っていうか怪我が治ってるってすごいな!?」
モールで痛めつけられた傷は無く、動ける事が分かった事でバスステーションを目指して歩き始めた。
「じゃあ帰るか!」
(うむ、新作は売り切れていたという事にして我は納得する事にしよう。)
あ、そうだった。新作ゲームを買いに来てたんだった。だが今日は色々な事が起こり、精神的に疲れていた為ヴァイスの売り切れだったから諦めようという提案に乗っかり、家に帰るのだった。
玄斗達がモールから逃走して数分。特殊車両で現場に到着したその人はまだモール内に残っているであろう
アルタイルの元へ行く。彼女達魔法少女の監督者や北海道第一支部支部長と呼ばれる御門梓である。
「蒼音ちゃん!」
「御門さん……」
元気がない。いつものお腹が減ったとは違う様だ。
「私、野良の魔法少女を取り逃がしてしまいました。」
取り逃した……ですかこれはちょっと怒らなきゃいけませんね。
「蒼音ちゃん?前にも説明したでしょう?野良の魔法少女を見つけたとしても無理やり捕まえようとしてはいけないって?」
「ですが!」
「政府に所属するかはその子の自由意志であって無理強いは出来ない。でしょ?」
「はい……」
理解はしているのだろうけど納得は出来ないって感じね。
「本当は私も出来る限り魔法少女には政府に所属して欲しい所だけど、家庭の事情や本人の気持ちを考えずに無理に所属させたらそれこそ魔法少女と戦う事になっちゃうかもしれないでしょ?」
魔法少女同士で潰しあいなど絶対にさせたくない。
「ごめんなさい……」
ちゃんと理解して反省しているのならこれ以上は言わない。
「ところで、今回出てきた魔物は貴女が野良の子と協力して倒したの?」
「いえ、彼女が単独で倒した後に私が到着しました。」
単独で魔物を倒せる魔法少女か……戦闘経験があるのか?何か情報があれば過去のデータと照合して何か分かるかもしれないが……
「そう……じゃあ彼女がどうやって魔物を倒したかは分からない訳ね。」
少しでもその子の情報が分かれば良いと思ったけど、そう上手くは行かないわよね。
「いえ、到着した時にはまだ死体が残っていたのでどうやって倒したかの見当は付きます。」
あら、どう倒したか分かるなら杖の情報も少しは分かるかも?
「それで?どういう風に倒したというの?」
「あの時彼女は真っ二つに引き裂かれた魔物の死体を両手に持っていました。信じられませんが、きっと腕の力で引き裂いたのでしょう。」
「は?」
腕の力で魔物を引き裂いた?そんな魔法少女のデータは聞いたことがない。